ガチャ659回目:マジックバッグ
「登録ってことは、何かしなきゃいけないんだろうけど、何をするべきなんだろう?」
「ん。直接ここに入れてみるとか?」
「多分そうだろうな。じゃなきゃ、近くにある『魔法の鞄』を無差別に連結する事になっちゃうし」
俺は早速手持ちにあった俺用の『魔法の鞄』だけでなく、エス用とミスティ用の物も入れると、3つとも『マジックバッグ』から吐き出されるように飛び出してきた。これで登録完了なのかな?
そして何も入っていないはずの『マジックバッグ』に手を突っ込むと、俺にだけ見える形でウィンドウが中空に出現した。選択肢は3つあり、その内の1つが『異次元の腰巾着』であることから、どの鞄を選択するかが選べるような感じだった。
「ふーむ。だけどこれじゃあ分かりにくいな。普通に持ち主の名前の方がありがたいんだが……」
そう言うと、ウィンドウの中の選択肢が点滅し始め、何度か繰り返すとそれぞれの鞄表記が消え空欄になった。
これはつまり、そういうことか?
「……ショウタ」
『異次元の腰巾着』の名前があったところに向けて念じながら呟くと、そこには「ショウタ」の4文字が入った。これなら……!
「エス、ミスティ」
2人のアイテム名をチェックしてから音声入力をしてみると、きちんと以下の表記になってくれた。
連結1:ショウタ
連結2:エス
連結3:ミスティ
……どうやら成功らしい。鞄の名前が全て持ち主の名前へと切り替わった。直感的に、この名称もいつでも切り替えられそうだし、この仕様は普通に便利だな。持ち主だって状況に応じて変わってくるわけだし。
しっかし、随分と融通が利くアイテムだな。『高位伝説』だからか?
「うん?」
「ん。ショウタ、何してるの?」
「2人もここに手を突っ込んでみてくれ。そしたらわかる」
そして2人は俺と一緒に手を差し込み、驚愕していた。
「すごい、これはすごいよ兄さん!」
「ん。『魔法の鞄』は基本的に誰かが確認中は他の人は中にアクセスができない。でもこれなら、不可能を可能にする!」
「おー、ミスティも大興奮だな」
「ん。それだけすごいの。連結した『魔法の鞄』内で、握手もできるかも?」
それはちょっと面白そうだな。
「兄さん、これは本当に革命だよ。もし仮に、別のダンジョンに居ても同時に同じ鞄にアクセスができるのなら、手紙のやり取りで情報交換も可能となる!」
「ああ、たしかにそれができるのか。ダンジョンそのものの難易度によっては、外との通信ができない場所もそれなりにあるしな。帰ったら、カスミ達に渡している分も登録しておかないとな」
「ん。この『マジックバッグ』は絶対死守。他人に存在を知られるだけでも危険。普段は隠しておかないといけない」
ミスティの目が割とマジだな。だが、それも確かにそうだ。
ふーむ。木を隠すなら森の中というし、普段は逆に『異次元の腰巾着』に突っ込んでおくか? いやでも、そんなことしたら無限トンネルが完成するというか、パラドックス的なことは起きたりしないよな……?
いや、それは登録の時でも同じ事か? でもあれは一瞬で弾き飛ばされたからな……。とりあえず入れてみよ。
「……ああ、入らないか。さすがに」
いつもは袋の穴に近付けると、質量を無視して吸い込まれていくんだが、『マジックバッグ』は『異次元の腰巾着』の上に乗るようにして存在していた。
布袋の上に鞄とか、重力の影響を受けていないような、変なオブジェみたいになってしまったな。レア度の問題かな?
念のため、もう1度登録と同じ手順で『マジックバッグ』に入れようとしても入らなかった。なんだ、パラドクス的に駄目だったか。
「ん。それはそれで世界の平和は守られた」
「兄さんも怖いことするね……。まあ、嫌な予感はしなかったんだろうけど」
「悪い予感がしなかったらとりあえず試してなんぼだろ」
「悪い予感がしたら?」
「慎重に試す」
「結局試すんじゃないか……」
「ん。絶対ダメな気配がしたら?」
「流石に試さない」
「ん。だよね」
ミスティは分かってるなー。よしよし。
「んふ」
そうしてイチャイチャしていると、エスが立ち上がり海の方を見た。
「兄さん。ようやく最後の敵が見えて来たよ」
「お、やっとか……んん?」
遠くに見えたのは、島だった。
いやでも、あんなところに島なんて無かったよな? しかもあの島、段々と近付いて来てるし……。
「なにあれ」
「モンスターだよ」
「島が……?」
「はは、流石の兄さんでもあれが島に見えちゃうか。あれは奴の外骨格のようなものさ。それが水面から顔を出して、島のように見えるだけさ」
あれが外骨格……? コケだとかフジツボだとかならまだ分かるんだが、明らかに木が何本も生い茂ってるんだぞ? あれが島じゃなかったらなんだというのだ。
いやでも、あんな露骨に絵本や漫画とかで出てきそうな、ヤシの木が複数本自生しているだけの『THE・南の島』みたいな島は、普通存在しないか。
あれが外骨格ねぇ……?
