ガチャ455回目:デートウィーク⑦
【休暇十五日目】
「お兄様、お待たせ。待った?☆」
「今来たところだよ」
「にひ。あたし、こういうの憧れてたんだ☆」
最後のデートはイズミ。
今回は彼女たっての希望で、街中のカップル専用の行事を回って見て行くというものだった。
「ほんとは、お兄様と公園の池や湖なんかでボートに乗ってみたかったんですけどね。ちょっと遠出しないといけなかったので、諦めました☆」
「そうなのか? それなら今からでも移動するか?」
「いえ、良いんです。今日はこの近隣で済ませちゃいましょう。このイベントは、もーっと仲良くなってからで十分ですから☆」
「イズミがそれでいいなら……」
そうして彼女と一緒に街をぶらつく。一緒に映画を観たり、お洒落なカフェで食事を摂ったり、カップル用のストローでジュースを飲む様子をSNSにアップしたり、彼女が望むままにあちこちを移動して回った。
イズミは心底楽しそうにしていたが、常に何かを気にしている様子だったので、思い切って聞いてみる事にした。
「イズミ、気になる事があるなら言ってくれ。俺も気を付けるからさ」
「あ……。あはは、やっぱりお兄様にはバレちゃいますか」
公園の、見晴らしの良いベンチに誘われて腰を下ろすと、イズミがもたれかかってくる。
「んで、何が気になってるんだ?」
「強いて言うなら、周りの目ですね☆」
「周りの?」
「ほら、あたし達って皆可愛いじゃないですかー」
「まあ、そうだな」
自分から言うところがイズミらしい。
今の彼女達はレベルが350前後となり、圧倒的なまでの力を手にし、それに付随して魅力のオーラが爆発的に増加したが、それも元々あったものが増幅されたに過ぎない。
「お兄様に出会う前のあたし達には、皆固定のファンが居たんです。非公式ですが、『疾風迅雷』はアイドルユニットみたいな扱いもされてたんですよー。それが、第一エリアに向かって一月もしない内に、男ができて帰ってきた訳です。暴動、とまではいきませんでしたが、掲示板は大荒れでした」
「ああ……。それはわかる気がする」
アキやマキの時も凄かったみたいだからな。
「言うなれば、信じて送り出したアイドルが男にドハマリして手籠めにされて帰ってくるなんて! って感じですね☆」
「……。それで、今回のデートとどんな関係があるんだ?」
「それは単純に、付き合っている男性がお兄様であることを周知させる為ですね。『疾風迅雷』がお兄様のチームに紐づけられたことは周知の事実であったとしても、誰と付き合ってるかまでは実際に目撃しないと納得できないじゃないですか」
「まあ……そうかもな」
「それに、お兄様の昔のステータスとか、ある程度は先輩達やカスミちゃんからも聞いてるんです。なら余計に、昔のお兄さんを知ってる人は、あたし達との関係を絶対に認めないと思ったんです」
「……かもな」
あんな連中に認めて貰おうとは思わないが、今後の関係に口出しして来たり邪魔立てされたら厄介だもんな。俺は一応曲がりなりにもSランクだから直接的な行動には出られなくても、カスミ達は現状Bだ。迷惑な連中ってのは、周りの迷惑を顧みない連中だ。カスミ達が弱みを握られて手籠めにされてると勘違いされたら、どんな行動に出るか分からない。
「だから、カスミちゃん達にもお願いしたんです。『なるべく人目に触れる形でデートして欲しい』と。ハルちゃんだけはちょっと貸し切りって形になりましたけど、あの子はデート内容が内容だけに人目に触れさせる方が危険なので、代案で解決しました☆」
「……そういえば、スパで遊んでる最中、スタッフからサービスで写真撮影を受けたな。あれも?」
「はい。写真ならオーラによる影響はほとんどないですから。仲睦まじい様子の写真を、彼女のブログに載せさせました☆」
なるほどな。
カスミとはデート中、常に腕を組んで街中を散策。
ハルとはデート風景を写真に収めブログにアップ。
レンカとイリーナは百合カップルとして有名な中、一緒に食べ歩きする光景を大勢に見せる。
ハヅキは大量の門下生が見守る中で、親公認かつ仲の良さをアピール。
最後にイズミは、カップルであることを見せびらかすように映画館やカップルジュース、人目を集めやすいカフェテラスや公園のベンチなどを回っていた訳だ。
俺は単純に楽しめたし、彼女達も素直に楽しんではいたが……。俺達の仲の良さをアピールしつつ、ついでに周囲の人間には俺の強さをオーラとして肌で感じてもらうために、計画を立てたのか。
そこまで考えた上でのデートだったとは、恐れ入ったな。
「アイドルの相手は半端な人じゃいけません。嫉妬に駆られたファンが何するか分かりませんからね。その点、お兄様は安心です。この国で一番有名な人で、かつ一番強いんですから☆」
「参ったな……。これ、イズミが一人で考えたの?」
「そうですね。アイラ先輩にも相談はしましたが、原案はあたしです☆」
周囲の気配を探ってみれば、こちらの様子を伺う視線が四方八方から送られてきている。これは誰とのデートだろうとほぼほぼ感じていたものだが、この視線のうち何割かは本当にただの観客だろうけど、彼女達のファンも混ざっているんだろうな。
このあと予定としてはホテルに行くんだろうけど、俺も今回の当事者だ。デートの締めくくりとして、一撃くらい入れさせて貰おうか。
「イズミ」
「はい。……んぅ!?」
唐突に唇を奪うと、イズミは目を白黒させた。
「不意打ちは効いたかな」
「……こういう無理やりなのも、ちょっと憧れてました☆」
「見せつけ方としては?」
「100点満点です☆」
イズミは満足げに微笑んだ。可愛い反応するなぁ、もう。
あ、そうだ。イズミにも聞いておかないとな。
「イズミ。今のお前になら、俺の秘密の件を伝えても良いと思ってる。聞きたいか? それとも聞きたくないか?」
「聞きたいです」
「……即答か」
「ちなみにこれ、皆にも聞いてるんですよね? あの子達の反応はどうでしたか?」
「全員即答だったよ。ありがたいことにね」
「あは、良かったー☆」
「カスミからの発案で、全員同時に伝える事にしてる。だから、明日皆で集まった時に紹介するよ」
「おおー、楽しみですね☆」
俺のレベル400オーラとはこれでおさらばだな。
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