ガチャ723回目:亜空間狙撃
「で、結局これが一番安全だと決まった訳だが……」
俺たちが今いるのは、奴らの防壁と、その向こう側にいるレアモンスターが丁度見えるポイントだ。とはいえ、ここは新たに発見したのではなく、この階層に来たばかりの時に見つけた木の枝がある場所で、その高さにまで岩を積み上げることで視界と安定性を確保した。
更には目立たないよう4人が一度にうつ伏せになれるよう、広さも調整している。
「連中は悪い連中だし、多少痛めつけても心は痛まないから、ちょっと暴れたかったという気持ちがある。例えばグングニルをぶっ放すとかさ」
「ん。その気持ちはわかる。けど『裏決闘』持ちが紛れ込んでいる可能性は高い。見つかったら面倒だから、なるべく隠密で済ませるべき」
「そうなんだよなぁ。あの隊長さんも戻ってきちゃったし、エス曰く、あいつも持ってたみたいだしな」
ほんと、幹部連中はどいつもこいつも持ってるとか、一体あのスキルはどこ産のアイテムなんだか。ここは悪魔が隠れ潜んでいるような負の側面もあるダンジョンだから、ドロップしても不思議では無いんだが……。そうなると、今度は別の疑問も浮かんでくるわけだ。あんなレアリティの高そうな破格スキルを、『運』持ち無しでそうポンポンと手に入れられるかという話だ。一体どうやったんだか……。
ただ、このダンジョンが産出地だったとしたら、早急に供給をストップする必要があるが、出回ってしまってる分に関しては文句を言ってもどうしようもないしな……。ああ、この戦いでボスである征服王をなんとかしたところで、配下の『裏決闘』問題もあるのか……。今から考え始めると憂鬱になりそうだ。
「ん。ショウタ、しっかりして。私がついてる」
「主様、微力ながら私もお力添え致します」
「悩み事ですか? 懺悔で気を楽にすることもできますが、私なら物理的にお助けできますよ!」
「ああ、皆ありがとう」
ほんと、皆頼りになるな。
「兄さん、配置についたよ。ミスティ、指示よろしく」
「ん。任せて」
現在エスには、俺達とは別方向から連中の防壁を狙ってもらっている。勿論、『視界共有』でエスとミスティは連結されていて、更には『鷹の目』とマップ効果で防壁の外にいる連中と、中にいるレアモンスター双方の情報も抜き取り済みである。
出現したままになっているレアモンスター情報はこんな感じだ。
*****
名前:ドラムコング
レベル:120
腕力:1400
器用:1400
頑丈:1350
俊敏:600
魔力:800
知力:800
運:なし
【Bスキル】剛力Ⅲ、怪力Ⅲ、阿修羅Ⅱ、怪力乱神、鉄壁Ⅲ、城壁Ⅲ、金剛体Ⅱ、難攻不落、力溜め
【Pスキル】身体強化LvMAX、体術LvMAX、格闘術LvMAX、精力増強Lv3
【Aスキル】木登りⅤ、鼓舞Ⅲ、ドラミング
【Sスキル】強圧
★【Eスキル】士気向上
装備:なし
ドロップ:狂乱のドラムスティック、豊穣のモリンガ
魔石:大
*****
なんか、どっかで見たスキル構成に近いな。……『レッドゴリラ』か? まあコイツもゴリラだけど。
「ドラムスティックはまだ分かるけど、モリンガってなんだ?」
「確か、野菜ですね。別名としてドラムスティックツリーという名もあったかと。主様の国で言うところの……サヤ? が近いかと思います」
「サヤ? っていうと……」
思い浮かぶのはさやえんどうとか、そういう類の物なんだけど、合ってるかな?
まあトリガーになるかは分からんが、ドロップしたらエスには全回収してもらうとしよう。トリガーじゃなかったとしても、イリスが喜びそうだしな。そう考えている間も、ミスティはエスに指示を飛ばす。今のミスティは狙撃手でありながら、観測手でもあるのだ。
「ん。エス左に12、下に3。……ん。右に0.5、下に0.04。……OK」
「固定した。いつでも良いよ」
今何をしているかというと、エスにはケルベロスの片割れを持ち運んでもらい、別方向から構えてもらっている。ミスティの狙撃威力は破格ではあるものの、今回はレアとレアⅡで最低でも2回は撃つ必要がある。狙撃手に求められるものは、狙撃の腕もそうだが、機動性が重要となる。
1発撃ってから移動する場合、エスを起点とするべきところだが、ミスティを抱えながらだと若干機動力が落ちる。その上、2人の手が塞がっていると、もしもの時の攻撃手段が減るというデメリットもある。
だからと言ってエスが代わりに撃ったところで威力はしれているが、そこはケルベロスの契約者であるミスティ。トリガーを弾いた銃とは別の銃から弾丸を発生させるという、相手の虚をつく武技スキルを持っているようなのだ。
けどこの技は、弾丸を回避できない低級の相手にはそもそも意味がなく、飛来する投擲物の全てを感知できる上級の相手にも意味をなさない。なんとも使い勝手の悪い一発芸みたいな技だ。だが、銃身そのものを他者が持ち運んでいた場合は、また話が変わってくる。
「ん。ショウタ、合図を」
「ああ、そうだな――」
【ダンジョン設定が変更されました】
【以後一ヶ月間、No.100に出現する全モンスターのドロップ率、アイテム産出量が1/10に低減します】
「おっ?」
「ん。ショウタ、これって」
「ああ。征服王の仕業だな。いないと思ったら、やっぱコアルームに移動してたか」
鍵がない想定ではあったが、操作すること自体は可能なのか。それにしても、全アイテムのドロップと出現率を10分の1にねぇ。そんな事ができるとは知らなかったが、随分と思い切ったことをしたな。
「これは奴にとっても苦肉の策なんだろうな。俺という異物を排除するのは後回しにして、何よりも攻略させない事を優先としたわけだ。トリガーが出なければ何も得られないからな。だけど、排除できたとしてもアイテムの産出量は落ちるから、長期的に見れば諸刃の剣な訳だ」
でも奴に取れる選択肢は、それくらいしかなかったというわけだ。そこからも、奴の状況というのは色々と見えてくるというものだ。
そう思っていると、エスから戸惑いの声が聞こえてくる。
「兄さん、どうする?」
「どうもこうもない。たかが10分の1だ。やっちまえ!」
「了解、ミスティ!」
「ん! 『ディメンション・スナイプ』!」
ミスティがトリガーを弾くが、彼女の銃身から弾が出ることはなかった。しかし、遥か先にいる『ドラムコング』の頭が弾け飛んだのが見えた。理屈を知ってなきゃ、意味の分からん光景だよな。
【レベルアップ】
【レベルが96から128に上昇しました】
「ん。着弾確認」
「煙は出てる。問題なく次が出るぞ」
「こちらでも撃破を確認。ポイントCに移動するよ」
さて、俺は充電でもしますかね。
レベル:28
腕力:37733(+37702)
器用:37737(+37706)
頑丈:37721(+37690)
俊敏:37766(+37735)
魔力:38155(+38126)
知力:38071(+38042)
運:41546
『エネルギー残高 32/100』
これでよしと。
たかが10分の1程度で、俺が止まると思ったら大間違いだぞ、征服王。
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