ガチャ1114回目:激戦の後で
「……知らない天井だ」
目を覚ますと、真っ先に飛び込んできたのは見覚えのない天井だった。けど照明の豪華さや空気感からして、ここはそれなりに格式の高い場所だというのはなんとなく理解できた。
状況を思い出そうと頭を働かせるが、ぼんやりとした頭では記憶にモヤが掛かって思い出せなかった。そのままぼけーっと天井を眺めていると、俺の第一声を聞いてかキュビラとリリスが駆け寄って来た。
『マスター様っ!』
『みなさーん。おにいさんが起きましたよー!』
そうして隣室から次々と嫁達がやって来て、俺の無事を喜んでくれた。彼女達の様子からして、あまり憔悴はしていないようだし、気絶してからさほど時間は経過していないのだろうか?
上体を起こして嫁達を順番に抱きしめていると、窓の外からくぐもった声が聞こえて来た。
『キュ~!』
そちらを見ると、外は屋外プールのようになっており、そこには窓の外でこちらを心配そうに見つめるルミナスの姿があった。手を振ってやると嬉しそうに振り返してくれる。うーむ、可愛い。
しかし、あのプールといい降り注ぐ雪に夜空といい、ここは日本ではなくまだモスクワにいるようだな。
「状況を説明してくれるか?」
そうして俺は、あの後何が起きたのか説明してもらう。
まず、時間としてはあの『強奪者』戦から3時間ほどしか経過していないのだそうだ。俺が倒れたまま日本に転移するわけにもいかず、一旦様子見でこちらのホテルに泊まるという話になったらしい。まあ、サクヤさん判断らしいけど。
しかし、まだ3時間しか経ってないのか。今、俺の全身に力が入らないのも、あれほど身体を酷使したのに十分な休息が取れていないからなんだろうな。フルブーストにタイムストップ、完全解放されたグングニルを使用しての『武技スキル』3連発。疲れない方がおかしい。……あれ、そういやグングニルは――。
「お」
武器庫を漁れば、中からグングニルが出て来た。大気圏突破したはずなのに、どのタイミングで戻って来たんだ? でもそのおかげで、長時間昏睡するようなことはなかったようだが。
『マスターが目覚めてほっとしたわー』
「良かったですわ、本当に……」
『マスター様がご無事で、本当によかったです』
「ん。意外と元気そう」
「……元気そうに見えるか?」
「顔色は良い方」
「もっと精も魂も尽き果ててる状態を危惧してたからねー」
まあ確かに、呼吸するのもしんどいってレベルで疲弊しきってる感じでもないな。
「ショウタ様の戦いぶり、とっても格好良かったです」
『とっても興奮しましたっ!』
「あんな激闘の中でも、不殺を貫いた勇者様はご立派でした」
「結果論でしかないよ。正直、あれだけして生きてる方がおかしいと思うんだけど」
レベル3桁程度のダンジョンボスなら確殺出来るほどの威力を秘めた『武技スキル』を3連発だぞ。こっちだって殺す気で動いていたし、常識的に考えてアレで死んでない方がおかしいだろ。
『まあね。どんだけ貴重なアーティファクトを揃えたのよって話よ。アイツの落としたアイテムは倒したマスターのものだから、ちゃんと戦利品として掻っ払っておいたわよ♪』
「ああ、ご苦労様……と言いたいところだけど、あいつが持ってたものなんて出所が怪しすぎるんだが……」
盗品の可能性どころか、10割盗品でもおかしくないぞ。
「んで、アイツはどうなったんだ? 『スキル封印』で『強奪』を封印したのは確認できたが……」
『マスター様が気を失われた直後に私たちが駆けつけ、奴にはサクヤ様が用意されていた『奴隷の首輪』を装着しました。装着者はアズ様です』
「やっぱりそれしかないよな」
「ん。かつて征服王に使う予定だったけど、あっちは使う余裕もなかった。けど、今回はショウタが完全に無力化したからこそ使えた」
『奴隷の首輪』は、簡単に言えば装着した本人しか着脱する事はできず、装着させられた対象はスキルが封じられ、ステータスも完全初期値にまで抑え込まれるって代物らしい。実物は俺も視た事がないが、サクヤさんが持っているって話は以前聞いたし、それを使うって話は『征服王』が存命の時に話題に上がったのは知っていた。けど、俺としてはそれがどこまで通用するのか謎ではあるんだよな。だって、それの品格は『伝説』でしかないそうだし、『高位伝説』や『幻想』を持っている相手にはどこまで通用するか未知数なんだよな。
まあでも、奴の中核スキルである『強奪』を封印できたんだから、『奴隷の首輪』もある程度効果を発揮してくれないと困るんだが。正直な所、奴は大犯罪者なんだし殺してしまえば話は早いんだろうけど、そうすると色々と謎は残る訳だし、有用な情報は絞るだけ絞ってから処理を考えるのが妥当だろう。
「そういえば、『奴隷の首輪』でステータスを初期化したら、あの怪我に耐えられないんじゃないか?」
「ご安心を。装着直後に死なない程度の治療を施しましたので」
「両手両足の欠損状態での治療よ。奴が首輪を外す事ができたとしても、満足に逃げる事はできないわ」
「うわぁ」
えぐい。
まあ、何人もの人間からスキルの『強奪』を繰り返してきた重犯罪者だ。それが奪う側から奪われる側に回っただけ。因果応報というか、当然の末路か。
「しっかし、最後の一撃を耐えた事も謎だが、途中の超回復はなんだったんだ?」
『それならある程度見当が付くわよ♪』
「おお、流石アズ」
『といっても、あたしの場合戦闘中はずっとアイツが身に着けてた装備類のチェックを優先してたからね~♪』
なるほど。
『強者になってくると、向こうでも『鑑定偽装』持ちがデフォルトになってくるわ。そうなると、基本的に相手のステータスやスキルは視れないし、予想しながら戦うしかないから、装備を視るのが戦略の1つとなるのよ。『真理の眼』や『神の眼』を併せ持つ人間なんてマスターくらいのものよ~?』
「なるほどなるほど」
確かに、うちのメンバーは誰も『真鑑定』まででその先はどちらも持ってないし、『強奪者』のあの戦略も『真鑑定』で情報を覗き見るために最初に『鑑定偽装』をぶんどるという戦法だった。相手にもし『真理の眼』があれば、やりたい放題できてしまう訳だ。
それこそ、ガチャが奪われてたら世界が終わってたな。
「で、その装備って?」
『ううん、装備からはそれっぽいものは見つからなかったわ。けど、『解放』という言葉と、それによって引き起こされた現象から鑑みて、1つだけ思い当たるアイテムがあるわ。どこで手に入れたのかは知らないけど『デウスエクスマキナ』に由来するアイテムを2つ、肌身離さず持っていたか、体内に取り込んでいたと思うわ。品格は最低でも『高位伝説』で、効果は単純明快。装備者が認識した都合の悪い事を無かったことにするの』
デウスエクスマキナ……機械仕掛けの神か。
どう考えてもそれ、400番台の『機神』関連じゃないか?
読者の皆様へ
この作品が、面白かった!続きが気になる!と思っていただけた方は、
ブックマーク登録や、下にある☆☆☆☆☆を★★★★★へと評価して下さると励みになります。
よろしくお願いします!











