ガチャ672回目:最高ランクの区分
……ふむ。まだボスは出てこないみたいだし、取得したスキルくらいはちょっと試してみるか。
まずは効果が予測できない『真理の眼Ⅱ』の方から……。
「……特に変わらんな」
武器防具や人、エンキ達やイリス。色々と視れそうなものはチェックしたが、何も目新しい変化はなかった。『スキル進化』も試してみたが反応はないし、今回のガチャで出たり成長したスキルはキーパーツではなかったのか、それともまだ何か足りないのか……。
レベル制の耐性スキルは、今のところ俺が認知している物は全てMAXになったんだがな。この調子なら、まだ未発見のものがありそうだ。エスに聞けば教えてくれそうだけど、自然な流れで俺に入ってこない情報は、今の俺には必要ないものである可能性が高いからな。
わざわざ聞きに行く必要はないと思うし、別に良いかな。
「んじゃ次はこっちだな『覇色の魔眼』」
こっちは使用してすぐに効果が発揮された。
「これがサクヤさんの見てる景色か……」
俺の視界に仲間達から発せられるオーラの強さと、色が見えるようになっていた。
エス、ミスティ、クリス、エンリルは『幻想』スキルを持っていることから虹色のオーラとなり、エンキ達はよくて『遺産』スキルまでだから5番目の紫色ってところだったが。
ちなみに『遺産』枠は、エンキなら『巨人の腕』。セレンやイリスなら『海魔法』。アグニなら『溶岩人形』ってところだ。
「しかし、なるほどなぁ」
このスキルがあれば、例え『鑑定偽装』のレベルがMAXだったり、防ぐ系のスキルや装備があったとしてもどのランクのスキルを持っているか一目瞭然なわけだ。
まあけど、俺が『気配偽装』のスキルを持っているように、多分世の中にはオーラを偽装するスキルもあるかもしれないから、一概にはこれ1つで全て解決とはいかないだろうけどな。
「ん……」
ミスティが聞きたそうにしてるけど、クリスがいるから聞くに聞けないといった様子だった。それはクリス側もなんとなく察して、下がるべきか思案している様子だった。
まあ、クリスをこの場に呼んだのも俺だしな。
「クリスは、俺の能力についてどれくらい察しがついてる?」
クリスは戸惑った様子でエスやミスティを見る。
「ええと、よろしいのですか?」
「構わない」
「では、その……。ショウタ様が『幻想』スキルを持っているであろうことは、わたくし達4人とも予想がついておりますわ。ですが、その系統は……。他の『幻想』スキルとは一線を画す特殊な物だと思っておりますの。いわゆる『イレギュラー』と呼ばれる枠ですわ」
「……ふむ?」
「クリス、兄さんはその区分を知らないんだ。説明してあげて」
「かしこまりましたわ。『幻想』は大まかに分けて3種類のものに分けられておりますの。まずは1つの力を極限まで特化し、オリジナルスキルとも呼ばれる『真なる力』。次に、常軌を逸したスキルや技能が備わった、特殊な武器の『ファンタズマウェポン』。最後に、それらに当てはまらない特異性を持った『イレギュラー』ですわ」
『幻想』の区分か。
確かに、今まで見てきた『幻想』を区分するとしたら一芸に特化した『真なる力』と、ケルベロスやブラマダッタなどのナンバー武器や、グングニルなんかの神造武器を擁する『ファンタズマウェポン』が基本だよな。それに対して『レベルガチャ』は、そのどちらにも含まれていない特異点のようなスキルだし、『イレギュラー』扱いされるのも仕方ないだろう。
それを思えば、サクヤさんの『傾国の美女』は魅了特化であることから『真なる力』とも呼べるし、勝手に生えて来たスキルだから『イレギュラー』寄りでもあるのかな?
「『幻想』持ちの中でも『真なる力』を持つ者の比率は高いですわね。例えば、わたくしやエルキネスを含めた4人の属性使い、あとは有名どころで言えば、例の征服王なども含まれますわね」
「へぇ」
あいつも一芸型なのか。
「ショウタ様はエルキネスの依頼で攻略されたダンジョンで、『ファンタズマウェポン』を入手しましたわ。ですが、それは攻略の過程で手にした、戦う為の手段の一つに過ぎないようですし、根幹を担うスキルは別にあるように思いますの。今日だけでも、ショウタ様の口から何度か、その……」
「ん?」
「ガチャという単語が聞こえてきましたし、恐らくそれがキーワードなのだと思いますが……」
「あれ、俺言ってたっけ?」
「ん。割と言ってた」
「言ってたね」
「無意識だったか……。まあでも、クリスはもうほぼほぼ身内だから、気を許してたのかもな」
嫌な予感はしなかったし。
「光栄ですわ」
「まあでも、全部語るのは他の3人の合否が決定してからだ。出会った順が同じなら、あんまりそこから優劣の差を付けたくはないからな」
「承知しましたわ」
「つーわけで、俺達が何か妙な事を言っても聞き流してくれ」
「はい」
これで良いかな。
あ、でもちょっと気になる事があったな。普通ガチャと聞いたら、そこからもう答えに辿り着きそうなものなのに、クリスはそこに辿り着けていない様な空気を感じるんだよな。
「なあクリス、ちょっと気になってたんだが、ガチャって何かわかるか?」
「……申し訳ありません。よくわかりませんわ」
「……」
うん、この答えに嘘はない。というか、俺としては当たり前の名称ではあったのだが、もしかしてそこまで万国共有の言葉ではないのか……?
「兄さん、僕も馴染みがない訳じゃないからそこまで違和感は無かったんだけど、実はガチャって、日本以外ではそれほど馴染みのある文化じゃないんだ」
「そうなのか?」
「発祥はアメリカとされてるけど、積極的に広めたのは日本だからね。シルヴィも来日直後だと理解できなかったかもしれないくらいだ」
「ん。私やカスミ達と遊ぶ過程で、日本のカルチャーに触れて理解が深まってたから、すんなり受け入れられたんだと思う」
「そうなのか」
ガチャって、割と日本独自の文化というか単語だったんだな。
「とりあえず分かった。クリスも、俺から説明があるまではガチャについて調べなくて良いぞ。時が来たらちゃんと教えてやるから」
「はい。お待ちしてますわ」
そう言ってクリスは後ろを向いて耳を塞いだ。それを見届けた俺は、皆に取得した『覇色の魔眼』についての性能を語るのだった。
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