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20.手紙交換

「ディラン様……」


「テラス。行ってくるから、また後にしてもらってもいいかな?」


「はい……」



 悲しそうに地獄の神を見つめるテラスの肩を、クロウが優しく叩いた。


「大丈夫だ。今は繁忙期ってやつなんだ。落ち着いたら、いつものディラン様に戻るさ!」


「……ポンコツなミスばかりして、ディラン様に呆れられたのかもしまいません」


「そんなことないぞ! 仕方ねーな! パーっと地獄飛行ツアーに連れて行ってやるよ! 背中に乗んな!」


 バサバサと翼を生やしたクロウが、テラスを乗せて地獄の空を舞う。


「見ろよ! あれが執務室だ。で、あっちは血の池。空の上から見る血の池は、苦しむ人が見えないから夕日に染まった池みたいでいいだろう?」


「本当ですね! あ、こっちには何があるんですか?」


「こっちにはな、」





「楽しかったです。ありがとうございます」


「なかなかいいもんだろう? ピクニックをした場所も俺の好きな場所だが、ああやって空を飛ぶのもやっぱり性に合うんだ」


「元々カラスでいらっしゃいますもんね。ふふふふ」


 クロウとテラスが談笑する姿を、見守りながら、地獄の神はひとり、言うのだった。


「テラスを地獄から救ってやらないと……。いやでも、もう手放したくない……。せめて、私からは距離を取ってあげよう」







ーーーー

「やっぱり、ディラン様にお会いできないとなぜか辛いです」


 寝る前にぼーっとしていたテラスは、そう呟き、便箋を取り出した。


“ミコへ

お元気ですか? 私は元気です

最近、ミコに会えてなくて寂しいな

相談があって、友達のことなんだけどね?

上司に距離を取られて寂しくて辛くてたまらないんだって

確かに、友達がポンコツなミスをして迷惑をかけちゃったみたいなんだけど

前の上司に対してならそんなこと思わなかったと思うって言っているの

なんでだろう

優しい上司だからかな?

私は不要な部下なのかな……

それはさておき、また遊びに来てね! 地獄で待っているね!


テラスより”





「友達が言ってたってありきたりな自分の相談じゃん! と言うか、テラスって私以外に友達いなくない!? もう。鈍感で不器用なんだから……。ディラン様も阿呆なのね!? 仕方ない。一役買ってあげますか!」


 受け取った手紙に盛大なツッコミを入れたミコは、返事を書いた。




“テラスへ

私も元気だよ。

その友達に言ってあげな! きっとその想いは何なのか自分でわかってるんじゃないかな?って!

その人のことを思って辛くなったり、その人のことで一喜一憂したり、一挙一足が気になって仕方ないのなら、恋だと思うよ。

ただ、どんなテラスだって地獄のみんなも私も大切に思ってるよ

ディラン様だって、テラスのことすごく大切に思っていると思うよ?……そう言われたら、どんなふうな感じた? それがテラスの気持ちじゃないかな?


P.S.私にもそんな相手が現れました。叶わぬ恋だから、今度本当に2人っきりの時に聞いて欲しいな。他の人には絶対内緒だよ?


ミコより”



「……ディラン様のことを考えると、苦しくてドキドキして……これが恋……。そっか。ストンときた」


 ミコからの手紙の返事を読みながら、テラスは頷く。


「……ミコの想い人って誰なんだろう?」

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