ガチャ1195回目:幻惑のはばたき
俺が戦いを始めるということで、早速彼女達は昨日と同様に空へと浮かび上がり、俺の戦いの邪魔にならないように距離を置いてくれていた。ありがたい。
さーて、始めるとしますか。
『カンカンカン!』
接近戦で挑む以上、まずはあのヘドロの外へとおびき出す必要があるからな。だからまず両手に剣を持ち、剣の腹をぶつけて音を出してみる。
『ゴケッ!?』
『ゴケケケ!』
『ゴケケ!!』
適当に思いつきでやってみたのだが、存外効果はあったようで、クレーター内にいた連中は俺の存在に気付き、一目散に突っ走って来た。
『ゴケケケ!』
『ゴゲー!』
うるさい鳴き声だなぁ。けど、声のボリュームとしては大したことないし、きっとあれはまだ地声だろう。連中は俺を取り囲むように周囲に展開し、威嚇するかのようにゴケゴケと鳴いている。
どう攻めてくる?
『『『ゴゲー!!』』』
「おっ」
連中が鳴くと、世界がぐにゃりと歪んだ。いや、実際には歪んで見えているだけで、世界そのものは歪んでいないはずだ。だというのに、俺の感覚は歪みこそが正しいものなのではないかと意識を引っ張られているような感覚がある。これが『幻惑のはばたき』の効果か。
『『『ゴゲエエェェ!!』』』
「むっ!?」
他の鶏達も共鳴するかのように鳴き声を上げた。すると世界の歪みもより一層激しくなり、視界に映るもの全てがぐにゃぐにゃに変わり果てていく。まるで、値段だけはべらぼうに高いのに、ぐちゃぐちゃに描いた子供の絵と錯覚してしまうような芸術作品を見せられているかのような気分だ。
それを注視してしまうと、まるでその光景が現実であるかのように脳がすり込みされていくかのような感覚を覚える。あまり、コレを直視し続けるのはよろしくないな。
『『『ゴゲゲゲゲ!!』』』
「……ふぅー」
幸い、目を閉じ情報をシャットアウトしてしまえば、それ以上の精神支配は受けないようだ。いや、あれは精神支配というより、感覚支配と言った方が正しいか?
『『『ゴゲゲエエエ!!』』』
目を閉じてしまえばそれ以上侵食はされないし、なんなら不要な情報をカットしたおかげで気配を鋭敏に感じられるようになった。五月蝿いのは変わらんが。
俺を取り囲む鶏の数は最初に目視した数は15。俺の感覚器官が捉えている数も同様に15。認識にズレはないようだ。
問題があるとすれば、視界が歪まされたせいで、平衡感覚もだいぶ見失った点か。今自分が立っているかもあやふやだが、俺の『直感』が地面にいると告げてる。なら、俺はそれを信じて立っているということにしておこう。
『『『ゴゲエエエ!!』』』
だが、敵の位置は分かっていてもこの平衡感覚が失われた状態で動き回るのはよろしくない。いまだに連中が俺を攻撃せず、叫び声を上げ続けているのは、体勢を崩したりして隙を見せたりしていないからであって、無様な姿を晒せば即座に集中砲火を受けるだろう。まあ連中の攻撃が俺に通るとは思えんが、攻撃されたという事実は精神的にダメージが来るからな。出来れば避けたいところだ。
『『『ゴ、ゴゲゲゲ!!』』』
ならここは、この場から動かずに一網打尽にするしかない。天罰は……ちゃんと機能するか分からんから避けるとして、昨日同様に原初の炎を使うのは面白くないし芸がない。
となれば……。
「ふぅー……」
連中の気配を元に位置を予測し、剣に力を込めて地面へと突き立てた。
「『地殻噴出剣』!」
『ドドドドドドドドッ!!』
連鎖的な爆発音のあと、鶏連中から聞こえてきていた傍迷惑な叫びはすっと消えてなくなり、俺の周囲は静寂に包まれた。
【レベルアップ】
【レベルが24から82に上昇しました】
片目をそっと開けてみると、目に飛び込んできたのは先ほどまでの歪んだ情景ではなく、本来の平原だった。まあ、俺の周辺は爆発によりボコボコになってるし、クレーターの内部はいまだにヘドロが溜まっているが……連中が死んだことで効果が切れたようだった。
「……ふぅー。終わったか」
相手は雑魚とはいえ、レベル75の幻惑特化モンスターは伊達じゃないって事か。
ただの殴り合いならまだしも、特殊なスキルを持っている相手と正面からやりあう際、まともにスキルを受け止めると中々苦戦させられるな。もっとレベルの低いモンスターでも、『Eスキル』が一線級なら滅茶苦茶苦労することになるし、一般の冒険者はモンスターを即殺するほどの攻撃力なんてそうは持ってないから大変だよな。こんな連中と正面から、時には奇襲とか織り交ぜて戦って、苦戦しながらもチームで戦い勝利を収める必要がある訳だ。
それを考えると、コイツは旨味なんてほとんどないし、一般公開される事があっても不人気モンスターになりそうだな。あと五月蠅いし。
『マスター♪』
『マスター様♡』
「うおっ」
思案していると、空からアズと、変身を解いたキュビラが降って来た。彼女達をまとめてキャッチすると、俺の疲労を察してか全力で甘やかして来る。柔らかモフモフな上に、口に角砂糖を放り込まれたのでそれをゴリゴリ砕きつつ、その甘さを全身で堪能する。
『お疲れ様マスター。大変だったでしょ?』
『あの手の幻惑は、初めてだと混乱しますよね』
「おー。……やっぱ昨日は、遠距離で倒して正解だったな」
『ふふっ、そうねー♪』
『この後も接近戦されますか?』
「……いや、もういいかな。1回受ければ十分だ」
疲れるし。五月蠅いし。
その後、何の問題もなく1つ目の地神塔を破壊した俺は次のクレーターを目指すのだった。
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