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ガチャ466回目:意思表示

「ミスティ、お待たせ」


 自室に入ると、ミスティが携帯片手にベッドでゴロゴロしていた。

 ……うん、ちゃんと寝間着は着てくれてるみたいだな。


「ショウタ、遅い」

「ごめんごめん! ちょっとミスティとのデートの内容で色々報告しないといけないことがあってさ……。ん? もしかして電話してた?」

「ん。エスと」


 ミスティがスピーカーをオンにする。


『やあ兄さん。駄目だよ、ミスティをほったらかしにしちゃ』

「反省して」

「悪い」


 『レベルガチャ』がバージョンアップすると、どうしても色んな発見があって、それが面白くて長話しちゃうんだよな。今回に至っては新スキルや新アイテムが出て来たし。タイミングが良くなかった。

 だからといってミスティのお泊り会が終わるまで、このイベントを放置できるほど俺は我慢強くはないんだが。


『さて、これからの時間、僕は邪魔だろうし、電話を切るよ。二人とも、ごゆっく――』

「あ、待ってくれエス。お前にも用事があったんだ」

『それ、今聞くほどの事かい?』

「ああ。それくらい大事な話だ」

『……わかった、聞くよ。なんだい?』


 電話越しにだが、エスの呆れた空気を感じる。まあ、今日はミスティの大事な日でもあるから、優先しようとしてくれてる気持ちは痛いほど分かる。けど、こっちも外せない用事だ。


「エス、ミスティに聞いたんだが、そろそろ一時的に国に戻るんだよな?」

『ああ、ついに聞いたんだね。そうだよ、僕が見つけた階層は未だに僕と、一部の冒険者でないと辿り着けない領域にあるんだ。だから、掃除はこまめにしないといけないんだよ。報告では、任せて来たAランクの冒険者チームが頑張ってくれてるみたいだけど、進捗があまりよくないらしいんだ』

「大変そうだな」

『まったくだよ。階層スタンピードも、第一層では三日、第五層では推定1ヵ月狩りをしなければ溢れ出すという話だが、あれも1度狩りをすればリセットされるという都合のいい話じゃないからね。倒された分だけ、平和な時間が延びるだけなんだ。広範囲に高威力の技をばら撒いて、とにかく数を稼がないといけない』


 俺とエスが出会ってから、かれこれ25日ほど経過している。

 日本に来るまでにエスが全力で殲滅をして丸々1ヵ月まで伸ばしたとして、アメリカのAランクチームが頑張っているらしいが進捗は良くないという。つまり、殲滅速度よりも湧く速度の方が速いという事だ。多少延長できているとはいえ、エスが帰還する猶予としては……。


「あと4、5日くらいで帰る感じか?」

『そのつもりだよ。お別れと言ってもまた1、2週間で戻るつもりだから、重く受け止めなくて大丈夫だよ』

「その帰省、俺達もついて行って良いか?」

『……!!』


 エスが息を呑むのを感じる。

 黙って聞いていたミスティも驚いてる感じだった。


「あれ、なんで驚いてるのミスティ。さっき言ったじゃん。攻略するって」

「ん。でもあれは、もっと先の事かと……」

「俺が『幻想(ファンタズマ)』スキルを2つも排出したダンジョンを放っておいて、他を攻略する訳ないでしょ」

「ショウタ……! ありがとう!!」


 いや、ちょっと浮気しそうにはなったけどな。『機械ダンジョン』とか『中級ダンジョン』とか。あとは京都にある『妖怪ダンジョン』とか、カスミ達の通う『大阪城前ダンジョン』とか。


『兄さん……。こんなに早く攻略を決めてくれるなんて、なんてお礼を言って良いか』

「おいおい、まだ攻略してないぞ? そういうのは全部終わってからにしろ」

『ああ、そうだね。これが話したかった事かい?』

「いや、それはついでだ。本命は明日うちに来てほしいって話」

『僕としては今のが本命であってほしいところだけど……。わかった、行くよ。朝食後で良いかな』

「ああ。義母さん2人も来るから、よろしくー」

『『極東の魔女』も来るのかい? 緊張するなぁ……。それじゃ、名残惜しいけどそろそろ切るね。兄さん、ミスティをよろしく』

「おう、任せろ」


 電話が切れると同時、ミスティが胸にダイブしてくる。


「ショウタ、ありがとう……! でも、無理しなくて良いからね? 攻略できなくて躓いても、一度撤退したって良いんだからね?」

「俺が撤退とか。……いや、過去に1度だけあるな。まあでも、あの時みたいな油断はしないし、準備もちゃんとしてる。だからなんとかなるさ。なんたって俺には、頼れる仲間がいるからな」

「ん」


 さて、適当に確認したが、まさか本当に出発が3、4日後とはな。

 なるはやで準備しないと。……といっても、パスポート周りも食べ物も道具も、周りが全部用意してくれそうなんだよな。となると、あとやる事はさっき彼女達にも伝えた通り、部屋でアクセサリーを作成しつつ、手すきの時間に日常会話の英語を覚えるくらいか。

 英語なんて学校で習ったくらいだが、あの時は物覚え悪かったよなぁ。それも『知力』の影響だって言うのなら、今の俺はどれくらい物覚えが良いんだろうか? 割と楽しみではあるが……。

 とりあえず今は、嬉しくて仕方がない様子のミスティの事だけを考えるとするかな。

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― 新着の感想 ―
知力が上がっても興味ないことは頭に入らない・・・
[気になる点] サクヤさんの異名は『極東の魔女』なのか『東方の魔女』なのか分からなくなりました。 初表記では前者でその後は後者で、たまに『東洋の魔女』のときもあって混乱します。 これは『極東』ではない…
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