ガチャ1168回目:宴会開始
「完全に真っ暗闇になったね」
「壊れた以上、これはダンジョン側が想定していたって事よね」
「これで準備は整ったと考えて良いのかしら?」
「それじゃ、焚火でもして明かりと、宴会の準備しなくちゃ」
「それにしても、太陽って壊せちゃうんですね~」
「実力が上がってできるようになっても、やろうって発想にはならないわよね。普通は」
「普通は、そうですわね」
「ん。そこはショウタだから」
「勇者様ですもん。普通は踏み止まるところも、飛び越えちゃいますよ~」
『流石マスターね!』
「褒められてると思っておこう」
『ショータ、ポジティブだね~』
そうして宴会の準備をしていると、端末が振動した。
「もしもしー?」
『ショウタ君、明かりの事なんだけどさ~』
「うん」
『拠点の電気とかは付けない方が良いかな?』
「あー……。どうだろな? 時代的な考察を考慮に入れると、文明の利器が存在する訳ないし、太陽要らずの光量を保てちゃうから、それでギミック起動しなきゃ意味ないしな。一応この階層の攻略が終わるまでは付けない方針で」
『オッケ~。それじゃこっちも焚き火にしておくね~』
通話が切れると同時に、向こうでも焚き火の明かりが灯り、そこに集まる面々の影がほのかに見えた。用意が万全だな。
んじゃ、俺も宴会の準備を手伝うとしますかね。
「釣った魚の解体は嫁達の方が良いだろうけど、調理をどうするか……」
キッチンが無い以上大掛かりな事はできまい。となると調理環境は限られる訳でガスコンロとかは有りだろうか? ……いや、電気をダメとした以上、こっちもやめておいた方が良いかな。
となると、魔法で竈を作っておいて、小魚の方は普通に塩で串焼きにすればいいか。5メートル級の怪魚もいるけど、こっちもまあハラワタを抜いて豪快に丸焼きにしてみるのも一興か。ダメならイリスを呼んで食べて貰えば良いしな。酒は自前の物があるし、メインの料理は嫁達が事前に用意してくれてたものが『魔法の鞄』に詰め込まれている。宴会を開くには十分すぎるな。
そうして用意は着々と進み、準備完了といったところで俺が開始の音頭を取った。
「それじゃ、カンパーイ!」
『カンパーイ!!』
◇◇◇◇◇◇◇◇
宴会開始から10分ほど経過したところで、とある変化があった。
「お、お兄ちゃん。それ……」
「ん?」
カスミが緊張したように指し示したのは、俺の真横だった。そちらに視線を送ると、白い毛玉がいた。
いや、よく見ればそれは凍えるようにプルプルと震える真っ白な子犬だった。
「んん!?」
いつからいた!?
それに、なんだこのあまりにも希薄な気配は。
俺の感知にも引っかからないくらい微弱な反応の上、目視していなければ真横に居る事も認識できない程に存在感が薄い。
そして何より……『鑑定』が通らない。勿論『真理の眼』も『神の目』もだ。基本的にダンジョン関係で『鑑定』が通らないのは、魚や植物なんかがそうだ。魔石を持たない生物がその扱いなんだとは思う。
一部のダンジョンには野生の動物みたいな存在もいるらしいが、それに関しては俺はまだ未遭遇なのでよくわからんが……もしかしてこの子犬もそうなのか?
けど、最初の探索の際にいなかったよな? それに誰からも発見報告が無かったし……いやでも、ネタバレ回避のために見つけても言わないパターンもあるか。
『クゥーン……』
弱弱しく吠えた子犬は尚もプルプルと震えていたので。そっと持ち上げてタマモにしているように抱きかかえた。うーん、ちょっと弱ってるのか身体が冷たい。それに栄養失調感が否めんな。
「お前、お腹減ってるのか?」
『クゥン……』
「流石にドックフードは持ってないけど、ミルクなら用意出来るか。クリス」
「はい、ただいま」
クリスはさっと底の浅い皿を取り出しミルクをなみなみと注いだ。子犬を皿の前まで持っていくと、俺の顔と皿を交互に見つめた。
なんだ、遠慮してるのか?
「食って良いぞ」
『キャン!』
よほどお腹が空いていたのか、ガブガブと飲み始めた。にしても、本当に真っ白な子だなぁ。犬種で言うと、ポメラニアンの子供に近いか? 白くてフワフワの毛玉ボディー。
世界は暗闇に包まれているはずなのに、この子犬は不思議とハッキリ見えるんだよなぁ。となるとやっぱり、こんな分かりやすい見た目の子犬はダンジョンにいなかったと判断するべきか。じゃあ、どのタイミングで出現したんだ?
外から紛れ込んだ可能性もあるにはあるが、子供たちの世話をしているとはいえ、あのアイラ達の目をかいくぐってここまでやってくるというのも、ちょっと信じられないんだよな。
『けぷっ』
そんな事を考えていると、子犬はミルクを全て飲み干した。口周りの毛がミルクで更に真っ白になっていたので、抱えて拭いてあげる事にした。
ふきふき。
「満足したか?」
『キャン!』
「そうかそうか。そりゃよかった……ん?」
周りの皆が子犬を凝視していた。その視線の種類は、大きく分けて3種類だった。嫉妬、警戒、羨望。
嫉妬は……ペット組からだな。これにはノーコメント。
警戒は……まあわかる。怪しいもんな、このワンコ。
羨望は……これもわかる。タマモやキュビラとはまた違ったモフモフの毛玉だもんな。撫でたい気持ちも分かるぞ。
「ねえお兄ちゃん」
「触りたいのか?」
「それもあるけど、絶対普通の犬じゃないよーその子」
「怪しさ満点ではあるけど、絶対っていうほどか?」
「だって変だよ。私達やお兄ちゃんの気配に対して、この子全然ビビってないもん!」
「あー……確かに?」
普通の動物は、50から100レベルを超えた人間に対して警戒したり顔色伺ったり、下手すると隠れたりするようになるもんな。気配を抑えれば別だけど、それでもこんな至近距離まで来たら相当暢気な奴でも初見は驚いて身を強張らせるはずだ。それくらい、動物ってのは気配に敏感なものだ。
まあ寒くて空腹に襲われてたら、それどころじゃないかもだが。
『ねえねえマスター』
「ん? アズも撫でて欲しいのか?」
『それもあるけど』
そう言ってアズはクイッと指を大岩に向けた。
『開いてるみたいよ?』
「なにっ!?」
さっきまで一枚岩だったはずの天岩戸の中心部には、焚火に照らされて下へと続く階段がぼんやりと浮かび上がっていた。
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