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学校では怖いと有名なJKヤンキーのアマガミさん。家ではめっちゃ可愛い。  作者: 結乃拓也/ゆのや
第1章 【 ヤンキーとあだ名で呼び合うまで 】
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第10話 『 ボッチとゲーム仲間 』

 ――夜。


「……あ、ごめん死んだ」

『オッケー。こっちでカバーするわ。爆弾おにぎりフォロー頼むわ』

『了解でござる』


 僕のキャラクターが敵キャラクターに塗りつぶされて死んでしまった。

 僕はリスポーンを待っている間、味方陣営が敵チームと激しくペイントを塗り合っているゲーム画面をぼーっと眺めていた。


「復活した。どこにフォロー入った方がいい?」

『こっちはいいや』

『拙者も間に合ってるでござる』

『俺も問題なし』

「分かった。じゃあ塗られた箇所塗りつぶしに……あ、ごめんまたやられた」


 僕がリスポーンして動き出した直後、それを待っていたかのように敵二人が僕に集中砲火を浴びせてきた。

 そして、また呆気なくやられてしまった。


『まじか。相手かなりボッチに粘着してるな……』

『うわ悪い。俺もやられた!』

『コイツら普通にうめえな。やば、俺もやられそう。一旦退く……あっやべ! 間違って武器チェンジしちまった⁉ うがあああ!』


 耳元で激しい断末魔が鳴り響く。


『一気に3人も死なないで欲しいんでござるが⁉ ちょ、ほら拙者のほうに二人来ちゃったでござる⁉』

「リスポーンしたよ! 待ってて爆弾おにぎりくん!」

『ムリムリムリムリでござる⁉ あががががあ⁉』


 また、僕の耳元で断末魔が。それと嗤い声が響く。


『こりゃダメだなー。残り10秒で一気に塗りつぶされちまった』

『いや、俺はまだ諦め……お前ボッチに粘着してたじゃん! ぎゃああああ⁉』


 もはやこれで何度目か。無残に散っていった仲間の断末魔とともに、試合が終了。

 結果は僕らのストレート負け。相手の緑色のペイントがステージの8割を埋めていた画面を見て、僕たちは「惨敗だね」と失笑をこぼす。


「ごめん。僕が確実に戦犯だった」

『気にすんな。次挽回してくれればいいから』


 ロビー画面に戻った僕たちは、脱力しながら軽く反省会を始める。


『相手チーム、かなりボッチ氏を集中して狙ってたでござるな』

『うちのチームじゃボッチが一番うめぇからな。それに気付いてボッチを好きに動かせないように立ち回ってったんだろ』

『拙者がボッチ氏のフォローに入ればよかったでござるな。すみませぬ』

「こっちこそごめん。うまくリカバリーできなくて。……それに、今日はちょっと僕も調子良くなかったな」


 そう言うと、一人が何か納得がいったように『あー』と声を上げた。


『そういや、今日のお前、少し動きよくなかったな。なに。体調でも悪いの?』

「そういう訳じゃないんだけどね。ただちょっと、考え事が頭から離れなくて」

『ふーん。またお前の深く考え込みすぎる悪い癖でも出てんの?』

『逆に海斗氏はあまり後先考えず行動するでござるよな』

『うるせ! 脳筋で悪かったな!』


 けらけらとマイク越しに笑いが飛び交う。


『……で、お前の考え事ってなによ。ここに集まってる頼りになるお友達に話してみな』

『あ、俺も気になるー』

「完全にネタにしようとしてるじゃん」


 頬を引きつらせる僕。

 それから一つ息を吐くと、


「考え込んでるって訳でもないんだ。ただ、なんて言えばいいんだろ。どうやって接すればいいか分からない人がいて」

『ほほぉ。ボッチ氏にもそんな人がいるんですな』

『な、珍しい』


 今日のゲームの集まりは同じ高校の同級生たち。一人は同じクラスで他2名は別クラスだった。


 僕らは高校からの付き合いではなく、中学からの付き合いだ。とあるゲームで関係を持って以来、こうして定期的にオンラインゲームで集まっている。

 そしてゲーム画面はまだロビーのまま、皆は飲み物を飲んだり軽食を取ったりと空気はすっかり漫談ムードに変わっていた。


『お前って誰にでも分け隔てなく接するからわりと人気者じゃん。つーか、学級委員長やってる時点でコミュ障ではないよな』

『そうでござる。真の陰キャボッチは拙者のことでござる』

『自分で言ってて恥ずかしくないのかよ』

『同じクラスの遊李ゆうり氏なら知ってるでござろう。拙者が誰とも話せないのは』


『知ってる』と遊李くんが可笑しそうにケラケラと笑う。


 爽やか好青年の遊李くんに、スポーツ男子の海斗かいとくん。生粋のオタクこと誠二せいじくんと極めて何の取柄もない僕。性格も属性も違う僕らは、ゲームという趣味でつながっていた。


