ガチャ015回目:新たなレアモンスター
ローファンタジー日間ランキング1位をキープしているので、今日も3話投稿です。(3本目)
「これで、100匹!」
100匹目のキラーラビットが煙になって消える。
たった10匹狩っただけでレベルが上がり、現在のレベルは4。『SP』は新たに6貰ったが、一応念のため使わずに確保してある。今までほとんどを『運』に捧げてきた大事なポイントだが、もし戦いの中で使わなければ死んでしまうような危険性が孕むときは、遠慮なく使っていきたい。
「……」
使って……。くっ。
土壇場でも躊躇しそうだけど。
なんか、勿体なくて……。
そう考えていると、あの時と同じように煙が意志を持ったかのように浮かび上がり、移動を始めた。
「は、速っ!」
ここは第一層とは違って曲がり角なんてものはない。減速の必要性が無いからか、煙の動きは最初からトップスピードだった。けど、俺だってこれまで成長して来たんだ。『俊敏』ステータスは66。全力で走れば、追いつけない速度じゃないな!
煙は川を越え、平原を突き進んでいくが、止まる気配はない。
道中ゴブリンが何匹もいたが、不思議と奴らは煙を恐れるように逃げて行った。
「あんな怯えようは見たことが無いな。それに、ここには行き止まりなんてないはず。一体どこに向かって……。ちっ、次は林か!」
煙は無節操に生えてる若木や雑草を無視して、スルスルと奥へとすり抜けていく。けど俺はここに来てまだ林の中には突入したことが無かった。その為、慣れない下草や木々に足を取られ、煙を見失ってしまう。
「くそ、でもあいつは真っ直ぐどこかを目指していた。直線状に追いかけていれば、きっと辿り着くはずだ!」
不思議と、モンスターが現れない林の中を駆け抜けた俺は、突然開けた広場に出た。花も草木も生えていない、何もない空間に奴はいた。
到着するまでの間に、煙は全て消え去ったのだろう。
ずんぐりむっくりとした、巨大猪と言わんばかりに大きな体躯を持った兎がこちらを睨んでいた。その頭部にはキラーラビットよりも鋭利な捻じれた角が2本もあり、血の様に真っ赤な目には純粋な殺意が刻まれていた。まるで、これまで倒してきたキラーラビットを倒した恨みが、積み重なっているかのように。
「鑑定」
*****
名前:マーダーラビット
レベル:20
装備:なし
スキル:迅速
*****
『ギゥゥ……!』
「『迅速』? 知らないスキルだけど、名前からして……消えた!?」
一体どこに。いや。
「そこか!」
『ギッ!』
ガンッ!
横に剣を向けると、もう目の前にまで『マーダーラビット』の角が来ていた。とっさに剣でガードしたが、不意打ちの突進によりこっちの体勢は最悪。かろうじて受け止めた角は『鉄の剣』の刀身へと思いっきりぶつかっていた。
強烈な勢いに腕は痺れ、剣からは死を告げる嫌な金属音が鳴り響く。
これはマズイ!
「くっ……おりゃ!」
『ギッ!?』
腕力に物を言わせて剣を振り上げ、『マーダーラビット』の頭が逸れた瞬間蹴りをお見舞いして距離を稼いだ。
ミシミシ、バキン!!
なんとか奴の懐から逃げ出す事は出来たが、その瞬間、剣が根元から砕け散った。
どうやら、奴の頭突きは鉄すら粉々にするらしい。それにしても、なんとなく横に来ている事を感じて剣を出したが、これも『予知』スキルのお陰か? 正直、あれが無ければ死んでいただろう。
「剣が一発でダメになったとなると、鎧がある場所で受けたとしても、致命傷だな。武器もなくしたし、防具も役に立たない。……逃げるか?」
幸い、周りは林だ。あの図体じゃ通り抜けることは出来ないだろう。
俺は今無性に、あのストーカー連中や『ホブゴブリン』が持っていた鋼鉄装備が欲しくなった。ステータスも上がった事だし、装備しても問題は無いだろう。そしてあれがあれば、コイツともまともに戦えるような気がする。
「準備不足だな」
正直言って、レアモンスターを舐めてた。1層で勝てたなら、2層も同じように勝てるだろうって。それは、自惚れた思い過ごしだったようだ。
反省は済んだ。なら、今はやるべきことをやろう。
「逃げるが勝ち!!」
『ギギッ!?』
『マーダーラビット』に背を向け、全力で林の中へと飛び込んだ。
『ギイィ! ギイィィ!!』
後ろで何か叫んでいるが、恨んでる奴が逃げ出したらそりゃ怒るか。
「悪いな。装備を整えたらまた挑戦しに……」
ドンッ! バキバキバキ!
