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レベルガチャ~ハズレステータス『運』が結局一番重要だった件~【コミカライズ第3巻 4/15に発売決定!】  作者: 皇 雪火
第二十九章 深海ダンジョン 後編

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ガチャ1106回目:水の深奥

 ボスを討伐し、疲れ果てた俺の元に嫁達が集まって来る。彼女達はそれぞれが言葉で俺を労い、そのまま献身的に労わってくれた。


『キューキュキュキュー♪』


 そんな中、ルミナスは常にハイテンションだった。俺の枕になっている今も、ご機嫌な様子で何かを歌っている。俺はというと、そんなルミナスを宥める元気もないくらい疲れていたので、そのまま彼の歌声に耳を傾けていた。

 そうして彼女達がドロップアイテムを集め終えた頃、幾つか気になった事を聞くことにした。


「そういや、皆は奴のステータス視れたか?」

「それでしたら、わたくしが気配を断ちながら接近して確認致しましたわ」

「マジで? 気付かんかった」


 戦闘中の俺は周囲の気配に対しかなり鋭敏な方だと自認している。『ラルヴァリヴァイアサン』も俺が接近しただけで気付くレベルだし、奴との戦いは基本的に俺はかなり接近して戦っていた以上、奴の50メートル圏内は俺にとっても感知圏内のはずだ。そんな中で俺にも奴にも感知されずに接近できていたというのは、かなりすごいことだと思う。


『あれは凄かったですね。『水の親和力』のスキルも大きいとは思いますが、クリス様は元々水に対して、魂レベルで結びつきが凄く高かったんだと思います』

『あれほど完璧に擬態化できる人間は、向こうでもほとんどいなかったレベルよ』

「恐縮ですわ」


 アズが手放しで褒めるほどか。それは興味が湧いて来たな……ん? 擬態??


「擬態ってなんだ?」

「ふふ、クリスさんは文字通り水に擬態していたんです」

「???」

「説明するよりも見て貰った方が早いと思いますっ」

「あんな奥の手を隠し持っていたなんてね。ほんと凄いわ」

「ん。流石クリス」

『クリスさん、もう1度見せてくださいっ!』

「ふふ、わかりましたわ」

『キュ? キュキュ~』


 何だか一発芸をせがんでいるような空気感だな。まあでも、どんな技術なのか俺も気になってるし、止はしないけど。


「では失礼しますわ。……『アクアコンバート』!」


 クリスの声に呼応する形で液体が出現し、彼女の頭上で高さ2メートルほどの円柱へと成形される。そしてそのまま彼女を飲みこむ形で落ちて来た。

 それは不透明な液体で、中がまるで見えないが、不思議な事に嫌な感じは一切しなかった。彼女達もただ見守っているので俺も大人しく待つ事にした。

 そうして数分後、液体は中央に向かって収縮して行き、最後にはクリスの形となって現れた。……そう、中にいたはずのクリスはどこかへと消え去り、目の前には謎の液体でできたクリスの形をしたナニカしか残っていないのだ。


「この風貌、まるで『水の大精霊』そっくりだな」


 精霊種は基本的に無機質な存在であり、生命を感じない不定形な存在だった。その存在からは生命の息吹を感じず、内部には炉心となるエネルギーの結晶体しか持ちえない不思議な存在。

 それは今目の前にいる存在も同様だった。生命ある存在なら誰しもが持っている、心臓の鼓動すらないのだ。普通なら、クリスはどこかへと消え、モンスターが突然現れたと勘違いしてもおかしくはない。それくらい見た目も空気感も雰囲気も、『水の大精霊』にそっくりだった。

 まあ、俺達は騙されたりはしないが。


「クリスはこの状態で接近してきたんだな」


 彼女はこくりと頷いた。というか、敵意が無い分逆に気配そのものが薄いな。目視してなきゃ普通に見逃すレベルだ。


「この状態のクリスは、喋れないのか?」


 再び頷くクリス。そうして彼女はその場でジャンプすると、バシャンと音を立てて水たまりの中に消えて行った。今のクリスを構成する身体は不透明な液体であるので、その液体がクリスだと分かっている今見失う事はないが、初見ではまず気付けないな。


「おーい、クリスー?」


 一向に水たまりのまま動かないクリスに声を掛けるが、反応がない。どうなってるんだ?


「あ、ショウタ。後ろ後ろ」

「ん?」

『キュ~?』


 ルミナス枕から起き上がり後ろを見ると、ルミナスを挟んだ向かい側にクリスがいてこちらに手を振っていた。もう1度正面の水溜まりを見るが、そこには不透明な液体が残ったままだ。そして辺りを視てみれば、そんな不透明な液体が随所に散らばっている。

 その内の1つを指差してみれば、クリスは瞬間的に指差した先の液体から現れた。……てことは、身体の一部を残したまま自在にワープ移動のような事すらできてしまうのか。凄いな。いやマジで凄い。


「ありがとうクリス、もう戻って良いぞ」


 彼女は頷くと、周囲に散らばらせた液体を一カ所に集め、自らもそこに飛び込んだ。そうして水の身体になるのと同じ時間を掛けて彼女は中から出て来た。その姿はいつものクリスだった。


「いやしかし、凄いなクリスは。この姿で『ラルヴァリヴァイアサン』を間近で見ていたのか?」

「はい。あのモンスターが呼び出した海水に入り込んで、至近距離で視させて頂きましたわ」

「……てことは、俺が奴にトドメ刺す時もいた?」

「はい。『次元跳躍』で裏回りされた瞬間に、急いで退避しましたわ」


 それは危ない。クリスごと蒸し焼きにするところだった。まあでも、クリスなら『金剛外装』もあるし多分大丈夫だろうけど。


「あ、じゃあ俺があの時バランスを崩した理由は分かるか? あの時はその理由を探す余裕が無かったんだよな」

「それでしたら目撃致しましたわ。ショウタ様が踏み込む瞬間に合わせて、その場所の水だけを落とし穴のように引っ込めたのです。そしてバランスを崩したところを一斉砲撃で仕留めるという算段だったのでしょう」

「……なるほどな」


 想像以上に頭の回る、本当に厄介な敵だった。幼生体だからってあれも『古代種』でありダンジョンボスなのだ。舐めちゃ駄目だよな。


「ちなみに、カメラを装着して接近しましたので、そのシーンはバッチリ録画しましたわ。後で一緒に観戦しましょうね」

「うっ……」


 マジか。夜のピロートーク時、振り返り観賞会的な事をする時間があるんだが、久々にダサいシーンが観賞される事になりそうだ。

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