ガチャ1142回目:アスレチック
「おおー?」
飛び石のように空中に浮かぶ足場。このフィールド構成は、最初の足場に足を踏み入れた段階で、見える情報が少し変化していた。遠目から見た時は浮いている足場は直径1メートルから3メートル程度で、足場同士もまた1メートルから3メートル前後距離を置いて配置されていた。けど、実際にその空間に入ってみれば、足場の広さや距離に変化は無かったが、2番目の浮島に続く最後の地点。そこにあった足場がゴッソリと消えてなくなっており、彼我の距離は目算30メートルほど離れていた。
どうにもこのダンジョンは、実際に踏み込むまで、詳細が分からないよう各所に感知不可の設計がされているダンジョンらしい。今までの冒険で、スキルによるゴリ押しをしていたら間違いなくここで詰んでいただろうが……30メートルか。助走ありならなんとか行けるか……?
「よっ、ほっ」
一番奥に見えるトラップを除けば、手前は前情報と一切変わらない平和なアスレチックだ。まあ、ワンミス即死級であることに変わりはないのだが。
そんな場所を散歩するかのように気楽に渡り続けていると、背後にピッタリとくっ付いてきていたエスが声をかけてくる。
「兄さん、僕が前に行かなくても良いのかい?」
「それはあれか? この足場のどこかに見えない罠があるかもって考えか?」
「そうだね。ここまで用意周到に罠が張り巡らされてるんだし、そんな小手先の罠があってもおかしくないんじゃないかなって」
「エスの考えももっともだが、俺としてはその手の罠はないように思うんだよな」
「ふむ。その心は?」
足場を次々と越えながら会話を続ける。
「罠って言うけどさ、フィールド全体に齎してる内容としては単純に基礎的なスキルを封じて、デフォルトの身体能力だけでなんとかクリアさせようって魂胆だろ?」
「一番奥の罠を除けば、根本にあるのはそうなるね。『伝説』以上のスキルって、僕が言うのもなんだけど上澄みですら取得困難な代物だったんだ。そんなものをいくつも確保している人間が攻め入ってくる事を想定するのは、現実的ではないのかもしれないね」
例外はここにいる訳だが。
「だから、ここは純粋な身体能力と判断力での突破が求められてるんじゃないかなって思うんだよ。ダンジョンの管理と改造をしていてつくづく感じたんだが、あのシステムでも『伝説』以上のスキルって規格外というか、システムに影響を与えるレベルの存在みたいなんだよな」
だから、このダンジョンを作った奴は、スキルによる力技じゃなくて、純粋に自身が磨き上げた技術でクリアして欲しいんだと思う。最後の消えた足場は謎だけど、まあ行ってみればわかるだろ。
「タマモが何度も出入りできたように、無理そうなら自由に帰って良いみたいだしな」
「だから兄さんは、素直にこのアスレチックを楽しんでいるわけだね」
「今のところはだけどな。現状無難な足場だし」
普通の人間には1メートルの距離を飛び越えるのもやっとだが、身体能力が極限まで上がった俺たちからすれば、30メートルの距離も難しい距離ではない。
まあでも、あの30メートルをたやすく越えられるのって、それなりのレベルが要求されてそうだけど。
「少なくとも、平均的なステータスで考えれば、レベル200以上はマストで欲しいよね。試した事ないけど」
「3メートルくらい楽勝って思って踏み込んだら、実際は最後に30メートルあって引き返す事になる訳だな。そういう意味ではちょっと嫌らしいな」
「向こうの人たちからすれば、これくらいは余裕でできちゃうから、分からなかったのかも?」
「あー……向こう基準でステータスを要求されてるとしたら、ちょっと理不尽かもしれないな」
ちょっと内心、手のひらがクルクルし始めたが……何かあると思いたい。
「けど、あの30メートルの空間があるのは、ちょうど2番目の巨大浮島の手前だろ? だから何か意図があると思いたいんだよな」
「それはギミック的な意味でかい?」
「そうそう。流石に最後の最後だけあんなに距離があるのは、いじわるが過ぎるだろ」
「……確かに、そうかもしれないね」
そうして話していると、俺達は例の30メートル離れた空間へと辿り着いた訳だが……。ふむ。
「エス、感じるよな?」
「ああ、感じるね」
これ、視えなくなっただけで存在はしてるよな。
「ってことは、最初に見えていたのもまた真実か」
「もしかして、アレを覚えていろって事なのかな?」
「勇気と知恵まで求めてくるのか……。ちょっと想定外だな」
「兄さん的にはナシかい?」
「いや、アリだけど」
こういう、挑戦者を試す造りのダンジョンって初めてだから、割とワクワクしている。なんなら、悪質な罠が無い分、結構好きかもしれない。
『くふー。御主人が楽しそうなのじゃ』
などと考えていると、首元から声が聞こえて来た。
そういや、ずっとそこにいたんだった。全然喋らないからちょっと忘れてた。
「タマモ、さっきから喋らなかったけど、どうして静かにしてたんだ?」
『御主人の思考を邪魔する訳にはいかないのじゃ。わっちは答えを見てしまったのじゃ~』
そういやそうだったか。
とりあえず撫でておこう。
『くふ~』
「それで兄さん、覚えてるかい? 最初に見た足場の位置」
「勿論。なんなら、今までの足場も全部覚えてるぞ」
昔の俺なら無理だったが、今の俺なら目を閉じた状態でここまで来ることもできると思う。それくらい『知力』の恩恵はデカいからな。
「流石、抜け目ないね」
「まあでも、それ以外にも抜け道はあると思うんだよな」
俺は『エレメンタルマスター』で水を召喚し、目の前の透明空間にぶつけてみる。すると、足場は水の存在により鮮明にその存在を示した。
「今のはスキルを使ったが、『魔法の鞄』から水筒を取り出して、ぶっかける事でもできただろうし、割と緩く作られてる気がする」
「確かにね。僕もやろうと思えば『風』で足場を感知することができると思う」
「けど、必要ないよな」
「そうだね」
そう確認した俺達は、見えない足場をしっかり踏み越えて2番目の浮島へと乗り込んだ。
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