ガチャ1183回目:魔力凝縮
『そういえば兄さん、前回のガチャで出たっていう『魔力凝縮』ってスキルは使ってみたかい?』
「そういや、まだ使ってないな」
『巫術』実験が楽しくて忘れてたともいう。
『そうなのかい? 名称からして強そうなスキルだし、何よりあのULRから出たんだ。効果は期待できそうだけどね』
「そうだな。ただ歩いてるだけだと暇だし、試してみるか」
魔力ってものは魔法を含めたスキルを行使する際、勝手に対価として支払われるものなのだが、一部の上位スキルには先ほどの『巫術』しかり、意図して使用する魔力の上限値を設定できるものも存在する。それを使う過程で、俺は自分の中にある魔力を意識的に動かす方法も学んできた。けど、この操作も全てのスキルに対して有効な訳でもなかった。例えば、『Bスキル』なんかは勝手に対価として支払われる代表的なスキルではあるんだが、こういうスキルには多めに使おうとしても、効果は無かったりしたのだ。
しかし、攻撃魔法に応用すれば、威力を高められる事に気付けた。まあ、すぐに頭打ちとなり、大体威力2倍くらいが限界だったが。なんというか、魔法ごとに定められた器の容量以上に、魔力が入れられずに溢れてるって感じだった。
そこでこの『魔力凝縮』の出番なのかもしれない。こいつは多分、そういった器を誤魔化すために開発されたスキルで、大量の魔力を一気に、しかも安全に仕込むための手法が理解できるんだろう。俺も以前、魔法の威力を限界値以上に高めようとして、この凝縮を自分なりに解釈して試したことがある。けど、魔力なんて目に見えない物を凝縮するってのはとんでもなく高度な技術が必要らしく、『知力』ステータスうんぬんの問題ではなく、なんというか魔力の理論とか概念とか、その手の事に詳しくないと不可能だと判断せざるをえなかった。それが理解できてれば、多分ガチャを介さずにこのスキルが得られてたんじゃないかとも思う。
「んー……ウォーターボール。もういっちょウォーターボール。更にウォーターボール」
実験として、魔力を込めないただのウォーターボールと、魔力を今までのように限界まで込めたウォーターボールと、『水の親和力』も併用した威力と巨大さを優先したものを呼び出す。これだけでも最初のはバスケットボールサイズで、後者は一回りか二回りほど大きく、最後のは直径2メートルほどだ。だが、燃費という意味では普通にビッグウォーターボールを使った方が消費は少ないので、あとの2つはある意味無駄が生じてる気がする。
「ふぅー……『魔力凝縮:ウォーターボール』」
限界まで魔力を凝縮し、それを対価としてウォーターボールを使用した。効果は、見た目でいえば先ほどの中間くらいのものだろうか。大きな変化はなかったが、内包されている魔力が桁違いだった。多分、この水の中に生物を突っ込もうものなら、深海に近い圧力とミキサーのように乱回転する水流を受けて、バラバラに粉砕されるんじゃないか?
まあでも、イリスのボディーみたいな粘性と、なんでもかんでも取り込む性質は持ち合わせていないから、ぶつけたら形状を維持する力を失って破裂するだろう。そうなれば、内側の暴力が破裂して甚大な被害を周囲に与えそうではあるか。
『ひぇ……』
『うわ……。これはぶつけられたくないわね』
リリアナは震え上がり、あのアズですらドン引きしている。
嫁達と一緒に入る風呂場や海では、普通のウォーターボールをぶつけ合うじゃれ合いがそこそこ起きたりはするんだが、そこにコレを出せば死人が出かねんレベルの威力を秘めてそうだもんな。
「試してみたらと提案したのは僕だけど、とんでもないことになったね」
「お?」
実験と思考に夢中になっていたら、どうやらもう中央に到達したらしい。
リリムとリリィも、この魔法を見て震え上がっていた。こんな危ないもの、ぶつけたりはしないぞ?
「なあエス、早速これ試してみたいんだが」
「5体くらいでいいかな?」
「ああ、助かる」
話が早くて。
『ヴォオオオ!』
風の流れを見守っていると、奥から黒鹿が5体、オーダー通り現れた。
まずは先頭を走る黒鹿に先に用意していた普通のウォーターボールをぶつける。
『パシャッ!』
うん、濡れただけで大して効果なし。
続けて従来のやり方で魔力を込めた方を投げる。
『バシャッ!』
『ヴォッ!』
打撃的な効果もあったのか、多少のダメージにはなったらしい。ちょっと怒ってるようだ。
次は『水の親和力』で強化したウォーターボールだ。
『ドガッ!』
その衝撃を真正面から受け、先頭にいた黒鹿は絶命。煙となって消えて行く。
攻撃には不向きなウォーターボールでも、親和力による底上げ効果はやはり強いな。これを魔法スキルとして形の定まったものではなく、自由自在にアイデア次第でいかようにも化けるクリスの『水』がどれだけヤバイかもよくわかる。
んじゃ最後に、この禍々しい暴力を秘めたウォーターボールだ。今度は遠心力も含めるため、直線ではなくカーブ気味に投げ飛ばしてみる。これも親和力を得た事でできるようになった細かい操作力だ。
『ヴォッ!?』
『ヴォアッ!?』
『ドゴシャッ!』
正面ではなく横からの強襲に、黒鹿連中は悲鳴を上げた。そんな悲鳴も最初の激突により霧散したが。
力の塊は1体目に激突してもその速度と形状を維持したまま、2体目3体目と巻き込んでいき、最後の4体目に激突する寸前に決壊。内部から溢れ出した激流が全ての黒鹿を飲みこみ、煙となって消えて行った。
あんな無害なウォーターボールがここまで殺傷特化に変化するとなると、他の属性だとどうなるやら。まあ『水の親和力』による底上げ効果もあるだろうから、ここまでの結果は得られないだろうけど。
ただ、このスキルの真の価値はそこではないな。
「多分だけどこれ、『スキル共有』の対象になってる気がするんだよな……」
こんな凶悪スキルが皆使えるようになる?
……やばいだろ。
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