「ん。珍しくショウタが困り顔。でも私も、アレについて知識はあっても遭遇経験がない。気持ちはわかる」
「僕は色んなダンジョンに潜ってるから、経験はそれなりにあるんだよね。ただ、あそこまでのサイズは初めてだけど」
そうして、湾へと侵入してきた島は、浅瀬に到着するとゆっくりとその顔を出した。
「……カメかよ!?」
『……』
*****
名前:アイルタートル
レベル:300
腕力:4400
器用:3200
頑丈:6800
俊敏:500
魔力:5000
知力:3000
運:なし
【Bスキル】超防壁Ⅴ、剛力Ⅴ、怪力Ⅴ、阿修羅Ⅳ、怪力乱神Ⅲ、鉄壁Ⅴ、城壁Ⅴ、金剛体Ⅳ、難攻不落Ⅲ、金剛鎧Ⅱ、力溜めⅢ
【Pスキル】身体超強化LvMAX、硬化Ⅶ、水耐性LvMAX、物理耐性Ⅴ、魔法耐性Ⅴ、斬撃耐性LvMAX、貫通耐性LvMAX、打撃耐性LvMAX
【PBスキル】破壊の叡智Ⅲ、魔導の叡智Ⅲ、水の聖印Ⅱ
【Aスキル】衝撃Ⅲ、鎧通しⅢ、急所突きⅢ、ウェポンブレイクⅡ、アーマーブレイクⅡ、チャージアタックⅤ
【Mスキル】水魔法LvMAX、泡魔法LvMAX、濁流操作LvMAX、氷結魔法Lv2、海魔法Lv5、混沌魔法Lv2、水の鎧Ⅳ、魔力超回復LvMAX
【Sスキル】威圧、強圧、王の威圧Ⅳ
★【Eスキル】超硬質ボディ、殻に籠る、大回転
装備:なし
ドロップ:島亀の卵、ランダムボックス
魔煌石:大
*****
『アイルタートル』……文字通り島亀かよ。
こいつの頭から尻尾までの長さは目算15メートル。体高は20メートルほどだろうか。体高に関しては甲羅に生えている木を含めればもっと行くだろうが、流石にそれを含めるのは違うよな?
そうして奴の顔の大きさは、俺達3人を合わせても、向こうの方がデカイくらいだった。こんな馬鹿でかい存在だと、戦闘モードのエンキですら小さく見えてしまうな。
『……』
島亀は俺達を敵だと理解しているようで、ただ静かにじっとこちらを見つめている。その目には、明らかな敵意と殺意の色が滲み出ていた。
「……中々に強いしデカいが、これで『ダンジョンボス』じゃないのか」
「中ボスに『クラーケン』が出てきた事から予想はしていたけど、どうやら『1097ダンジョン』は、中位から上位のダンジョンなのは間違いなさそうだね」
奴の『Eスキル』もだいぶヤバイが、それより気になるのは『Bスキル』にある『金剛鎧Ⅱ』だ。あれはもしかして、似た名前を持つ『金剛壁』とは違い、完全に純粋なブースト系の5段階目だろうか?
とすると『頑丈』の高さや、物理に対するカット効果も重複して、とんでもない防御力を持っていそうだな。
「ん。さすがにちょっと苦戦しそう。ショウタ、クリス呼ぶ?」
「あー……。まだ良いだろ、レベルは上がるかもしれないが、コレであげるよりもっと先ので上がってもらおう」
「ん、わかった。ショウタ、指示して」
「エス、とりあえず後続はもういないんだな?」
「ああ。コイツで最後だよ」
「なら、東からの連中までは時間があるし、ちょっと遊ぼうか!」
「ん!」
「了解!」
さあ、カメ狩りといきますかね!
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