ガチャ763回目:共有ポイント
ひとしきり甘えたアズとイズミは、アイコンタクトを交わした。
「アズさん。多少なりともお兄様が気にしているうちに、言えるだけ言ったほうがいいですよ。じゃないとそのうち、忘れちゃいますから、この人☆」
『ええー、そうなの? じゃあ言ったほうがいいのかしら……』
「ん? 聞いた方がいい悩みだったか?」
若干興味が共有システムの方に向かっていたが、そう言われると気になってくるな。
『……えっとね。あたしはマスターに『テイム』してもらったからこそ、今がある訳じゃない?』
「そうだな」
『それで、『テイム』される前は人間のことなんて下等な存在だと思ってたのね?』
「ああ、まあ……。『テイム』直前どころか、『テイム』から数日間くらいは、そんな風に思ってる気配を感じてはいたな」
『それであたしがこの世界に来た時は、ダンジョンボスであり、ダンジョンの管理者でもあったわけじゃない? だから、その内の片方が戻って来たら、あの時の感覚が戻って来ちゃうんじゃないかと、危惧してたわけよ』
……つまり、アズである前に魔王アスモデウスだった時の価値観や感情が、管理者に舞い戻ることでフラッシュバックするんじゃないかと危惧してたわけか。
それであんなに不安そうにしてたって事は、今この状態がアズにとって手放したくない状態であるとも感じてくれているということだ。
「まあでも、そこはアレだろ」
『アレ?』
「今のアズが、『テイム』によって植え付けられた感情なのか、アズ自身が自分で考えてたどり着いた価値観なのかって話だ。前者なら確かに心配する必要があるかもしれないが、後者なら恐れる必要はないだろ」
『……それはそうかもしれないけど、あたしにはどっちがどうとかわかんないもの』
まあこういうのは自分では見えづらいか。
「でも俺は、今のアズは後者だと思ってるから、何の心配もしてないぞ」
『……マスター♪』
うん、納得したみたいだな。アズの頭を撫でると、尻尾が嬉しそうに返事をしてくる。
んじゃお待ちかねの、共有システムの確認と行こうか。
「ダンジョンコア。俺たちは協力関係を結ぶ。許可をしてくれ」
『許可。コンソールに触れてください』
言われるがまま3人でコンソールに触れると、ダンジョンコアは何かを確認するように数回明滅した。
『……確認。管理者達の意思を確認。許可。登録完了。現在の利用可能ポイントは最大36、残数13です。コピーするスキルを選択してください』
「36……!?」
思ったより……増えてないな。
「あー……。ダンジョンコア、俺とイズミの2人だけで協力関係を結んだ場合は、何ポイントだ?」
『確認。許可。最大35。残数12です』
「んん?」
1しか変化がない。という事は……。
「全合算と全乗算か……?」
(3+8+1)+(3×8×1)みたいな感じっぽい。となると、共有システムをうまく使うなら、アズにもイズミにも、上手くポイントを分散させるのがベストか……?
「お兄様、分散のしすぎも良くないと思うわ」
『そうね。マスターの管理レベルが下がると、情報の封鎖解除権限も下がるし、そうすると必然的に改造できる権限レベルも落ちるわ』
「む。そうか……それは望ましくないな」
『ごめんなさいマスター。そういう意味ではマスターからじゃなく、マスターの番……いえ、イズミから権限を受け取るべきだとは思ったのだけど』
アズがモジモジしている。
「まあそうだな。何か、理由があったのか?」
『ええ。最初は、マスターから欲しかったの……』
そんな可愛らしい理由なら、許さざるを得ないな。んで、俺の知らない所で俺のためにならない事を実行できたという事は、うちの嫁達の大半からは許可を得ているという事だ。
ただ、どう考えても俺に損しかない流れで、嫁達が了解を出すことには違和感があった。
「それでね、お兄様。その代わりとしてあたしの権限も1つ、お兄様に渡す事でチャラにしたいの」
「なるほど、嫁達が納得した理由はそこか」
そういう事なら彼女達の判断も理解できる。
「って訳でアズ。このくらいの事なら俺も目くじらを立てないから、今後は俺にも相談してくれると嬉しいな」
『ええ、そうするわマスター♪』
「それでお兄様。どのダンジョンの権限が欲しい?」
「あー、そうだな……」
正直どれでもいいんだが、どうせなら直接支配するダンジョンは身近に密集している方が分かりやすいよな。
「第一エリアの607……『山岳ダンジョン』を貰っていいか?」
「オッケー☆」
権限の移譲はつつがなく進み、改めて今の状態でポイントの再確認をしてもらった。
『登録完了。現在の利用可能ポイントは最大30、残数7です。コピーするスキルを選択してください』
(2+9+1)+(2×9×1)で確定だな。そして減っちゃったな。まあ、ポイントのことを思えば今すぐ交換する必要はなかったのだが、どうせ俺もイズミも、すぐに別のダンジョンを攻略するだろうし、この程度誤差だろう。
「それでお兄様、アズさんのスキルでどれが欲しいの?」
『どれが欲しいの、マスター♪』
「まあどれが欲しいかって言われたら、気になるスキルは山ほどある訳だが……」
『『色欲』?』
「扱いに困るわ。てか、交換は不可能だろう、リストにないしな」
アズのスキルの一覧は目の前に表示されていたが、そこに記載されている中に『色欲』はなかった。現状俺が最も気になっていたスキルは……。
「これだな。7ポイント消費の『スキル付与』『スキル生成』『スキル譲渡』」
やっぱどいつもこいつも『高位伝説』だったか。
「つーか、他もそうだが、大概が『高位伝説』じゃん。どうなってんだアズのスキル」
『原初魔法LvMAX』も7ポイント、『魔王の法典LvMAX』も7ポイントだ。
『マスターがそれを言う? 何よこのスキルラインナップ』
「あはは。そうですよね☆」
リストにないのは、『Eスキル』に『Dスキル』、更には『DSスキル』と、『ソウルトランス』か。まあこいつらは仕方ないというか、俺も最初から諦めてたし良いか。
まずはどれから詳細を聞いていくか悩むな。
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