ガチャ737回目:vsサキュバス戦
「んで、そのダンジョンを再生成するスキル……というか技能か? それはどのようにして使うんだ?」
『そのスキルは今、あたしが持っているの。それをマスターに移したいんだけど、そのためには条件があってね』
「アズのスキルでホイホイとは渡せないのか」
『アレはあたしよりも下の立場にいる人間にしか使えないの。マスターはあたしより格上だから、付与での貸し出しじゃなくて、譲渡する形になるわ』
「なるほどなぁ」
『それでぇ、今のあたしは『テイム』で一時的にあなたのペットになったわけだけど、改めてあたしとマスター、どっちが上に立つべき存在か、格付けがしたいんだけど♪』
そう言って、アズは挑発するように下着の紐を引っ張り、尻尾を俺の脚に絡めてくる。
「それ、結局アズがやりたかっただけじゃないよな?」
『マスターの直接的な戦いの強さはある程度理解したけど、あたしとしてはやっぱりこっちの技能も大事なのよね♪』
それで俺の技巧が大したことなければ、改めてアズは俺と再契約を結ぶ魂胆なのだろう。確かにここで同意さえすれば先ほどの契約を破るわけではないし、籠絡してしまえば不義理になることもない。俺がそう望むように骨抜きに仕立て上げるだけだ。
なるほど、さすがは魔王か。一度軍門に降っても諦めたりはしないらしい。
「良いぞ、受けて立とう」
『そうこなくっちゃ♪』
11人の嫁がいるんだし、たった1人のサキュバスに負けてるようじゃこの先やっていけないだろうからな。それに、うちの嫁達の中にも既にサキュバスみたいに搾り取ってくる子達もいるしなぁ。アイラとか、ハヅキとか。
あとこっちには奥の手の『レッドドラゴンの生き血』もある。こいつは魔法瓶で増殖済みなので惜しむ必要はあんなりない。あるとすれば、使いすぎると色々とリミッターが外れてしまうくらいか。
まあそれを使えば最悪、アズが気絶しようがお構いなしに攻め続ける事になりそうだが……。そうなった時はその時考えるか。
『なら早速――』
「待て待て。まずは連中をダンジョンから排出が先だろ」
『む。……仕方ないわね、待っててあげるわ』
そこから俺は排出機能を使用し、ダンジョン内のすべての生物をダンジョン外に排出。続けてNo.100のスタンピード設定が無効化された事を世界中に通達。更にNo.086を含めた100個のダンジョンで、モンスターのステータスを3%下げることができた旨の通達と実行も同時に行うのだった。
『あ、マスター』
「んー?」
『第七層のアイツの拠点、マスターの役に立つものとか色々あると思うし、取りに行きましょうよ』
「アイツの置き土産ねぇ……。ちょっと嫌だけど、このまま放っておいてもダンジョンに吸収されるだけだろうな。それはそれで勿体無いから、一応貰っておいてやるか」
そのあとは、馬鹿正直にアズを分からせる事を理由に、エス達には先に帰っていて良いことを伝達しておく。そこから俺達は一度ボスフィールドに戻り、徒歩で誰もいなくなったダンジョンを第二層から第七層へと横断。奴の拠点に到着した後は、中にあった貴重品やら危険物やら多種多様なものを奴の持ち物であったであろう複数の『魔法の鞄』に放り込んだ。『異次元の腰巾着』には『魔法の鞄』を入れることはできないから、同時に複数持ち歩く羽目になってしまったが、このくらいは仕方ないだろう。
中身の査定は、嫁達にやってもらうとするか。
「アズ、ここでおっ始めるのは気分悪いから、コアルームで良いか?」
『勿論♪』
マップの仕様か第七層にモンスターは出現しないみたいだが、奴が拠点にしていた場所近くは気が乗らないからな。今からこの戦いを始めると、余裕で朝までかかりそうだし、長時間居ても問題ないコアルームが周りを気にする必要もないだろう。
あとはここで、転移が使えるようになるまで時間を潰すとしよう。
「よし、やり残しはないな。アズ、お待たせ」
『やっとね! うふふ、マスター? 搾られる準備はできているかしら』
「アズこそ、サキュバスとしての矜持を失う事になるかもしれんぞ?」
『え? あたし、サキュバスじゃないわよ』
「いや、嘘つくなよ」
『嘘じゃないわよ!?』
「そんな見た目で『色欲』スキルまで持っておいて、サキュバスじゃないは通らないだろ」
『ホントだもん! あたしは正真正銘、デーモン種の魔王なんだからっ』
「ふーん?」
でもその風貌のアズを日本人が見れば、スキルなんてなくても9割以上は魔王じゃなくてサキュバスだと思っちゃうはずだぞ?
