ガチャ119回目:秘密の鍵
一人で散歩をしている際、俺はこの宝箱の存在に気付いた。彼女達を心配させていることは申し訳なく思ったけど、それでもマップの全景だけでは表示されない位置にあった宝箱に、俺は興味をそそられた。
だから戻る前にこの宝箱を持って、彼女達を驚かせてやろうと思ったんだけど……。
「え、これ動かせないの!?」
「そうなんだよね。地面に張り付いてるというより、不思議な力で守られてるみたいで、びくともしないんだ。その上鍵のかかってる宝箱なんて初めて見たし、皆の意見が聞きたくてね」
今の俺に持てない物はない。とまではいかなくても、それなりの重量なら軽く振り回せる自信がある。だから、宝箱が引っ付いている地面の岩部分を削れば持ち上がるんじゃないかと試そうとしたんだけど、なぜか岩に剣が刺さらない。
まるで、不壊の特性でも持ち合わせているかのようだった。
「鍵付きで、しかも持ち運びが出来ない宝箱……?」
「聞いた事がありません。私達が聞かされていないだけで、ランクの高い支部長クラスなら知っているのかもしれないですけど……」
「そもそも、宝箱の存在自体珍しい物ですわ」
「まあ、それもそうだね。俺も、少し前までは無縁だったから。アイラは、何か知らない?」
アイラは珍しく思い悩んでいた。
そういえば、先に到着していた彼女は今までずっと宝箱の前で押し黙っていたな。
「……噂であれば、国外に妙な宝箱が見つかったという話を耳にしたことがありました。ですが、情報の出所が確かでは無かった為、眉唾でした」
「へぇ、そうなんだ」
国外か……。
ダンジョンは世界中にある訳だし、最前線の冒険者はあちこちの国を渡り歩いたりしてるという。なら、こんなデートダンジョンとかいう平和で優しいところじゃなくて、絶望的に手強いモンスターが多く潜んでいたり、多種多様なダンジョンに向かう事が多いだろう。
そういった中であれば、こういった特異なモノを見つけられるのかもしれない。
「この錠前、どうにかならないかな」
「信頼が厚いのは嬉しいですが、ご主人様。この錠前、調べましたか?」
「いや、動かせない時点で諦めたけど……。何か問題があった?」
「はい。この錠前、いえ。錠前の形をした何かですが、鍵穴がありません」
「え?」
改めて見てみると、確かに穴も無ければ開封用の番号ロックも存在しない。錠前の形をしてるから、てっきりあるんだと思って、確認すらしてなかったが……。
なら、どうやって開けるんだ?
「……じゃあ、壊すのが正式な開け方?」
「いえ、それもお勧めできません。触れて分かりましたが、ただの金属ではないでしょう。ですがご主人様なら、他の開け方を確認できると思いますよ」
「えっと……?」
「『真鑑定』です。通常の『鑑定』では調べられない物も、ご主人様のスキルなら調べる事も可能かと思います」
そうか、『真鑑定』は今まで調べられなかったもの詳細もわかる優れモノだ。
「あー……。スキルを持っていても、発想が及ばなきゃ意味ないよな……」
「そのための私達です。御存分に活用なさってください」
「そうよ、私達は5人でチームだもの。ショウタ君に出来ない事は、あたし達でカバーするわ」
「私達は、あなたを精一杯支えます。その代わり、ショウタさんは私達を守ってくださいね」
「わたくしも、何が出来るかわかりませんが、頑張りますわ!」
「……みんな、ありがとう」
それじゃ、早速調べるか。
「『真鑑定』」
名前:810-2-1
説明:810ダンジョン第二層配置の??? 対応する虚像を捧げよ
「謎が謎を呼ぶなぁ……」
「ですが、おかげである程度の事が分かりましたね」
「そうね。まず宝箱の名前からして、各ダンジョンの各階層にあってもおかしくないわね」
「はい。この場所の宝箱自体、普通なら見つける事すら困難な場所にありますし、他も隠された形で存在していそうです」
「じゃあ、『初心者ダンジョン』にも『アンラッキーホール』にもあり得るって事?」
「そうなると思います」
それはちょっとショックな情報だった。
『アンラッキーホール』を世界で一番把握しているのは俺だ。と胸を張って言えると思っていたのに、まさかまだ秘密が隠されていたなんて。
けど、まだあそこに秘密があったことに、喜びも感じていた。
「この『対応する虚像』という説明ですが、箱の模様から鑑みて……」
「ええ、恐らくショウタ君が集めてるアレよね」
「アレか……」
「はい。アレです」
皆が言葉を濁す中、1人理解が及ばず考え続けていたアヤネがハッとなった。
「トロフィーですわね!」
隠された物を見つけられたのが嬉しかったのか、アヤネが全身で喜びを表現した。
そんな彼女が可愛らしくて、つい頭を撫でる。
「だろうねー」
「えへへ」
「となると、『デスクラブ』のトロフィーが必要になる訳か。問題は、『デスクラブ』が移動を挟まずにその場湧きするタイプだった事だけど……」
「たまたま討伐した場所が湧きポイントだったか、海岸ごとに区別されているのか、他の理由があるのか……ですね」
「それはまあ、後日にしようか。今日はもう遅いしね」
「はい」
「ショウタさん、お疲れさまでした」
「帰ろー!」
「今日も楽しかったですわ!」
そうして俺達は『ハートダンジョン』を後にし、第二層でのデートも無事に終わらせた。
◇◇◇◇◇◇◇◇
「ただいまー……っと」
帰宅した俺達を、眩い光が出迎える。
「おー、見事に生ってるな」
「綺麗ですわ~」
「これは確かに、ご近所さんには見られたくない光景ですね」
「アイラさん、グッジョブ」
「ふふ、ありがとうございます」
植えた『黄金の種』は全部で9個。それらが全て成長し、全部で22個の実になっていた。
反面、『黄金の種(大)』は確かに成長しているのだが、実はまだ付いていなかった。
「もう1日必要なのかな。とりあえず、こいつらにはあとで水をやるとして……」
まずは全ての実を収穫する。
『腕力上昇+2』
『腕力上昇+3』x3
『器用上昇+2』x2
『器用上昇+3』x2
『頑丈上昇+2』
『頑丈上昇+3』x2
『俊敏上昇+2』x2
『俊敏上昇+3』
『魔力上昇+2』
『魔力上昇+3』x3
『知力上昇+2』x2
『知力上昇+3』x2
そしてそれらを、アヤネとアイラに分け与えた。
アヤネは『頑丈』+8、『魔力』+11、『知力』+10。
アイラは『腕力』+11、『器用』+10、『俊敏』+7。
成果としてはまずまずだな。
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