ガチャ724回目:爆音ゴリラ
守っていたはずのレアモンスターが狙撃され、防壁の内外はパニックに陥っていた。ここからでは声の詳細までは聞こえてこないが、めちゃくちゃ慌てているのは空気感で伝わってくる。
口の動きだけで会話を読むなんて真似は、正直アイラに習ってる最中だからまだ完璧ではない。とはいえ、頑張ればある程度なら読み取れそうな気がするぞ。
「ふむふむ?」
『鷹の目』越しに連中の口元を凝視していれば、自ずと何人かの会話は読み解くことができた。でも、ちょっとした問題があった。
「……んん?」
口の動きと紡がれている言葉の意味が理解できるパターンと、口の動きはわかっても意味がわからないパターンが混じっていたのだ。現状俺のレパートリーは日本語と英語だけだから、別言語かな? まあ、どの言語を使っていようと、慌てていることだけは理解できちゃうんだが。
「なあ、アイツらって英語以外も喋ってたりする?」
疑問をこぼすと、どこからともなくエスからの声が飛んでくる。
「そうだね。少なくとも、見張りの連中の会話を聞いている限りだと、4ヶ国語くらいは使われてると思うよ」
「そんなにか」
どうりで、理解できない訳だ。いくら『知力』が上がっても、知らない言語を解読するような真似はできない。それができれば、大精霊の言葉だろうと理解できるんだろうがな。
にしてもあいつの配下、悪そうな連中が集まってるだろうとは予想していたが、他国の人間も含まれていたか。まあ、日本と違ってアメリカは地続きでいろんな国と繋がってるしな。さもありなん。
「よし、ポイントCに到着。ミスティ、見えているかい?」
「ん。調整指示する」
「よろしく頼むよ」
そうして大まかな調整をしている間も、見張りをしている連中には動きがあった。部隊の一部を射撃があった方向へと向かわせ、残った面々は外と内側に目を光らせた。特に、『ドラムコング』の死体周辺ではかなりの人数が行き来している。
「あの状態でレアⅡが出たらどうなるかなー」
「ん。相手が巨体だったら、それだけで何人か押し潰されるかも」
「それならラッキーなんだがな」
『ドラムコング』ですら、目算3メートルくらいの巨体はあったのだ。なら、次に出てくる奴も……。
「あ、煙が集まってる。1分以内に出るぞ」
「「了解!」」
そうして『鷹の目』でも見守ること数十秒。煙は1ヶ所に集まり膨張。そして中からは、5メートルくらいの大猿が出現した。
『ウオオォォォォ!!!』
*****
名前:ドラムビートコング
レベル:200
腕力:2300
器用:2300
頑丈:2100
俊敏:1200
魔力:1200
知力:400
運:なし
【Bスキル】剛力Ⅴ、怪力Ⅴ、阿修羅Ⅳ、怪力乱神Ⅲ、鉄壁Ⅴ、城壁Ⅴ、金剛体Ⅳ、難攻不落Ⅲ、力溜めⅢ
【Pスキル】身体超強化LvMAX、体術LvMAX、武闘術LvMAX、精力増強LvMAX
【Aスキル】木登りⅦ、鼓舞Ⅴ、ドラミングⅢ、音撃爆裂Ⅲ
【Mスキル】歌魔法Lv2
【Sスキル】威圧Ⅲ、強圧Ⅱ
★【Eスキル】士気向上Ⅲ、パニックボイス
装備:なし
ドロップ:暴音のドラムベース、爆裂モリンガ、ランダムボックス
魔石:極大
*****
あーあー。大質量のモンスターが出現したことで、何人か潰された上に、あいつの叫びを間近で聴いた奴らがパニック状態だ。『パニックボイス』をレジストなしで聴くとああなっちゃうのかー。大変だなー。
「ん。ショウタ、もういい?」
「おう、いいぞー」
確認が終わったので、奴のステータスのうち『Eスキル』の構成を口にする。テレサもマリーも『鷹の目』経由で視てくれているから、奴のステータスも手元の紙にメモしてくれているんだが、流石に『Eスキル』までは見れないからな。
「ありがとうございます、主様」
「こちらこそだ。俺のわがままでメモしてくれてありがとな」