まあ、それは良いか。
「まあそれはともかく、ルールを決めておこうか」
『ギブアップを宣言するか、気絶したら負け。シンプルで良いんじゃない?』
「よし。なら勝負開始だ!」
『骨抜きにしてあげるわ!』
◇◇◇◇◇◇◇◇
勝負は当初の想像通り翌日の朝まで続いた。
結果からしてみれば俺の余裕の勝利ではあった。まあそりゃそうか、俺はスキルがあるけど、アズにはスキル封印によってまともにその辺の増幅技能も耐性スキルも機能していなかったんだから。持ち前の技巧と肉体美、それから気力によって長時間戦えただけでも普通にすごいことだとは思う。
なんなら、うちの嫁達と比べてもダントツでサキュバスしてた。しかし、『レッドドラゴンの生き血』を使うことはなかったとはいえ、スキル有りの俺にここまで食らいついてくるとはな。
……いや、待てよ? だとしたらなんでアズはわざわざ……。
「おーい。アズ、起きてるかー?」
『……』
頬をツンツンつついても反応がなく、代わりにその豊満な存在が返事をするかのように揺れていた。
「ダメだこりゃ」
完全に伸びてる。
まあコレに関しては俺もちょっとやりすぎたと反省するべきかもしれない。いくら続けてもアズがギブアップ宣言をしないから、俺もついムキになっちゃって、アズが気絶するまで続けたんだよな。それでも言わせたかった俺は、無理やり目を覚まさせて連戦をしたら、また気絶して……。結局アズがギブアップ宣言をしたのは、4度目の気絶直前になってからなんだよな。
その後、満足した俺は飯を食ってから仮眠をして今に至るのだが……。アズが目を覚ます様子はまだないし、しばらく放っておくか。
「んー……」
『むにゃむにゃ』
あまり寝てるアズを見てると、またあの熱を思い出しちゃうし、背を向けておくか。
「さて、今は……13時ごろか。エス達は無事、脱出を果たして今は飛行機で帰還中みたいだな」
昨日ワープ機能を使ったのは16時手前くらいだったから、転移機能の再利用可能時間まで、あと2、3時間といったところか。
とりあえず、今まで寝てたことと、数時間後には帰宅できる事を報告しとくか。同じ内容を2枚書いて、赤の紙は嫁達向け、青の紙はエス達向けだ。
世界地図に目を向ければ、001から099までのダンジョンが白く輝いている。流石に今の権限じゃ、管轄内ダンジョンの一斉スタンピード解除まではできないけど、今回の弱体化設定が機能した以上、いずれは未潜入でも遠隔で一括無効化も夢じゃないかもしれんな。
俺が現役のうちに、一体どれだけのダンジョンを平定できるだろうかという懸念があったが、この中枢ダンジョンの存在はかなりありがたかった。どうせなら最後まで、俺と嫁達でダンジョン攻略の栄誉と楽しみは独占してしまいたい。
『んう……』
「お、起きたか」
『あ、マスター♪』
起き上がったアズは、俺を見るなり擦り寄って甘えてくる。甘えてくるのはいいんだが、全裸だからダイレクトに当たってくるんだよな。
「アズ、服を着てくれないか」
『えー? ……んふ、そういうことね。もう、マスターってば元気なんだから♪』
「それはそうとアズ、終わってから言うのもなんだが、なんでスキル無しで挑んできたんだ? 流石にそんなハンデ背負ってたら、勝てるものも勝てないだろ」
『そ、それはその……』
「もしかして、わざと――」
『わざとじゃないわよ!』
「んじゃあ、負けたかったとか?」
『負けたくて負けたわけじゃないわよ』
「じゃあ……なんだ?」
『……自分より強い男なんて、今まで出会う機会なかったもの。それにマスターには、番が何人もいるみたいだし、ならそっちも期待しちゃうじゃない』
ようするに、強い男に組み伏せられて、そっちの意味でも屈服させられたかったと。
なんだよ、結局ヤリたかっただけじゃないか。
『さ、そんなことより早速ダンジョンの改造の仕方を教えるわよ!』
「ああ、そういやそういう話だったな。てかスキルは?」
『それはもう渡してあるわ』
「いつの間に……」
『さっきの最中に♪』
そんな簡単に渡せるのかよ。……まあ良いか、俺も楽しめたし。
そうして転移のクールタイムが開けるその時まで、俺はダンジョンの改造方法を手取り足取り教えてもらうのだった。
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