ガチャ705回目:珍しい食肉
朝食を終え、各々出発の準備を整える。そんな中、マップと睨めっこしながらある程度頭の中で流れを想定していると、外回りをしていたエスが戻って来た。
「兄さん、軽く周囲の音を集めてみたけど、やっぱりこの階層にいる白点も、特定の場所で見張りは続けているけど、そこに集められている理由はよくわかってなさそうだったね。それと、本格的な見張りは以前から続けていたみたいだけど、こんな大人数での警戒はここ最近かららしくて、不満タラタラだったよ」
「なるほど。変身してた幹部は事情は把握してたみたいだけど、実際に見張りをしてる下っ端には内情が知らされてない感じか。まあ、征服王の支配を奪えるかもしれないモノがそこに出現するかもしれないもんな。欲深い連中に知られる訳にはいかないんだろ」
「奴は誰も信用していなさそうだ。……それにしても兄さんは、彼女達に比べて元気そうだね」
エスの視線がテレサとマリーに移る。まあ、確かに2人はちょっと眠そうだった。
「ん。やっぱりこの人数でショウタの相手は厳しい。ショウタのケダモノー」
「一応加減はしたぞ」
「奥様達が主様を取り合わない理由が、痛いほどよくわかりました……」
「勇者様は、そっちも勇者様なんですね……」
「あー……。言っとくけど、俺がこうなったのもほぼほぼ彼女達の策略だからな?」
あの2種類のスキルが無かったころは、回数2桁なんて挑もうものなら、途中で力尽きて翌日には干からびてたからな。
「こう言っちゃなんだけど、エスは大丈夫か? あんまり溜め込むと、身体に悪いだろ」
「僕は兄さんほど旺盛ではないからね。『精力増強』のスキルだっていまだにLv4のままだし」
「まあそうか。……エスの場合、シルヴィが許してても嫁は増えそうに無いよなぁ」
「そうだね。期待している人達もいるみたいだけど、僕はシルヴィ以外を貰う気がないかな」
「だよなぁ……。お前が乗り気じゃない以上、俺が探してやる訳にもいかないしな」
「兄さんも、僕に第二婦人以降が必要だと思ってる?」
「そこまで必要だとは思ってないな。まあ、ダンジョン内で俺らだけイチャつくのは多少申し訳なくは思うが……それよりもシルヴィがな。彼女はエスの事は好きだし独り占めはしたいけど、それと同時にうちの嫁さん達の関係性に憧れてるみたいでな。仲良く同じ旦那を支える関係が眩しいらしい」
「そうなんだね……」
まあでも、エスがこの調子じゃ俺が何か動かない限りは未来永劫嫁はシルヴィ一択だろうな。とはいえ、エスに相応しい子なんて今の所いないから紹介のしようがないわけだが。
「まあでも、俺のダンジョン探索に付き合わせてるとシルヴィと一緒にいられる時間が減るわけだし、次から彼女も連れてくのはどうだ? シルヴィなら、急激にレベルアップしても問題なく対処できるだろうし、『親愛』を渡したから次からは着いて来れるレベルにはなってるだろ」
「ううん、もっと一緒にいられるのは確かに魅力的だ……。その発想も無かったわけじゃないけど、どうなんだろうね。また今度、シルヴィと相談して決めるよ」
「ああ、そうしてくれ」
シルヴィも受付嬢である以上は、一般人とは違ってちゃんとレベルは上げている。それもスタンピードが頻発していたダンジョンの副支部長というポジションにいたんだ。エスの求婚をずっと待っていたくらい良い女だから、覚悟の決まり方も半端じゃない。そんな彼女なら、ダンジョンでもエスを支えてくれるだろう。
もちろん、征服王みたいなヤバい人間がいるところに連れてくのは悩ましいがな。モンスターよりも、人間の方が怖いからな。
「テレサ、マリー。そろそろ大丈夫か?」
「は、はい。お待たせしました!」
「でへ、迎え酒したので回復しましたぁ」
デロデロになったマリーがお酒を片手にしなだれかかってくる。てか、迎え酒ってそういうもんだっけか?
……まあいいか、マリーだし。
「それじゃ、第四層の攻略を始めて行こうか」
「「OK」」
「はい!」
「はぁい~」
まずこの階層にいる通常モンスターは2種類。どちらも闘牛みたいなモンスターで、見た目もそっくりなんだが、決定的に違う点が1つだけある。それは、1本角か、2本角かという点だ。
*****
名前:ホーンブル
レベル:28
腕力:350
器用:250
頑丈:350
俊敏:270
魔力:100
知力:10
運:なし
【Bスキル】剛力、怪力
【Pスキル】身体強化Lv1
【Aスキル】チャージアタック
装備:なし
ドロップ:ホーンブルの肉、ホーンブルのハツ
魔石:小
*****
名前:ダブルホーン
レベル:34
腕力:400
器用:300
頑丈:400
俊敏:300
魔力:100
知力:10
運:なし
【Bスキル】剛力、怪力
【Pスキル】体術Lv1
【Aスキル】チャージアタック
装備:なし
ドロップ:ダブルホーンの肉、ダブルホーンのミルク
魔石:小
*****
闘牛の肉かぁ。そりゃまた、普通にブランド物よりもはるかに珍しいだろうな。流石『豊穣』と名がつくだけの事はある。でも第三層にも牛はいたんだよな。闘牛じゃなくて、乳牛っぽいのが。
てか、闘牛ってオスがなるイメージだけど、ミルクを落とすってことは2本角の方はメスなのか。それはそれで珍味っぷりが凄そうだ。
「闘牛は2種類いるけど、問題は連中が見張りをしているのは中央の1箇所だけなんだよなぁ」
「宝箱があるわけでもなく、ただ何もない場所を守るなんて変な話だよね」
「ん。それにこの階層はレアモンスターを示す矢印マークがマップに表示されていない。なら、中央には何か特殊な出現方法のレアモンスターが存在するはず」
「共有して頂いた見張りの会話から察するに、時間経過型のモンスターが出るとは思えませんね」
「えへ……んんっ。となると、トリガー型ですか」
急にシラフになったマリーが呟く。俺もその可能性を考えていた。こんな高性能になったマップなら、その情報が映ってくれてもおかしくはないんだが……。もしかして、俺が未遭遇だから非表示なだけだったりして?
ありえるなぁ……。
「とりあえず、何がトリガーになるかは分からない。だからひとまずは闘牛のオスとメス、それぞれ100体ずつ狩ろうと思う。ただ、連中は混在して散らばってるから、テレサはメスの方のターゲットを取り続けてくれ。マリーはそれの援護。俺とミスティでとにかくオスを殲滅するから、エスはアイテム回収を頼む」
「ん。おっけ」
「任せてくれ」
「「頑張ります!」」
さーて、早速狩って行くか!
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