「勿体無いお言葉……。胸に刻みます」
「えへへ。この内容で間違いありませんでしたか?」
「ああ、問題ないよ」
そうこう話していると銃声が1発鳴り響き、奴の頭が2回弾けた。更にそこに無数の風刃が降り注ぐ。
どうやら、1発では足りなかった時に備えて、2人共追撃を放ったみたいだな。余裕でオーバーキルだけど、連中にトドメを刺されるより100倍マシか。
【レベルアップ】
【レベルが28から236に上昇しました】
んじゃ充電ーっと。
レベル:36
腕力:37741(+37702)
器用:37745(+37706)
頑丈:37729(+37690)
俊敏:37774(+37735)
魔力:38163(+38126)
知力:38079(+38042)
運:41962
『エネルギー残高 34/100』
「ん。エスがアイテムを回収した。合流地点に行こう」
「よし、移動だ!」
「「はいっ!」」
そうして俺達は混乱する連中を尻目に合流を果たし、マップ機能を使って第二層へと転移するのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇
「……ここの階層は、静かなもんだな」
「ん。告知があったのは第四層だし、今日は第三層より上の階層では何も起きてないから、平和そのもの」
「これから第五層の騒ぎが届けば、より一層注意は下に向くだろうね」
「主様の計略はお見事ですね。誰も上の階層に戻ってくるなど、予想だにしていないでしょう」
「第六層以降は、彼らにとって本当に秘密にしたい大事な場所ですもんねー。例えこれから何も起きなかったとしても、第六層以降を厳重に警戒するしかないですよー」
「第一層は入場の為の場所だから警備は増加しているし、騒ぎのあった第四・第五からの物理的脱出を防ぐために第三層の出口付近は厳戒態勢。ほんと、驚くくらい綺麗に敵が動いてくれるね」
「まあ実際、第四層の警備は現時点でここに訪れた時の3倍くらいはあるよな。おかげで第二は最低限残してスカスカだ」
他の階層は全体的に増えたのに、この階層に至っては本当に人がいないのだ。なんたって、出入り口にいたはずの見張りは8人+8人から3人+3人になったし、レアモンスターの出現地点に至っては2人しかいない。
けど、いくら全体的に第四層以降に偏ってるからといって第一層や第三層でも追加の狩りをするかといえば、流石にNOだ。第一層なんて、援軍がよく通るから往来が激しいし、そろそろ俺が変身していた幹部の奴が見つからないとか伝達されて、騒ぎになっていてもおかしくはない。俺の潜入方法がもしバレれば、奴らは勝手に疑心暗鬼に陥ってギスギスすることになるだろうけど、反面常に警戒心MAX状態になるので、近づくだけでも危険なのだ。
なので現状、手を出せるのはこの階層のみということになる。
「んで、この階層は見事に矢印が中央の森に向かっていて、そこに連中が見張りを立ててるわけだ」
「ん。雑魚敵も蛇が1種類だけ。蛇も雄雌で分けられているとは思えないし、たぶん普通に100体型だと思う」
「あとはトリガーの有無だが、どうかなー」
「兄さん、そろそろいい時間だけど、夕食はどうする?」
言われて時計を見れば、確かにもう夕食どきだ。お腹もいい感じに減ってきている。
「結界は有効だけど、あまりここでのんびりしているのはよくない気がする。だから、この階層をさっさと終わらせてボス部屋で食べよう」
「了解だ」
「ん。分かった」
「主様、第一層から下層に向かっている一団がいるようです」
「やっつけちゃいます?」
「いや、そいつらは無視して第二層を通り過ぎてから行動開始といこう」
あの一団の速度なら、ものの数分で抜けてくれるだろう。
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