ガチャ1179回目:水実験
衝撃の事実を思い出した俺は、早速端末を取り出し電話をかけた。
「もしもし、アイラー?」
『はい。どうされましたか?』
「いま家?」
『いいえ。まだダンジョンですよ』
「あれ、そうなの?」
攻略開始してから1時間以上は経過してるし、そろそろ帰ったのかと思ったんだけど……。
『宴会組はまだまだ盛り上がっていますし、私達も楽しんでいますから』
「それなら良いんだけど……」
『ご主人様が今日の冒険でどこまでダンジョンを明るくするかの賭けも行われております。割合はお伝えした方がいいですか?』
んな事してんのかよ。
「いや、変に火をつけられても困るしな。聞かないようにするよ」
『畏まりました』
「それで本題なんだけど、『水渡り』のスキル在庫はあるか?」
『おや、ついに思い出されたのですね。ガチャを回せるレベルまで上がったのですか』
「いや、もう回した」
『……なるほど。把握しました』
回した結果『水渡り』が出て、それを見たアズ達がどう行動したのかも織り込み済みと。
『ご主人様のバッグに入れておきましたのでご使用ください』
「おう、ありがと」
そうして通話を切ってバッグを漁ると、そこからは『水渡りⅤ』が出て来た。流石アイラ。分かってるな~。
名称:水渡りⅤ
品格:≪伝説≫レジェンダリー
種類:アーツスキル
説明:水を地面とし、水上を自在に歩く事が可能となるスキル。液体の総量が多いほど足場としての吸着力が高まり、従来の重力を無視する事が可能。
★水の親和力を保持している場合、空中に浮かぶ液体であっても十分な量があれば足場として活用可能。
「お? マジで?」
今まで何となくで使ってたけど、重力無視なんて真似もできたのか。そういや『マーマンキング』も無印ではあったが、波に乗ってもバランスを崩す事は無かったな。
それにリリアナのダンジョンで使用できたことになんら違和感は無かったけど、こんな破格の性能なら『伝説』でもなんらおかしくはないな。
「んじゃ試しに……ウォーターウォール」
垂直の水の壁を呼び出した。高さ3メートル、横幅4メートル、厚み50センチ。十分な量っていうのがどの程度か分からないけど、このくらいあれば十分か……?
「よっ……おー」
『壁走り』のスキルで壁面を足場として利用する事はあったが、あれは重力を無くせる訳ではなく勢いで乗り切るものだ。けどこっちは、完全に壁を足場として認識しているらしく、認識している以上その壁は地面と同義として扱われているようで、上体が傾くことなく、壁に対して垂直に制止できている。そして重力の影響もなく、頭に血が上るなんてこともない。
まるで嫁達が壁に立っているかのような違和感すら感じるな。
そのまま水の壁を歩いて下を覗き込んでみれば、深淵のように真っ暗な世界が広がっていた。このまま足を踏み外せばあの深淵に落ちてしまいそうな気にもなるが、実際には数メートルほど先の本来の地面に落下する事になるんだろうな。
「便利ではあるんだが、慣れないと脳がバグるな」
『それでもしっかり水の壁を維持できてるじゃない♪』
『世界が90度変わっているのに、まるでブレていません♡』
『おにいさん凄いですっ!』
『ショータ器用だね~!』
「おう、ありがとな」
そうしてその場で軽くジャンプすると、重力が元の通りに働き始めたたため、空中で態勢を整え地上に着地した。
「エス、聞こえてる?」
『ああ。なんだい』
「カスミ達の方は順調?」
『今レアモンスターと戯れあってるよ。急がせるかい?』
「いや、いい。俺はこのまま実験しながら中央に向かうから、カスミ達が終わったら殲滅を頼む」
『了解だ』
「んじゃ次はっと。ビッグウォーターボール」
ボール系魔法は魔力を込めるほど威力もそうだが見た目も肥大化する。限度はあるみたいだが、そこにビッグ系の巨大化作用を行使すれば直径6メートル越えの巨大球体が誕生した。
だが所詮は水の玉。他の属性に比べれば威力は大人しめだし、ぶつかったところで知れている。本来はここまで大きくする必要はないかもしれないが、初めての試みなので仕方がないだろう。
「よっと!」
巨大な水の塊の上部に飛び乗る。本来ならこんなことしようものなら即座に物理的干渉の波を受け、魔法は瓦解し地面に墜落していたことだろう。けど、『水渡り』の効果を受けたことで俺だけでなく魔法の水にも足場としての側面が付与される仕組みのようで、特になんとも無かった。
後はこの水の塊をゆっくり中央に向けて発射するようイメージすれば……。
「おお。動き出した」
簡易的な乗り物の完成だ。この水の塊は俺が呼び出した魔法である以上、よほど難解な動きでなければ軌道を操作する事は可能となる。魔法を覚えたての頃はまっすぐにしか飛ばせられなかったが、これも研鑽の賜物だな。
問題は『水渡り』が無ければ一人乗り用ってとこだな。
「あとは……」
『『『『あとは?』』』』
「うおっ」
振り返ると、そこにはアズとリリスとリリアナがいた。そういや彼女らは自前で飛べるんだっけ。……いや、よく見ればアズの肩には九尾のキツネもいるな。てことは、こっちは変身したキュビラか。この姿を見るのは初めてだな。
『んもう、マスターったら。実験に夢中になるのは良いけど、あたし達の事忘れないでよね♪』
「ごめんごめん」
『ふふ、ですがマスター様が楽しそうですから問題ありません♡』
『そうですねっ』
『スキルの実験か~。懐かしいな~』
「んじゃあキュビラ、サイズ的に丁度良いから実験に付き合ってくれるか?」
『喜んで♡』
彼女を手招きすると、狐姿のままキュビラが飛びついてくる。そして彼女はそのままマフラーのように首元に纏わりついてくる。うーん、タマモとはまた少し違ったモフモフ感。心地良いな。
さて。今の俺は『水渡り』の影響で水に浮かんでいるんだが、キュビラが乗った事での影響は……特にないようだった。
「ふむ。装備品とかと同じ扱いか」
『そのようですね』
「今、俺若干地面とは水平じゃない角度に傾いてるんだけど、そっちも影響ないか?」
『はい、問題ありませんっ』
「おー、そうか。じゃあこのまま真っ逆さまになる真下まで移動してみるか」
『はいっ♡』
『じゃ、あたし達は正面にいる雑魚を蹴散らしておくわね~♪』
「おう、任せた」
そうして俺達は実験しながら中央の穴へと向かうのだった。
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