ガチャ1035回目:純白の輝き
『キュー♪』
楽しげに海流を泳ぐ白いモンスター。あれがメダルの示す先で間違いはない!
氷の巨腕を持つ手に力を込めつつ、その存在を注視した。
*****
名前:ルミナスシール
レベル:480
腕力:3000
器用:5400
頑丈:5000
俊敏:6000
魔力:∞
知力:5000
運:なし
【Aスキル】隠形Ⅴ、気配断絶Ⅴ、認識阻害Ⅴ、水泳LvMAX、水の鉄壁Ⅹ
【Mスキル】念動力LvMAX、水魔法LvMAX、泡魔法LvMAX、海魔法LvMAX、歌魔法LvMAX、濁流操作LvMAX、水の鎧Ⅴ、魔力超回復LvMAX
★【Eスキル】ぷにぷにアーマーⅩ、海流生成LvMAX
装備:なし
ドロップ:なし
魔煌石:極大
称号:海流の王、大海の救世主
*****
シールはアザラシって意味もあったはずだから、輝くアザラシね。
そのまんまの名前だが、やっぱり海流から感じていたモンスター的なレベル推定は間違いではなかったか。まさかの『称号』まで持ってるし、スキル構成からしてこいつが海流そのものを作ってるのか?
『キュ? キュー!?』
楽しげだったアザラシは行手を阻むように存在する氷の巨腕に驚き、続けて俺達を認識して二度驚いた。
だが、俺たちを認識しても特に敵意や害意を持つ事はなく、むしろ何か感じ取るものがあったのか、器用に激流の中を自在に動いて、こちらに向かって方向転換。そして海流から飛び出してきたのだ。目標は……アズか!
『キュー♪』
「ふっ!」
巨腕を手放し、すぐさまアズとアザラシの間に入り込むが、今の状態で敵意のない相手を迎えるのはよろしくない。なにせ、フルブースト中なのだ。いくら相手が高いステータスを持っているとしても、キャッチするだけで攻撃的な意味を持ってしまう。
だけど全部解いてしまっては相手の突撃に対して無防備になるし、ハーフブースト程度はしておくかな。
『キュキュー!』
「うおっと!」
そうしてアザラシは俺と正面衝突するかのように激突した。というか、アザラシが思いのほかデカくて俺はそのふさふさの胸部に顔を埋もれる結果となったのだが……。しかし、覚悟していた激突によるダメージは無く、むしろ最初に抱いた感想は、キャッチしたそのボディの柔らかさに対する物だった。まるで「むにっ」という擬音が聞こえてきそうなくらいの感触は夢心地というか、抱きしめているだけで幸せになれる抱き枕のような……。
『キュ? キュ~♪』
『ちょっとマスター?』
「……はっ!」
あまりの多幸感に意識が半分飛んでた。
嫁達を抱きしめるのもまた良いものではあるけど、このアザラシの肌触りはなんと言うか次元が違うな。もしかしてこれが『ぷにぷにアーマーⅩ』の効果か? 最初はふざけたスキル名だと思ったが、十二分に驚異的なスキルであることが証明されてしまったな。
『随分と幸せそうな顔してるわね。そんなに心地よかったのかしら?』
『むむむ……。なんだか負けた気分です』
『マスター様、私の尻尾はもうお役御免ですか……?』
「ああいや、そんな事はないぞ? これはちょっと別腹というか、なんというか……。とにかく、触ればわかるから!」
まるで浮気がバレてしまったかのように必死に弁明をしてしまった。
これは浮気になるのか? いやでも、自分のペットですらない野良のモンスターに手を出して恍惚としてたんだから、そりゃ浮気ではあるか……?
「……ん。やばい。私もこれ、枕にしたい」
「ふわ~、柔らかいですね~」
『キュ~♪』
俺に倣うように、ミスティとマリーがアザラシを左右から抱きしめた。
そうする事で改めてこいつのデカさが分かるな。俺が正面から抱き上げてる状態なので、アザラシはほぼ直立しているような格好なんだが、それでも2人が左右から抱き着くくらいには胴回りに余裕があったのだ。
遠目で見たときは米粒みたいなサイズ感だったのに、目の前に来るととんでもないデカさだな。まあどんなにデカくても顔つきは温和なアザラシそのものだし、可愛らしさは維持できてるんだからすごい。
「それにしても、人懐っこいモンスターね。ショウタが『テイム』すらしてないのに、全然敵意を向けてこないわ」
「クリス様からお聞きした噂話は、本当だったようですね」
「ん?」
嫁達は、こいつの事を知ってたのか?
ってことは……。
「もしかして、ネタバレ防止に黙っててくれた?」
「はい」
「なら、海流に流されても助かった冒険者達って……」
「はい。この子に助けてもらったそうですわ」
「へぇ、『称号』通りなんだな」
そこで改めて俺は、彼女達にこのアザラシに視えたステータスをすべて説明した。
しかし、この人間大好きなアザラシでも助けられなかった冒険者がそれなりにいたのは……まあ仕方のない事だろうな。なんせ、どんなに速く動こうともこいつは1体しかいないんだ。海流に流されて溺れた連中が助けられるまでに、コイツが辿りつけなかった事もあるだろうし、『運』が悪いと海流の外側に投げ出されてあの巨大なレア連中に襲われた奴らもいたかもしれない。
「ですが、この子が海流から出てくる事は今まで聞いた事がありませんわ」
「それは多分、こいつのおかげだろ」
『キュ~!!』
懐から2枚目のメダルを取り出すと、アザラシが喜びの声を上げた。
『キュ、キュ、キュ!』
アザラシは何か言いたげにパタパタと小さい手を動かした。
何言ってるのか分からんが、可愛い事は確かだ。
『キュキュ~!』
「流石の俺でも何言ってるかさっぱりだ。アズ、分かる?」
『もう、マスター? この子はマスターのペットじゃないからわかんないわよ』
おっと、そうだった。
「じゃあ、『テイム』……しちゃってもいいかな?」
『良いんじゃない?』
『同じペットなら、まだマシです……!』
『マスター様、たまには私の事も思い出してくださいね……?』
「別腹だって言ったろ。そもそも、それ以前にキュビラは俺の嫁だろうが。そんな心配はしなくていい」
『マスター様……♡』
まあ、と言いつつもアザラシは引き続き抱き続けてはいるんだが。でもこれはそう、こいつが逃げ出さないようにするためだ。他意はそんなにない。
「ん。今まで問答無用で『テイム』してたのに、聞いて来るなんて珍しい」
「そうですね。ショウタ様、何か嫌な予感が?」
「いや、そういうのじゃないんだ」
「じゃあショウタは、何を躊躇ってるの?」
『キュ~?』
「いやー、話を聞く限りこのダンジョンのアイドル枠っぽいからさ。勝手に連れ帰るのはどうかなと思って」
「確かにこの子については、人命救助を優先するモンスターとして有名なモンスターですわ。その影響か協会主導でグッズ化されていたりしますし、第四層への階段近くに現れるこの子の写真や映像は高値で販売されていますわ。ですが、遠慮する必要は無いと思います」
「まあクリスが良いならやるか」
『キュキュ~?』
「安全な場所でもぎゅってし放題になりますね~」
さっきからアザラシが不思議そうな声を上げてる。俺達が何を話し合っているのかよくわかってないんだろうな。すまない、今からお前を本当の意味で捕まえる。
読者の皆様へ
この作品が、面白かった!続きが気になる!と思っていただけた方は、
ブックマーク登録や、下にある☆☆☆☆☆を★★★★★へと評価して下さると励みになります。
よろしくお願いします!