「は?」
ドンッ! バキバキバキバキ!
ドンッ!! バキバキバキバキバキ!!
「嘘だろおい……。アイツ、突っ込んで来やがった!」
しかもスキルで一気に加速して木をなぎ倒し、勢いが弱まったら離れてから助走して激突。それを繰り返して距離を詰めていやがる!
「くっ」
『ギギイー!!』
ドカンッ!! バキバキバキバキバキ!!!
とっさに俺は横に避けると、奴は何本かの木々を吹っ飛ばしながら通り抜けていった。どうやら一度走り出したら止まれないらしい。本当に猪みたいなやつだな。
そして安堵する間もなく、また向こうの方から木々が倒れる音が聞こえてくる。
「くそ、これじゃ逃げられない。それにもし外に出られたとしても、今のアイツは木々が邪魔で本気で走れていないだけだ。何の邪魔もない平原なら、確実に追いつかれる!」
なら、覚悟を決めるしかないよな……!
「剣がダメになった今、俺が今使える武器は魔法と……」
逃げながらもリュックを開くと、ソレが勢いよく飛び出してきた。
「……使えるか? いや、やり方によっては……」
俺は引き続き逃げ回りながらも作戦を考案し、実行するに相応しい場所を目指した。
◇◇◇◇◇◇◇◇
俺は今、最初の広場へと戻ってきていた。ひたすらに続く追いかけっこの末、奴は俺を見失ったらしい。
マップを見る限り、奴は林の中をいまだにウロチョロとしている。アイツは林から出られないのか、それとも俺に対する尋常じゃない恨みから、林の中にいる事を探知しているのか……。
まあそれはさておき、俺はこの場で奴を倒すための準備を整えておいた。用意はOK、心の準備も出来た。あとは迎え撃ってぶっぱなすだけだ!
「俺はここだ、デカ兎! 相手になってやる!!」
大声で叫び、奴を呼ぶ。アイツの恨みを利用した作戦だが、まずは向かってきてくれなきゃな!
『ギギ!? ギギイ!!』
奴の叫びと共に。木々の悲鳴が聞こえてくる。やはり釣られてくれたか。マップを見れば、奴は前方から一直線にこちらへと向かってくれていた。作戦の第一段階は成功だ。
今回戦う為の武器は両手に持ち、予備を足元へ。リュックは行動の阻害になる為、端へと避けてある。いつでも来やがれ。
『ギギイイ!!』
ドンッ! バキバキバキ!
「そろそろか」
すぐ近く、視界にあった木々のいくつかがなぎ倒された。奴はもうすぐそこだ。
あいつのせいでここの木々は悲惨な事になってるんだろうな。そんな事を考えつつ、俺は現れるであろう場所を予測……いや、確信し、そちらへと腕を伸ばす。
「『ファイアーボール』」
俺の目の前に『ファイアーボール』を発生させる。すると、狙い通り奴は真正面から現れた。
ドンッ! バキバキバキ!
「発射!」
ボカンッ!
『ギギッ!?』
奴がいくら素早くても、直線状に走るしかないこの状況であれば絶対に当てられる。そして奴は、途中で止まることは出来ない。今までの行動を見極め、この作戦を立てた。
林の中で使えば火事になって巻き込まれかねないが、この広場なら俺の身は安全だろうからな。
だけど、『ファイアーボール』1発で死んでくれるほど、レアモンスターは柔ではない。炎に身を焼かれても、構わず走り抜けようとする『マーダーラビット』に、俺は第二の武器を連続で『投擲』した。
ドドドッ!!
放ったのは『キラーラビットの角』。
『鉄のナイフ』は、折られた剣の惨状から見て不適格と判断した。『腕力』と『器用』の高いステータスと『投擲』スキルのお陰で、『キラーラビットの角』は思った以上に深々と、奴の頭部へとめり込んでいく。
『ギ、ギギィ……!』
奴はバランスを崩し倒れ込むが、その目はまだ死んでいなかった。
立ち上がろうと、必死に四肢に力を込めている。
「なんだ、まだ生きてるのか。お仲間の角ならまだまだあるぞ、受け取れよデカ兎」
ドドドドドッ!!
『ギ……』
予備に置いておいた角を投げ終わったところで、ようやく奴は地に伏せた。そしてその体から、モクモクと煙が上がりはじめる。
「ぷはぁ、なんとか倒せた~~」
レベルが4から25へと上がったのを確認し、疲れ果てた俺は仰向けに倒れ込んだ。
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