ガチャ679回目:嫌な予感の正体
再会を喜び帰路につく俺たちだったが、報告しなければならないことがあったため、そのまま車内で情報を共有する事にした。
まず、今回のスタンピードが人為的であることを証明する、犯人一味の確保だ。これについては早々にクリスの力で捕獲したため、尋問などはできていないが、専門機関にお願いすれば大丈夫だと思う。
まあ専門機関と書いて、宝条院家と読むんだが。
サクヤさんの手にかかれば、甚振る必要もなく情報を吐かせることも可能だろうからな。この手の闇深い話には敵側でも『誓約書』関係の問題がついて回るだろうけど、サクヤさんならそれを突破する抜け道とかを知っていてもおかしくないしな。
そういや、今のレベルならサクヤさんに再び会っても問題なさそうだよな。近い内にまた会おうかな。……いやまあ、無理に合わなくても結婚式には参列してくれるか?
「危険スキルを持っていない相手なら、奥様が危険な目に遭うこともないでしょう。あの方が尋問を担当してくださるのであれば、最良の結果が齎されるかと」
サクヤさんのスキルは、レベルが高い相手や同性には効きにくかったりもするけど、耐性のない異性にはとにかくぶっ刺さるからなあ。
今回うちの彼女達は『アンラッキーホール』まで、多人数移動用のリムジンを使ってやってきてくれたのだが、流石に1/1スケールの氷像が入るようなものではない。まあ、入ったとしてもそんな物を入れたくないのが心情だが。
なのでソレは現在、エスに頼んで空輸で運んでもらっている。行先は一旦我が家のヘリポートだが、そこから先はサクヤさんの関係者を呼んで引き取ってもらうか。けど、それの解凍はクリスにしかできないんだよな……。
「クリス、疲れてるところ悪いけど、氷像の引き渡し後、解凍するまではサクヤさんの指示に従ってくれるか?」
「かしこまりましたわ、ショウタ様」
「ありがとう。クリスには今回助けられてばかりだな」
「お力になれて光栄ですわ」
俺とクリスとの関係進捗が良好であることを察して、うちの彼女達はにっこり微笑み、護衛についてきてくれていたテレサとマリーの2人は驚きを隠せないでいた。
「クリスさん、もしかしてもう認めてもらったのですか?」
「そのようですね。海は彼女の独壇場ですから、存分に活躍できたようですわ」
「むむむ。今回何もできなかったし、私も活躍したいけど、私の能力的に活躍できない方が良いんですよね……。悩ましいです」
まあマリーの能力的に、メインは成長型の『聖魔法』と『回復魔法』だもんな。それが活躍する場面って、いわゆるピンチな状況だし、彼女の言う事もわからんでもない。ただまあ、彼女の人となりは元々4人の中でも一番好感度高いんだけどね。アキの飲み友達というか、飲みニケーションができる子は貴重だと思うし。
俺も『酒耐性』のおかげで付き合えはするけど、率先して飲みたい派でもないしなぁ。
「光栄です、ご主人様」
「ん? ……ああ、先読みしすぎだろアイラ。まだそこまで思考は進んでなかったぞ」
「おや、先走りすぎましたか」
「まあ間違いじゃないんだけども」
続く思考は、「なんだかんだで俺が好んで飲む物は、アイラの淹れてくれるお茶が一番」だっただろうからな。しっかし、あまりに唐突すぎて思考が止まったぞ。
話が急に飛ぶもんだから、新入りのクリス達もクエスチョンマーク浮かべてるし。シルヴィはギリギリ察することができた感じかな。
「一旦話は戻して……。テレサとマリーも、今回はお疲れ様。2人が護衛に回ってくれたから、安心してスタンピードに集中できたよ」
「勿体なきお言葉……!」
「そう言ってもらえるのはありがたいですけど、私達はただ半日、一緒に居ただけですし……」
「良いんだよそれで。何も無いのが一番なんだから」
「……それもそうですね」
カスミ達の方は、予想的中して何かあったみたいだけど。
「アイラ、国内での問題はさっきの通達があったダンジョンだけだったのか?」
「いえ、他でも動きがあったようです。ご主人様の懸念を奥様に伝えたところ、各地に散らばる宝条院家の部隊が調査に動き、3つのダンジョンで怪しい人物を発見しました」
「338以外にも侵入者がいたのか」
「はい。うち1つはご主人様が攻略した『初心者ダンジョン』です。昨日の段階で、怪しい雰囲気の冒険者が奥へと入って行ったと職員からの目撃があり、その情報をもとに調査を敢行し、第三層の森の中で発見しました。包囲後に接触を図ろうとしたみたいですが、即座に光に包まれ消失したそうです。ご主人様のマップスキルと同等の何かがあると思われます」
「なるほど」
奴ら、スタンピード停止中の『初心者ダンジョン』で何をしてたんだ? もしかして、その状態でも無理やりスタンピードを起こせる何かを持っていたか、それに類する強力なアイテムがあって、有効かどうか試してみたかったとかかな。
もし起こせていたら、俺とダンジョンメッセージへの信頼は地に落ちていただろうから、試すだけなら損はしないよな。
「続いて第一エリアのダンジョンNo.212『暴風ダンジョン』でも同様の報告があり、こちらも部隊の人間が送り込まれました」
「結果は?」
「同じく逃げられました」
「あらら」
まあ、全部今日1日……正確には半日で起きたイベントだし、ダンジョンの奥深くじゃまともな情報共有なんてできないしな。同じ失敗をするのも仕方がない気がする。
「ですが、北海道にあるダンジョンでは少し違う結果になりました」
「というと?」
「こちらはつい1時間ほど前の事なのですが、事前に2カ所での結末について情報共有がされていたため、アイテム封じのアーティファクトを用いた上で包囲したのです。その結果、侵入者は自身にスキルを使いアイテムごと自身を焼き、自殺を図りました」
「うへー」
「ですが対処したのは奥様直属の配下。即座に消火と治療を施した結果、犯人は一命は取り留めました。ですが、アイテムはロスト。結果、物的証拠は何も得られなかったそうです。本来ならここで調査は詰まっていたところですが……」
アイラは車内ミラーに映るクリスへと視線を動かした。
「ああ。クリスはお手柄だった訳だ」
「それもこれも、ショウタ様のお膳立てのおかげですわ。わたくしは、事前準備をしっかり整え、未知の現象に巻き込まれ困惑している相手に技を放っただけですもの」
謙遜しているが、今回の捕獲も、スタンピードでの平定も、MVPは間違いなく彼女だろうな。
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