ガチャ496回目:元の持ち主へ
アイラの励ましとも揶揄いとも取れる発言に影響されてか、彼女達も前のめりに距離を詰めてきた。
「ん。ショウタ、私の胸も揉む? アイラみたいに大きくはないけど」
「ショウタさんが安心できるなら、私はここでも……」
「わたくしは揉むほどありませんわ……」
「んふ。ねえ、ショウタ君。なんなら、飲む?」
「だからしないってば。ここ、ホテルと言っても協会の一部だし、これから支部長来るんでしょ? それに、まだ出ないじゃん」
「にしし。冗談よ、冗談。でも、高レベルになると適応能力もぐんと伸びるから、出るようになるタイミングも早いって話だよ。だから、近い内出てくると思うよー?」
「そ、そうなのか……」
となると、4人ともその内……。
ふむ……。
「やはりご主人様、おぎゃ――」
「おぎゃらんからな!」
そんな風に彼女達とイチャついていると、ギャングっぽい風貌の男が部屋に入ってきた。その後ろにはエスとシルヴィもいる。男は部屋に入るなり俺に頭を下げて来た。
「アマチ君、この度は本当にありがとう。たった1日で第一層を楽園へと引き戻し、更には厄介な2人も無力化してくれた。696協会支部と街を代表し、礼を言わせてくれ」
「いえ、俺はやれる事をやったまでですよ。それに第一層は、永遠にあのままとは思えないですし、多分一時的な物ですよ」
「それでもだ。赤から緑に変えるだけでもかなりの戦力を投入しなければならないことを君は一人でやってのけた。これは讃えられるべき偉業なのだ!」
「まあそういうことなら……」
彼こそがこの696ダンジョン協会所属の支部長であり、シルヴィの叔父にあたる人物だ。昨日ホテルに泊まる直前に挨拶されたときは、まさかこの見た目で支部長だとは思いもよらなかったが……。まるで一昔前の、ハードボイルドなギャングだもんなぁ。
でも、その物腰は柔らかくて、シルヴィに向ける視線は優しい人だった。まあ、エスには色々と含みのありそうな目を向けてたが。……エスが『風』を入手した経緯、この人も関わってんじゃないだろうな?
まあ、あとはレッドカラーなんかの犯罪者相手には容赦がなさそうではあるな。
それにしても、そんな支部長からして厄介と言わせるって事は、トップにいるそいつの問題で迂闊に手が出せなかったとかかな? あいつら、計画性無いように見えて、しっかり証拠は残さないよう動いてたみたいだし。
「……連中はやっぱりまだ放心したままでしたか?」
「ああ、こちらの問いかけにもまるで反応が返ってこない。あれではまるで、奴らにしてやられた被害者達の初期状態と同じだ」
「初期状態ということは……。奴らにやられた被害者のことは把握しているんですよね? 彼らはその後どうなったんです。回復はしたんでしょうか?」
「人によっては早くて3日、遅くても2週間ほどで意識を取り戻している。その後も後遺症はあれど、日常生活を送る事はできている。だが、目覚めた彼らは皆スキルをすべて失っていて、チームメンバーも忽然と姿を消してしまうんだ。そんな状態では、二度と冒険者には戻ることはできなかったんだ。あの兄弟との間に起きたトラブルについても何も語らないため、今までは謎に包まれていたが……」
「とりあえず、目を覚まさなかった人はいなかったんですね」
「ああ、それは間違いない」
俺はほっと息をついた。
あんなゴミクズでも、俺の行動で永久廃人は寝覚めが悪いからな。
「それでだ。可能であれば、奴らはなぜああなったのか教えて欲しい。恐らく、奴らが仕掛けて来たのを返り討ちにしたんだろうが、その方法が知りたい」
「いいですよ。ただ、このスキルは存在自体がヤバイ代物なので、対処法がはっきりするまでは公表は控えて欲しいですね。他の支部長にも、なるべくは……」
「それほどまでに危険なものなのか」
支部長はひとしきり悩んだ後、判断を下した。
「わかった、教えてくれ。知っていないと奴らがどんな罪を犯したのか判決を下せんからな」
