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ガチャ1036回目:ルミナス伝説

『キュキュ?』

「ほい、『テイム』と」

『キュー!?』


【ルミナスシールをテイムしました】

【名前を付けてください】


 ……そういや、俺が『テイム』する中では、完全に人の言葉を解さないモンスターは、これが初めてか。


「うーん、そのままルミナスで」


【おめでとうございます】

【個体名ルミナスがあなたの配下に加わりました】


「よろしくな、ルミナス」

『キュー? キュキュ、キュー』


 俺と自分との間に繋がりができた事はルミナス自身感知はしているんだろう。けどまあ、初めての感覚に戸惑っているみたいだな。言葉は分からずとも、『テイム』によってその感情は伝わってくる。その辺は初期のイリスと同じだな。

 けど、『テイム』で通じ合えるのは感情までだ。明確な言葉で交流をする事は不可能に近い。アヤネとモル君ですらも、長い付き合いでようやく言葉による会話に近い形での交流ができるようになったのだ。今の俺とイリスみたいな感じで。


『キュキュ』

「アズー」

『はいはい。リリス、いらっしゃい』

『はいっ、おねえさま』


 だけど、ペット同士は違う。彼らはひとまとめに同じ立ち位置となるためか、異種族だろうと関係なく、主人よりももっと直接的に意思の疎通ができるのだ。それでも完全な会話はできないらしいのだが、それもテレパシー能力を持ったリリスが加わった事で問題のほとんどは解決したらしい。


『とりあえずこの子と色々と話をしてあげるから、放してあげて。ミスティとマリーも』

「分かった」


 ちょっと名残惜しそうな2人を引き剥がして、ルミナスを2人に任せる。そして俺は、話がつくまでの間、不安そうな顔をしていたキュビラをめいいっぱい可愛がるのだった。



◇◇◇◇◇◇◇◇



 キュビラを可愛がるにしても、話を待つにしても、水中にずっとい続けるのは息が詰まる感じがしたので、クリスに頼んで水上に床を作ってもらい、そこに岩の地面を差し込んで皆でゆっくりとした時間を過ごしていた。キュビラも数分撫でていると落ち着いたのか、恥ずかしそうにしていたが構わず俺は撫で続けた。

 そうしてルミナスの身体は文字通りぷにぷにで心地良くはあったが、それはキュビラのもふもふとはベクトルが違うものなので、それぞれの良さがあるから心配しなくても良いと、改めて彼女に説明したんだが……どうやら、キュビラはそれとは別に心配になる要素があったらしい。


『向こうの世界のお話になるのですが、『ルミナスシール』は、特定の海域に居を構えずに移動し続ける存在で、各地で様々な伝説や逸話を残している存在なのです』

「ほうほう」

『そのどれもが、彼らがピンチに陥った人々を助けるというもので、比較的安全な海であろうと、魔境とされる一部の高難易度海域であろうと関係なしに姿を現し、困っている人を見つけたら助けてくれるという変わったモンスターなのです。それが同一個体によるものなのか、種族的にそうしているのかは謎に包まれています』

「ふむふむ。……で、それがなんでお役御免に繋がるんだ?」


 どれも心優しいモンスターのお話であって、キュビラが心配する要素は見つからんのだが。


『えっと、その……』

『その話には続きがあって、助けられた人間は老若男女問わず、『ルミナスシール』にメロメロになってしまうってオチよ。そうなったら最後、我が家に帰って来てもその存在が忘れられず、遂には木彫りの『ルミナスシール』の像を自作するに至り、あちこちに飾っては毎日祈りだすほどだと言われているわ』

「アズ、話は終わったのか」


 アズとリリスが即席の地面に上陸し、ルミナスは小さいお手手とあごを地面に乗っけてこちらを見上げていた。ううん、可愛いな。


『ええ。相互理解は終わったわ』

『キュ~!』


 しっかし、なんだその昔の童話みたいなエグいオチは。伝説とか伝承とか以前に、命は助けられても心は囚われてちゃ死んだも同然じゃないか。


「ですが、その話は少しおかしいですね。こちらの冒険者は感謝こそしていましたが、我を忘れるほどメロメロにはなっていませんわ」

「そうですねー。私ももう1度抱きつきたいとは思ってますけど、メロメロかというとそうでもないですね」

「ん。でも1回味わったらやみつき不可避」


 ミスティは睡眠の質向上には欲望丸出しだもんな。


「ミスティは平常運転だとしても、それだと話が違うわよね?」

『そりゃそうよ。この子も他の例に漏れず、弱体化してこっちに来てるんだもの。レベルだって相当下がってるはずよ』

「それは……『誘惑』や『魅了』とかのスキルが消え去ったって意味か?」

『違うわマスター。低レベルの人間は高レベルの人間に対して、絶大な魅力を感じるでしょう? それと同じ事が起きていただけよ。敵意を持つモンスターからはレベル差があるほど絶望を感じるのと同じように、愛情を持って接してくるモンスターからは、レベル差が隔絶しているほど心を奪われるものよ』

「ははーん……」


 高レベルの冒険者はモテるって話はよく聞くけど、それが人間とモンスターとの間でも発生する事があるとは思わなかったな。……いや、待てよ?


「なら俺が発案したサキュバス風俗街って、割とやべーもん作っちゃったんじゃ……」

『その心配は無いわ。彼女達はその道のプロだもの。自分達にハマりすぎないよう加減する事は得意中の得意よ。例えば、レベル差がある相手には直接じゃなくて眠らせてから夢の中で搾り取るとかね』

「そっか。杞憂が過ぎたか」


 やっぱ、向こうの世界でのルールはまだまだ分からない事が多いな。


「ま、とにかくレベル依存の『魅了』程度なら俺に効くわけが無い。キュビラの心配は、問題ない事が証明されたな」

『マスター様の寵愛を疑うなんて……反省しています』

『ま、キュビラが『ルミナスシール』の逸話の真実を知らないのは無理ないわ。あんたはタマモの傍にずっといたんだもの。あたしも、魔王の仕事でいろんな国を訪問したからこそ知れた話だしね』

『アズ様……。ありがとうございます』


 アズが慈愛に満ちた表情でキュビラを抱きしめていた。

 仲良きことは美しきかな。


『キュ~♪』


 そんな2人をルミナスは楽しそうに見つめていたのだった。

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