22.大規模浄化の後は
「淀みの点検に」
「ディラン様。先日、テラスが大規模浄化をしてくれましたよ？」
「そうか……」
「ねぇ、クロウ様。この部分なのですが」
「テラス。そこは、ディラン様しかわからないから、ディラン様に聞け」
「「……」」
「働くにくい」
微妙な距離感が開いたままの地獄の神とテラスに挟まれたクロウは、うなだれている。
「クロウ様。ミコから手紙が来たのですが、天界で今流行っているお菓子で」
「そんなものがあるのか！？ 今度盗って……買ってくるぞ！」
「……クロウ。やけにテラスと仲がいいな」
「……ディラン様。俺を羨むなら、ご自身がお話されればいいではありませんか」
「「……」」
「もうイヤぁ……」
ビー！ビー！
「アラート！？」
「先日、テラスが大規模浄化をしてくれたんだろう？」
「はい！ 滞りなく、終えたはずですが」
「あぁ。それは私がわかっているよ。テラスの浄化は完璧だった。心地よかったよ」
「……ありがとうございます」
「そこ！ いちゃついていないで、見に行きますよ！？」
「「……いちゃついて！？？」」
クロウは、顔を真っ赤にした一人と一柱を追い立てて、アラートが鳴った現場へと急いだ。
「土砂崩れが起こって、淀みが現れたのか」
「ここは、土砂崩れが起こりにくい場所のはずなんすけどね」
「……私の浄化のせいでしょうか？」
「「それはない」」
「……だが、できることなら、浄化してくれると助かるんだが……」
「もちろんです！」
テラスが淡く光り、浄化を終える。
「なぜ土砂崩れが起こったのでしょう？」
「後日、調査にこよう」
「はい……。ディラン様。私とクロウ様は、いいお友達ですよ」
「そうか……ありがとう。すまなかったな」
ディランがテラスの頭に手を乗せ、優しくなでた。先に飛んでいっていたクロウは気がつかなかった。
その後ろ姿を見ながら、何かを回収する影にも、誰も気がつかなかった。
