ガチャ668回目:踊り食い
「ではお先に行って参りますわ」
クリスが真っ先に飛び降り、再び前回と同規模の氷山を創り上げてくれた。俺達は彼女の用意してくれた湾に降り立ち、戦いの準備をする。
「今回は乗り込んでくる敵は最初から俺も戦う。大剣を扱うために、スキルの付け焼き刃だけじゃなく、ちゃんと実戦で戦うことで得られる経験が欲しいからな」
「ん」
「了解」
さーて、何がくるかね。
小さな飛沫を上げながら近付いてきていたモンスターが、湾の中に侵入しそのままの勢いで飛び上がりながら上陸してきた。
『ギチチチ!』
『ガチガチガチ!』
「おおっ!」
その正体は、二足歩行で槍を持ったエビと、両手がハサミではなく剣と盾になったカニだった。
大きさはエビが1メートル50センチほど。カニは縦も横も1メートルほど。レアにしては小さいが、スキル構成的にレアなのは間違いなさそうだな。
それはそれとして――。
「エビとカニだ!」
『プルプル!!』
モンスターとしてのこいつらの遭遇に喜んでいると、イリスも同じように大興奮していた。まあ気持ちはわかる。今まで出てきた水生モンスターは、良くて魚や貝までで、あとはヤドカリやら魚人やらだったもんな。
*****
名前:ウォーリアシュリンプ
レベル:78
腕力:1000
器用:1200
頑丈:1300
俊敏:800
魔力:300
知力:200
運:なし
【Bスキル】剛力Ⅱ、怪力Ⅱ、鉄壁Ⅱ、城壁Ⅱ
【Pスキル】身体強化Lv3、体術Lv3、槍術Lv3、姿勢制御Lv1、水泳Lv2
【PBスキル】破壊の叡智
【Mスキル】水魔法Lv2、魔力回復Lv1
装備:甲殻戦士の槍
ドロップ:ウォーリアシュリンプの肉
魔石:大
*****
*****
名前:ウォーリアクラブ
レベル:78
腕力:1200
器用:800
頑丈:1400
俊敏:800
魔力:300
知力:200
運:なし
【Bスキル】剛力Ⅱ、怪力Ⅱ、鉄壁Ⅱ、城壁Ⅱ
【Pスキル】身体強化Lv3、体術Lv3、剣術Lv3、姿勢制御Lv1、水泳Lv2
【PBスキル】破壊の叡智
【Mスキル】水魔法Lv2、魔力回復Lv1
装備:ウォーリアクラブの甲殻剣、ウォーリアクラブの甲殻盾
ドロップ:ウォーリアクラブの肉、ウォーリアクラブの甲殻
魔石:大
*****
「んじゃ、俺が連中の身体を切り飛ばすから、離れた部位は食ってもいいぞ」
『プル! プルル!』
「ん? あー……。それは危ないかもだから、試すなら数が減ってからな」
『プルーン』
「兄さん、イリスはなんて?」
「踊り食いがしたいんだと」
「ははっ、なるほど」
雑談していると、進軍していた第一陣は全て上陸したようだ。第二陣はまだ到着していないみたいだし、軽く遊ぶとしますかね。
「さあ来い!」
『ギチチチ!』
『ガチガチガチ!』
エビとカニが一斉に襲いかかってくるが、こっちはリーチが2メートルもある『巨神の剣』だ。相手の攻撃が届かない位置から、一方的に攻撃ができる。その上、破壊力もバカみたいに高いおかげで、相手の武装や自前の甲殻なんてまるで存在しないかのように両断することができた。
『斬ッ!』
『プル!』
一歩踏み込んでは横薙ぎに一振りする度に複数のモンスターが両断され、崩れ落ちて煙へと変わりゆく。そんなモンスターの亡骸を、触手を伸ばしたイリスが消える前に貪り喰らう。
『斬ッ!!』
『プルル!』
唯一の懸念点であったドロップについてだが、こちらはイリスが一緒に食べてしまうような事にはならなかった。どうやらドロップは死亡判定が発生した場所に出現するようなのだ。
『斬ッ!!!』
『プルーン!』
そのため、爆速で消化しているイリスの体内に出現してしまうなんて事にはならなかったのが幸いだった。
『プルプル!』
「おらっ!」
『プルプル!』
「もういっちょ!」
『プルプルプル!』
「終わりっ!」
そうして約150体くらいいたレアモンスターの軍勢を次々と斬り捨て、約束通りエビとカニは数体ずつ残してあげた。
『ギチッ……』
『ガチガチ……』
『プルーン!!』
そうして最後に残ったモンスター達は、巨大化したイリスによって丸呑みされ、ゆっくりと味わいながら消化されていったのだった。
「満足したか?」
『プル』
「そりゃよかった」
久しぶりに大量にモンスターを食べた事で、イリスはご満悦といった様子だった。いくらイリスが無限の胃袋を持ち、無限に食べられると言っても、それと食欲はまた別の話だからな。食欲が満たされれば、お腹が満ち足りていなくとも、それ以上食べる気は無くなるのだ。
「まあそれはそれとして、帰ったら彼女達にフルコースを作ってもらおうな」
『プル!!』
さて、それなりの数のレアモンスターを捌いたから、レベルは50から101になったか。だが、一番の成果はなんといってもエビとカニの肉だろう。
なんだかんだで水生かつ食用のモンスターってのは、今までほとんど見たことがなかったからな。俺が知らないだけで、探せばいくらでもいるのかもしれないが、俺の身近では珍しい事に変わりはない。あとは味次第ではあるが、美味しいものであれば今後も量産できる環境が欲しいところだな。
……管理者権限を使って、海底ダンジョンを浮上させらんないかな? 平定し終えたら試してみるか??
「ああ、そうだエス。こいつらって、エス達が掃討した時も出現したのか?」
「もちろんだよ。けど、兄さんと比べれば全然お肉はドロップしなかったけどね」
「まあ、そこはエスだしな」
「ん。私もほとんど落ちなかった」
「まあ、10以下じゃそうなるよな」
ミスティのほっぺをムニムニする。
「エス、こういう食用になりそうな水生型のモンスターってのは、海底ダンジョン以外で見たことあるか?」
「うーん、数は少ないけどいることはいるよ。前回の島亀をもっと小さくしたようなモンスターが出てきたダンジョンとかでは、それなりに見たかな」
「それは、階層が海に沈んでるところなら、可能性はあるって事?」
「そうだね。けどやっぱり、魚がメインだよ。外で海鮮類と称される食品系統は、ほとんど見ないさ」
「なるほどね」
じゃあやっぱり、いつでも気軽にダンジョンに入れるように、環境を整えておきたくなるなぁ。ああでも、誰でも入れるようにする前に、『幻想』武器がドロップしないか隅々まで探索してからにするべきかな? いや、それも聞けば教えてくれるかな? 管理者レベルが7にもなる訳だし……。
ああ、色々とやりたいことが多すぎる。早く次の連中来ないかなー。
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