『誠二も普通に話せばいい奴だって分かるんだけどなぁ。ただその喋り方のせいで敬遠されがちなんだよ』

『癖になってしまっているから仕方がないでござる。それとインパクトを求めた作者の悪趣味な悪戯』

「そこは禁忌に触れそうだからやめようか」


 僕らの世界に作者なんていないのに、なぜだか誠二の言葉に背筋がぶるりと震えた。

 誠二くんの発言は意図的にスルーして、


『さくさく……ほんで、上手く世間と渡り歩いてるボッチはなんで珍しく対人関係で悩んでるわけ?』


 たぶんポテチか何かを食べながら遊李くんが聞いてくる。

 僕はしばらく打ち明けようか逡巡しゅんじゅんしたあと、


「うまく口頭で説明するのは難しいな。なんだろ、その人と話すと、胸が高鳴るというか、もっと一緒にいたい、仲良くなりたいって思う反面、それ以上を求めちゃいけないような気がして……」

『それって男? 女?』

「女子だよ」

『……まじかよ。あのボッチに遂に春到来したのか』

『あのモテているのに何故か告白されないボッチ氏が、まさか自分で好きな相手を見つけるとは⁉』

「二人とも僕のことディスってるよね?」


 驚く二人に僕は心外だと嘆息する。


「というか、勝手に恋って決めつけないでくれる。べつにその人の事を好きってわけじゃ……いや、でも好意はあるのか」

『そこを冷静に俯瞰ふかんするのがボッチらしいというかなんというか。お前が誰かを好きになり切れない原因の一つだと思うよ』

『しかしボッチ氏がそこまで特定の誰かに固執するのは珍しいでござるな。ちなみにその相手の名前は?』

「いや普通に言いたくないんだけど……」


 と拒否しようとすれば、ボソッと海斗くんが呟いた。


『……天刈あまがい

「あはは。やっぱ海斗くんは分かっちゃうか」


 海斗くんが名前を上げ、僕が正解だと肯定した瞬間。ブ――ッ! と遊李君と誠二くんが盛大に拭いた。


『ゴホゴホッ! ぼ、ボッチ、マジかお前⁉ よ、よりによってあの天刈に惚れたの⁉』

『早まるなでござるボッチ氏⁉ 相手はあのヤンキーでござるよ⁉ 告白なんてしたら殺されるでござる⁉』

「アマガミさんはそんな悪い人じゃないよ」

『『もはやあだ名で呼ぶ仲まで⁉』』


 二人が大仰に驚く。


『……風の噂で最近2組の帆織と天刈がよく一緒にいるって聞いたけど、まさか事実だったとはな』

『拙者は絶対眉唾ものだと信じてなかったでござるが、本人が認めてしまえばどうやら信じざるを得ないようですな』

『あぁ。同じクラスの俺も、コイツと天刈が仲良くしてるの頻繁に見るよ』


 事実なのかよ、とボイスチャット越しでも二人が頬を引きつらせているのが分かった。


「そんなに変かな。僕とアマガミさんが一緒にいるの」

『まぁ、想像できなくもないけど。しかしあの天刈かー』 

『ボッチ氏のことですから、クラスで確実に浮いている天刈氏を放っておけなかったのでしょう』

『たぶんそんな感じだと思うぞ』


 それで本人の見解は? と問われて、


「概ね、合ってます」

『……はぁ』


 三人同時にため息を吐かれた。


「皆勘違いしてる。アマガミさんは普通にいい人だよ」

『たぶんそれボッチが特別なだけじゃね? 天刈って孤立……っつーか孤高じゃん。どこにも群れないし、群れようともしない』

『常人は皆、天刈愛美という名を聞いただけで震え上がるでござるよ』

『中学別だった俺たちですらその名前聞くくらいだもんねー」


 俺も天刈とだけは関わりたくない、と遊李くんが飲み物を飲みながら言った。

 何も言い返せずに歯噛みする僕に、海斗くんがアドバイスを送るように言った。


『お前は誰にだって優しいから平等に接するけどさ、でも、あまりヤンキーに深入りすんなよ。何か面倒ごとに巻き込まれた後じゃ手遅れなんだからな』

「……気をつけるよ」


 僕のことを心配して忠告してくれている。それは分かっている。

 渋々と頷いた僕は、しかし人知れず悔しさ表すように強く拳を握りしめるのだった。


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