ガチャ435回目:無反応
『ブクブクブクブク……!』
「お?」
俺を一瞥した『ブラックウパルパ』は、突如として全身から泡を放出させた。恐らく『泡魔法』の何かだろうけど、普段使いしてない俺にはどういう効果の魔法か、いまいちピンと来なかった。
だが、うちの魔法担当はしっかり把握していたらしい。
「旦那様、それに触れると爆発しますわ!」
「OK、なら私が排除する」
ミスティがガンマン顔負けのクイックショットで接近してきた泡を全て撃ち抜いた。すると泡は爆発し、その効果は連鎖的に広がって行く。
『!?』
そして間抜けなことに、『ブラックウパルパ』はまだ泡を出し続けていたためか、見事に爆発に巻き込まれてしまった。警戒して泡が広がるのを待っていたら危険な状態になっていたかもしれないが、ミスティの判断に助けられたな。
「サンキュー、ミスティ」
「ん。任せて」
そうして、色々と弱体化はしたものの広範囲魔法が解禁された『ブラックウパルパ』はそれなりに強敵だった。今まで使ってこなかった『Eスキル』の後半にあるスキル『爆炎陣』『風爆殺』『水圧縮』『砂縛陣』『極光』『宵闇』も使ってくるようになっていた。
効果はかなり強力で、奴が睨みつけた場所にエネルギーが収束し、その属性に応じた爆発を引き起こすというものだった。その上厄介なことに、技の発動には予兆らしきものが睨む以外になく、発生場所からとてつもなく嫌な予感がするだけなのだ。
まあ、発動には奴が凝視してから数秒ほどのタイムラグがあるから、奴が数秒同じ場所に目を向けていたら注意するといった戦法を取ることで、誰も怪我を負うことはなかったのは幸いだったが。
「お兄ちゃん、私たちはどうすれば良い?」
「ああ。レベルは半端だし、手は出さなくて良いぞ」
「はーい」
それなりに厄介だし手強い相手ではあれど、レベル的にはそこまで美味しい敵じゃない。カスミ達のレベルアップには向かないから、撮影で十分な絵が撮れたら倒してしまおう。
「……よし。今ので6属性の範囲技、全部カメラに収めれたね。『極光魔法』と『宵闇魔法』の極太レーザーなんかも見れたし、もう良いと思うよ」
「ショウタさん、やっちゃって下さい!」
「ああ! フルブースト! 『双連・無刃剣Ⅱ』!!」
『斬ッ!』
【管理者の鍵810(5)を獲得しました】
【レベルアップ】
【レベルが80から212に上昇しました】
よし、これでこのダンジョンの鍵は制覇したな。
例の通知が来る前に、さっさと『充電』を済ませておくか。
*****
名前:天地 翔太
年齢:21
レベル:12
腕力:32874(+16422)(+16437)
器用:32882(+16426)(+16441)
頑丈:32670(+16320)(+16335)
俊敏:31970(+15970)(+15985)
魔力:33318(+16646)(+16659)
知力:33660(+16817)(+16830)
運:20890
*****
『35/50』
よし、これで準備は万全だ。いつでも来い!
◇◇◇◇◇◇◇◇
しかし、どれだけ待てど暮らせど、通知は来なかった。
「……??」
来ると思っていたうちの彼女達も、動きが無い事に違和感を持ち始め、そわそわしている。逆にソレを知らない双子は不思議そうにしていた。
「ショウタ、どうしたの?」
「兄さん、何か問題があったのかい?」
「ああ。『ダンジョンボス』に挑むための挑戦権を入手したんだが……」
「そうなのかい? 凄いじゃないか兄さん!」
「けど、いつもならあるはずのダンジョン側からの通知がなくてな」
「やっぱりそうなのね。ってことは、何か見落としがあるのかもしれないわね」
「かもしれない」
アキの言うように、全ての鍵が揃っても反応がない以上、何かを見落としている可能性が高いのは確かだ。だが、見落とすとして、なにがある? 例えば、見つかってないだけで本当はこのダンジョンに第六層以降がある……とか?
しかし、この広場は完全に行き止まりとなっているし、怪しい雰囲気のある場所は調べ尽くした。見落としがあったとしても、宝箱が隠されている滝の入り口くらいのはず。
……滝?
「いや、まさかな」
「ショウタさん、何か気付かれたんですか?」
「流石旦那様ですわっ!」
「いやいや、これは流石に突拍子もないものだし、流石に違うと思う」
「ご主人様、違うかどうかは試してみてから確認すればよいのです。ご主人様が試行錯誤し、私達はそれをサポートする。今までもこれからもそれは変わりませんし、もしその行動に結果が伴わなかったとしても、それを咎めたり笑ったりなどしません」
「そういってくれるのはありがたいけど……」
完全に俺の思い付きなんだよなぁ。
しかも、今までにない発想だし。
「ショウタ君、諦めなさい。あたし達はあなたの冒険になら、どこまでもついていく覚悟があるんだから」
「アキ……。わかったよ、そこまで言うならやってみようか」
このダンジョンで探索していないところは、実はまだあるんだよな。
それは、第三層の大瀑布。その上部分だ。景色としては大瀑布の上も観光地の山頂からちょっと見えていたけど、実際には足を踏み込んでいないし、そこに何かが隠されていてもおかしくはなかった。なんせ、位置的には湖底で眠っている『レイクサーペント』よりも奥という位置づけだしな。
更には、『アトラスの縮図』だ。ネタバレが嫌だったのもあって、第一層と第二層の2つは使用したけど、第三層から第五層までは結局一度たりとも使っていない。だから、この3層の内のどこかに秘密が残っている訳で、現状考えられるのは大瀑布だけだ。
もしも何もなかったら、その時は諦めて答え合わせをしようと思う。
正直言って、あまり使いたくはないが、彼女達もこの後のデートを楽しみにしているようだしな。俺のワガママはほどほどにしておこうと思ってる。
「とりあえず、一旦帰還しよう。ただ、ここから第五層の入口までかなりの距離があるし、お腹も空いて来た」
「そういえば、もう13時ね。『ダンジョンボス』のエリアに移動させられたら食事にしようかと思ってたのよ」
「ではご主人様、ここで昼食を摂りますか?」
「それもいいけど、マップで見ればほら、今第五層のキャンプ地には誰もいないでしょ? ここまで一気に飛んで、食事はそこで摂ろう」
『アトラスの縮図』になってからまだ2回目となる、ワープ移動だ。
カスミ達は以前『初心者ダンジョン』から帰還する際に経験してもらったけど、エスとミスティにはこの機能は説明していなかったな。けど、こういうのは実際に見て体験してもらえれば問題ないだろう。
「エンキ達、おいで」
『ゴ!』
『ポポ!』
『~~♪』
『プルルン』
小人形態になったエンキを抱え、他の子達は各々好きなポジションに移動する。エンリルは肩、セレンは背中。イリスは頭だ。
「という訳で全員集合ー!」
『はーい!』
勝手知ったるアキ達が真っ先に俺に飛びつき、カスミ達も良い感じに俺の傍というポジションを確保。エスとミスティは出遅れたためその外側になるのだった。そして俺は『アトラスの縮図』を起動し、ワープ機能を実行。
【移動したいポイントを選択してください】
第五層入口に設置した拠点の裏側をタッチし、そこへと移動を開始した。
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