ガチャ708回目:隠し要素
俺は『解析の魔眼』で見えた新情報を仲間達に共有した。
「ん。トリガーアイテムと繋がりがある場所が見れるなんて、すごい」
「トリガーアイテムと、それを使用して呼び出すモンスターとの関係性は、長年研究されて来ました。ですが、その繋がりが見える方なんて存じ上げません」
「さすが勇者様ですっ!」
「そうだね。入手できる素材やアイテムの中に、『真鑑定』でトリガーアイテムに使える情報があれば、そのダンジョンにその類のモンスターがいることまではわかるけど、どこにいるかは本当に手当たり次第……。それこそ虱潰しになるからね。兄さん的には、この方法でその場所を発見するのはアリなのかい?」
「あー……どうだろうな。そもそもこれまでの冒険で、1度もそのポイントを知覚していないからな。知らない以上探しようがないから、最初はしょうがないんじゃないかな?」
『解析の魔眼』なしでも特定ができそうな要素さえ見つかれば、他で探してみたくはあるよな。それで『あ、これトリガーモンスターが湧きそうだな』って簡単にわかるレベルの物だったら、次から普通に探すのもありかもしれない。
ただ、今回ばかりは悠長に探索している暇はないから、惜しみなくこの力を使うんだがな。
「兄さん、確認なんだけど、こっちの角2種から伸びている魔力の糸は、同じ方向を指しているかい?」
「ああ。マップ位置的にも、連中が見張りを続けている場所に伸びてる感じだな」
「ん。こっちのトロフィーは?」
「連中とはまるで違う場所を指しているが、どうやらそれぞれが別のところを指してるみたいなんだ。雄牛はこっち。雌牛はこっちだな」
「ん……。雄牛の方、私達がキャンプしてた場所に近い?」
「あの何もなさそうな平原ですか……」
「トリガーモンスターが出現しそうなオブジェクトはなかったように見えましたが……」
「とにかく、行ってみよう。確認はそれからだ」
そうして俺達は、魔力の糸を辿って動き始めた。
◇◇◇◇◇◇◇◇
「……やっぱりただの平原で、変わった物は見当たらないね。兄さん、魔力の糸は?」
「この先で途切れてるな」
「ん。……やっぱり何もない」
その場所は昨晩キャンプをした場所から目と鼻の先と言えるくらい、めちゃくちゃ近かった。だけどそこは本当にただの平原で、怪しいものなど何もなかった。妙なところがあるとすれば、それは魔力の糸が変なところで途切れて見えることくらいだろう。
なんだろう、この……忽然と見えなくなっているかのような途切れ方は……。
「……待てよ? そういう事か……?」
俺はおもむろに途切れた場所を踏み抜いた。
すると、視界がガラリと変わった。
「ほぉ……」
そこは今まで見ていた平原なんかではなく、牧歌的な田園風景が広がっていた。今までいた森や平原と比べると、植生や空気感がまるで違う。なんだか、別の階層に来たかのような違和感さえ感じていた。
俺は違和感の正体を探る為、マップに視界を映すと、そこには今までにない情報が映り込んでいた。
「マップ外マップだと? 面白いことしてくれるじゃないか」
現在地を現す俺のマークが、今までいた4層の外側にあった。距離で言えばそこまで離れていないが、後ろを見ても先ほどまでいた平原が見える訳でもなく……。だがまあ、マップの外側に別のマップが広がっているだなんて、考えた事も無かった。『696ダンジョン』の第四層にあった隠し島は、一応マップ内の内側だったからな。
しっかしまさか、こんなギミックが隠されていたなんてな。まだまだダンジョンは俺を楽しませてくれる。
「……あれ? そういや他の皆は……」
振り向いた時に気が付くべきだったが、誰もやってくる気配が無い。
マップを見れば、元々俺がいたであろう場所をウロチョロとしている様子が見てとれた。俺が消えた場所は見ていただろうし、同じように入って来るものだとばかり思っていたが……。
「まさか、トリガーアイテムを持っていないから入れないのか!?」
まるで、管理者の鍵と同じだな。けど、それだと入場者が限られてしまう。レアモンスターを相手に一人で戦うなんて真似、俺達みたいなSランクくらいなら問題は無いが、普通はそうじゃないだろう。
だから、人数分のトリガーアイテムが必要であるとは、思えないんだよな……。
「ひとまず戻るか」
そう呟いて来た道を戻れば、景色が切り替わりミスティが飛びついて来た。
「ん! どこいってたの? 心配した!」
「ごめんな。……もしかして、マップも消えてた?」
「ああ。兄さんが消えた瞬間にプツリとね」
「なるほど。階層が離れない限りは基本的にマップは消えないはずだけど、別エリア扱いか」
「勇者様がご無事で何よりです!」
「主様の無事を祈っておりました」
「ああ、ありがとな」
そうして今しがた起きた出来事を共有し、俺の仮説を伝えた。
「ん。これに手を重ねればいいの?」
「では私達は腰にしがみ付きますね」
「ええ、そうしましょうっ」
「じゃあ僕は兄さんの肩を掴もうかな」
俺に触れるか、トリガーに触れながらであれば人数制限なしで通れると踏んだんだが、どうかな?
「エスだけ弾かれたりして」
「不穏な事を言わないでよ、兄さん」
「ん。割とありえる」
そんな風に話しつつ、魔力が途切れる場所を通過すると……残念ながら全員無事に移動を果たした。
「これは……。トリガー必須とはいえ、そんな場所が放置されていた以上、ここは完全に未知のエリアだね」
「ん。この光景こそまさに豊穣」
「とてものどかで、素敵な風景です……」
「あの作物も、食べられるんでしょうか?」
「誰も知らないエリアの誰も知らない田園なら、誰も知らない食材が眠ってるかもな」
イリスが喜びそうだ。
とりあえず、魔力の糸を辿りつつ、食材は『魔法の鞄』に詰め込むか。説明書付きで。
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