ガチャ1105回目:第二回古代種討伐戦
『ラルヴァリヴァイアサン』はまず巨大な水の槍を召喚した。その数30本。人間からしてみればその太さは極太だが、奴からしてみれば針みたいなものかもしれないな。
俺には『完全耐性【水】』があるが、あれには水の力とは別に、槍としての貫通力が備わっている。それに発射されれば物理的な側面も強くなるだろうから、完全な無効化はできないな。普通に物理的な槍をぶつけられるのと大差なさそうだ。
というわけで、そんな攻撃は食らってやるつもりはないので、回避を織り交ぜつつ剣で斬り払う。あいにく、『完全耐性』のスキルが働くのは俺の身体に接触した瞬間だ。なので剣で迎え撃っている時は水の槍そのままである為、威力の減衰なんて起きない。そういう意味では役には立たないスキルだったりする。結局のところ、耐性系統のスキルって全部『もしもの時のための保険』以外の何者でもないんだよな。
「結局、回避優先型の俺にとっては、無いよりはマシ程度のスキルだな」
『SHAAAA!!』
純粋な水属性のみの魔法には効果的なんだが――。
「そうそう、こんな大津波みたいな……ってヤベッ!」
周囲を取り囲むようにして出現した大容量の水が、俺を飲み込まんと高波となって押し寄せて来た。水の壁が四方から迫って来る中、俺は冷静にその水を足場として利用し、壁蹴りを駆使してそのまま駆け上がっていく。
十数メートル登ったところで俺がいた空間は水に飲み込まれ、閉ざされてしまう。水はどこかに流れていく様子もなく、その場に留まり続けている。ということは、この水も奴の管理下にあるという事か、もしくはこの空間そのものが水をこういう存在として押しとどめているのか。判断に悩むところだな。
とりあえず、あんな猛攻の前には『空間魔法』の足場じゃ一時しのぎにしかならないし、素直にその水に飛び乗る事にした。『水渡り』がある俺にとっては、足場がせり上がったくらいのものでしかないしな。
『ザバッ!』
水に吞まれた空間から奴が浮上してきた。連続攻撃が軽く躱されたのが気に食わないのか、滅茶苦茶睨みつけてくる。あの圧の後だと、『恐慌の魔眼』程度、恐れるに――。
『ゾワッ!』
嫌な予感が全身を駆け巡った。発信源は……目の前にいる奴ではない! 足元!
「ちっ!」
瞬間的に飛び上がると、俺が先ほどまで立っていた場所が鋭い何かによって貫かれていた。あの場にいたら串刺しにされていたかもしれない。その突起物を目で辿って行くと、その正体は奴の長い尾だった。
それが分かった瞬間、俺は空中で回転し、不安定な状態で技を放つ。
「『閃撃・剛』!」
『ガァンッ!!』
腰が全く乗っていない不安定な一撃では、奴の尻尾を斬り捨てる事は叶わなかった。表面の鱗を削るくらいはできただろうが、痛撃とまではいかないだろう。
『!!』
だが、反撃された事実に相手が驚き、尻尾はすぐさま回収され再び水の中へと潜っていった。改めてその足場代わりにしていた水全体をよく見てみれば、浮上してきていたのは奴の頭部だけであり、身体の大部分は水中に残していたようだ。
顔は『恐慌の魔眼』で視野と思考を占領し、その隙に不意打ちの尻尾攻撃を仕掛ける。中々トリッキーな戦い方をするじゃないか。
「ちょっと舐めてたな」
となると、あの水を足場として活用するのは危険が伴ってくるな。だけど相手に致命傷を負わせるには、しっかりとした足場が無いと不安定な一撃になってしまう。『空間魔法』で作り出した足場は衝撃に弱く、俺が技を放つために全力で踏み込みをすればいともたやすく壊れてしまう。空中とかで放てば先程のように失敗に終わる訳だし、奴の身体に乗り込むのはまた別の危険が出てくる訳だ。
……となると、あの水を活用するしかない訳だ。
「困ったなっとぉ!」
こっちは『思考加速』まで使って考え事をしているというのに、相手は間髪入れずに次の攻撃を仕掛けてくる。そこからは本気を出した『ラルヴァリヴァイアサン』の猛攻をひたすらに耐え凌ぐ時間が続いた。奴の攻撃は水・氷・雷の3種の属性に加え、他にも大量の水を前提とした津波や竜巻、渦潮にブレス、そして忘れた頃に尻尾攻撃や噛みつきなどを織り交ぜ、多種多様な方法で俺を追い詰めようとして来た。
だが、そんな猛攻にも隙間ができ始めた。長時間に及ぶ高威力魔法やスキルの連続使用に、さしものボスも息切れを起こしたのかもしれない。
「チャンス!」
俺は目の前にいる奴の顔面に向かって大きく左足から踏み込もうとした。
だが、そこに足場は無かった。
「っ!?」
『SHAAAAA!!!』
バランスを崩した俺に向かって、氷と雷の槍だけでなく、『サーペントブレス』まで飛んでくる。
俺は即座に左足の下に『空間魔法』で足場を形成し、それを軸に『次元跳躍』を実行。その場から逃げ果せた。
『ドドドドドッ!!!』
『ガガガッ!!』
『バリバリバリッ!!』
俺は咄嗟に奴の背後へと退避したため事なきを得たが、今のは何だったんだ? 確かなのは、俺はものの見事に奴の策略に嵌ったという事だ。俺はこの戦いでいくつかの強力なスキルは封印して、一種の縛りプレイをしていたんだが、まさか切り札の『次元跳躍』を使わされることになるとは。
実に悔しいが、反省は後だ。奴はこのスキルの存在を知らない。俺がその場から消え失せた事に気付くまで、数瞬の余裕があるはずだ。ここでとどめを刺してやる。
「フルブースト!」
『!?』
抑えきれない圧力が全身から放たれた事で、『ラルヴァリヴァイアサン』は一瞬動きを止めた。奴はすぐに水の中に逃げ込もうとするが、逃がしはしない!
「『閃断・灰燼』!!」
青い炎を纏った剣閃が、足元に広がる水場ごと『ラルヴァリヴァイアサン』を両断する。炎は水を沸騰させ、蒸気となって噴き上がり、視界を埋め尽くした。
「うおあっつっ!!」
その蒸気の熱量は『完全耐性【水】』と『完全耐性【炎】』を持っている俺ですら痛みを伴うほどだった。『武技スキル』によって格上げされたせいかもしれない。
そうしている間もレベルアップの通知が無いという事は、奴はまだこの熱湯の中で生きているという事だろう。俺の剣閃は間違いなく奴の頭を両断したし、奴が逃げ込んだ水の塊は今や地獄の釜のように熱されている。長くは保たないはずだが……。
【レベルアップ】
【レベルが34から955に上昇しました】
【管理者の鍵(190)を獲得しました】
「おっ」
どうやら、ようやく死んだらしい。ログと同時に水の塊と蒸気もまた、煙と一緒に消えて行った。大元は奴が生み出した水だもんな。そりゃ消えてくれるか。
しっかしカメといいコイツといい、『古代種』ってのはかなりしぶといらしいな。
「はーっ、疲れた~!」
俺は大の字になって、その場に寝転がった。しばらく動きたくないな……。
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