ガチャ695回目:下準備と覚悟
『充電』の仕様を考えてうんうんしていると、カスミ達がやって来た。
なんだか皆、真面目な感じだ。
「どうした? ……あっ、もしかしてもう子供できたとか?」
「もう、お兄ちゃん? そんなすぐに分かるわけないでしょ」
「ふふ。わたくし達も解禁されましたが、できるまでは少しもどかしいですわね」
「こういうのって時の運だけど、ボクとしてはまだダンジョンで戦っていたいかなー」
「そうね。お兄様の子供は欲しいけど、そうなってくると今度はダンジョン攻略は疎遠になってしまうものね」
「それについては悩ましいところですが、今日は別件です、兄上」
「大事な話だよ。さ、カスミちゃん、言っちゃって☆」
こういうのは大体イズミが言ってくれるんだが、今日はカスミか。なら、チームのリーダーとして決定した何かの報告……かな?
「あのね、お兄ちゃん。マキお姉ちゃんたちは、今後安静にしてもらう為に、家でお留守番する事になっちゃったでしょ?」
「そうだなー。本当に必要かどうかは分からないし、世間の目とかはどうでも良いけど、彼女達にもしもがあったら嫌だしな」
「それでね、今後特別な理由がない限り、ダンジョン探索にはシャルさん達を連れて行くんだよね?」
「たぶんなー。……でも、今回は連れて行けないかもだが」
前回の『鳥取砂丘ダンジョン』のスタンピードで一緒に行動して以降、カスミ達はあの4人の中では、シャルとの関係が特に良好になったようだった。でも、他の子達とも一緒に日本を観光案内したりしていて、関係構築は問題ないみたいだが。
「それでその冒険なんだけど……。よーく考えたんだけど、あたし達は別々で行動しようと思うの。元々アイラさんは、妊娠とかの関係で動けなくなった時の予備として私達を迎え入れてくれたけど、あの時とは明確に違う事があるでしょ?」
「ああ。お前達でも、簡単なダンジョンなら制覇できるってところだな」
「そう。一緒に行動してたらそれができなくなるし、勿体ないでしょ? それに結界が広い方が皆安心できると思うんだ」
なるほど。世間からは第二チームとして評価されてるから、今後も第二チームとして活動していきたいと言うわけだ。けど、その発想に至った経緯が問題だよな。
「……カスミ。1つ確認だが、その決定は本当にお前たちの意志か? 他所からなにか余計な茶々を入れられて共感しちゃったとか、流された訳じゃないのか?」
「う……。そう言われると、絶対にないとは言えないんだけど……。でも、この気持ちに嘘はないよ!」
カスミが覚悟を吐露し、他のメンバーも頷いた。ちょっとモゴモゴしてたけど。
まあ、誰かに言われたから「やらなきゃいけない!」って考えなら止めたけど、見た感じ全員話し合って納得はしてるっぽいんだよな。なら、無理に止める必要は無いかな。少なくとも、義務感でやり始めたら疲れるだけだからな。
「……分かった。止めはしないけど約束してくれ。1つ。トロフィーや鍵を集める過程で、レアの強さから大体のボスの強さや特性を想像できる事があると思う。その中で、少しでも無理そうだと思ったらリタイアしてでも帰ってこい。そん時は、俺が手伝ってやるから。迷惑だとかそんな余計な事は考えなくて良いからな」
「うん!」
「2つ。世界のためって理由で行動するのは素晴らしいことだとは思うが、こういうのって見えない負担が結構来るもんだ。レベルは上がってもメンタルまでは強くならないから、嫌になったらいつでも辞めて良い。無理強いしてくるような馬鹿野郎がいたらいつでも言ってくれ。俺がボスモンスターの気配と圧力を再現して、自分がどれだけ温室でヌクヌクと、俺の嫁にいらん義務を押し付けて来たのか魂に刻み込んでやるから」
「う、うん……。わかった、ありがとう!」
「ふふ、兄上は過保護ですね」
「違うわハヅキ。これも愛よ」
「愛……素晴らしいですわ」
「愛なら仕方ないよねー」
「あ、それからお兄様。帰って来た時は、ご褒美にたっぷり愛してくださいね☆」
「「「「「!!」」」」」
イズミの言葉に全員がハッとなり、うんうんと頷く。
……なるほど。本音はこっちだな?
どうやらこの子達は、しばらく我慢して一気に発散させることにハマってしまったらしい。まあ今までも、そんな感じだったもんな。
「任せとけ」
この子達がこうなってんのって、多分『性豪LvMAX』のせいでもあるんだろうけどな。MAXになったことで、体感だけど持続力のほかにそっちの技術もスキルアップした感じがするし。
だからそういうのにハマらせたのは、俺の責任でもある。謹んで受け入れるとしよう。
「イズミ、ちょっと話は変わるけど、確認がしたい」
「なーに?☆」
「さっきガチャで『アトラスの縮図』がⅢになったんだけど、そっちのコピーはどうなってる?」
「えっとねー……。あ、Ⅱのままみたい」
「そうか……。じゃあ何がどう変わったかは不明だけど、さっくりと更新しておくか」
「はーい☆」
そう話していると、ちょうどエンリルがリビングへとやって来た。
『ポポ!』
「おー、タイミング良いな」
『ポ? ポポ』
必要になりそうな気配がしたらしい。さすが俺の子。察知能力が高い。
「んじゃエンリル。俺とイズミの2人で、さっと『アンラッキーホール』へ行くから、運ぶの手伝ってくれ」
『ポ!』
「「「「「いってらっしゃーい」」」」」
そうして俺とイズミは、カスミ達に見送られながら外へと出る。そうして『浮遊術』で浮かび上がり、軽くなった身体をエンリルの『風』で運んでもらうのだった。
読者の皆様へ
この作品が、面白かった!続きが気になる!と思っていただけた方は、
ブックマーク登録や、下にある☆☆☆☆☆を★★★★★へと評価して下さると励みになります。
よろしくお願いします!