そういえば、罪を立証するにも能力の詳細が分からないと裁く事も難しいか。まあでも、本当にやばい能力だからなぁ。日本だと間違いなく第一級の禁制スキルになるだろうし。
そうして俺は、改めて事のあらましを説明した。兄弟がダンジョン内の入口と出口でそれぞれ待ち構えていた事。スウェンがスキルで俺のスキルの秘密を暴こうとしたこと。そしてラシャードが『技能の天秤』を使って、俺がどんなレアリティのスキルを持っているか調べようとしたこと。最後に、ラシャードが隠し持っていたスキル『裏決闘』によって強制されたとんでもルールと、敗者の結末を。
あとは証拠として、アイラが当然のように録画していた映像データから、その時の一部始終が再生された。アイラが流石すぎる。
「奴らめ、日本からの大事な使者を手荒に扱った挙句、とんでもないことをしてくれたものだ……! その上、このようなスキルがこの世にあったとは……!」
「……なるほどね。奴らが相手した冒険者達は、いずれもレアなスキルを持つとされていた冒険者だったと聞いている。だけどその大半がまだ低ランクで、戦闘経験の少ない者達も多かったはず。そんな彼らをリンチにした上、スキルを奪ったのか」
「こんなの……あんまりじゃない! 極刑よ極刑!」
「連中が連れていた女性達は、全員が連中によって関係性を奪われた人達だと思う。犯罪の片棒を担がせられていたとしても、被害者なのは間違いないと思うから、できるなら処罰はしないであげてほしい」
「当たり前よ。彼女達はうちで保護するわ。良いですよね、ボス」
「ああ、勿論だとも。だが、奴らが目覚めれば同じ事の繰り返しだ。どうしたものか……」
おっと、そういえばうちの彼女達にもだけど、俺がどういうやり方で相手を陥れて勝利したのか伝えて無かったな。まあ彼女達は、俺のステータスの高さを知ってるから、例え俺のスキルが全封じされても、俺が勝てるものだと思ってくれてたみたいだけど。
「いえ、それなら手元にありますよ。俺は奴らにスキルを封じられた際に、逆にスキル封じをお返ししてやったんです」
俺は連中が持つスキルの全てを、賭けの対象に指定し返した事を告げた。
「おお……! 咄嗟にそのような反撃を実行するとは。流石はアマチ君。噂に違わぬ切れ者だね」
「じゃあ、彼女達が解放されたのは、連中の魂が離れたからでも、一度死んだからでもなく……」
「ああ。俺が奴らのスキルを賭けの対象にしたからだな。それに、もしも毎回『裏決闘』を使うたび彼女達の支配が解放されていたりしたら、彼女達の精神がぶっ壊れてるだろ」
「……それもそうだね」
「なのでここに、奴らが落とした全てのスキルがあります」
連中から奪った『魔法の鞄』からスキルをじゃらじゃらと取り出し、机に転がしていく。その数、優に100を超えていた。
正直、この中には俺の持っていないスキルがいくつもあるようだが……。流石に、これの所有権を主張する気にはなれないので、極力興味を持たないよう視界に入れない努力をした。
というか、一度見てしまえば『レベルガチャ』から出てくれる可能性もあるだろうけど、奴らはこの国で荒稼ぎしていたんだろ? なら、この国のダンジョンに潜っていれば、いずれ獲得するチャンスも来るはずだ。
だから、最初からこれらのスキルは手放すつもりでいた。一部を除いて。
「これらのスキルは全て、元の所有者に送り返してくれますか。立ち直った人達にはこれを使って再び冒険者業に戻って貰っても良いですし、立ち直れない人にはこれを売って生活の足しにしてほしいです」
「兄さん……」
「お兄さん、カッコよすぎ……!」
「ああ、アマチ君。本当にありがとう。君こそ、Sランクに相応しい冒険者だよ。これは責任を持って私が元の冒険者達に渡すと約束するよ」
俺の言葉に、彼らは頭を下げてお礼を言ってきた。
単に俺としては、あんな汚い手段で得たスキルに手を出したくなかっただけなんだけどな。それに、連中の使ってきた切り札スキルの2つは、世に出したくないからこの場には出さなかったし。
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