ガチャ992回目:帰還と報告
そうして俺達は、腰を抜かしたベリアルを無理やり立たせ、『666ダンジョン』第一層の入口へとマップの能力で転移。そのまま外へと出た。
時刻は15時頃といったところか。空はまだ明るく、邪気のない清らかで荘厳な空気を取り戻した広場には、多数の人々が集まっていた。
あの通知を聞いて見に来たであろう周辺国の記者団に、支援に来ていた他国の冒険者達。そしてバチカンが誇る『聖者教育局』の冒険者達と、教皇猊下を初めとしたバチカン市国のトップ層だ。
彼らは俺たちを視認すると歓声をあげ、各々が祈りを捧げたり聖印を結んだりと様々だ。ここで『神意のオーラ』全解放したらさぞかし気持ちが良いのだろうが、今回ばかりは俺の理性が機能しているため、その愚行は行われる事は無かった。
「皆様、静粛に」
俺が手を挙げると、マルコ大司教が発言をして場を収め、続く俺の言葉を待ってくれる。
「あ、テレサ。言葉なんだけど……」
土壇場だが、思えばラテン語もフランス語も勉強してなかった事を思い出した。それを聞いた彼女はくすりと笑う。
「ふふ、日本語で大丈夫ですよ。ショウタ様の言葉を理解するために、彼らは皆日本語を理解できるまで学んでおられますから」
「おお、そうなのか」
なんともまあ、ありがたい話だ。
んじゃ、気を取り直してと。
「えー。この度、『666ダンジョン』及び、内部で繋がっていた『601ダンジョン』の攻略が完了しました」
歓声が再び上がるが、手を挙げてそれを止める。
「後日詳細の発表はしますが、『601ダンジョン』にはほぼほぼ無害な住人が住んでいたため、彼らは俺が保護しました。彼らは俺が責任持って連れ帰るつもりです。そして肝心の『666ダンジョン』のボスですが……」
目配せをして、ベリアル、ガラン、ゼルヴィを俺の前に座らせる。
「ここにいる魔王ベリアル。そして側近の魔将軍ガラン、魔闘将ゼルヴィを倒し、屈服させた上で『テイム』しました。暴れる心配はありません。悪魔ってのは結構分かりやすく、実力主義なところがあるみたいなので、実力で黙らせれば言うことを聞いてくれるみたいです。今後はこいつらもうちの戦力として扱います。この街を壊した主な原因でもありますし、思うところがある人もいらっしゃるかと思いますが、こいつらは責任持って俺が飼うつもりですので、あしからず」
反論はさせないつもりで宣言したのだが、皆我慢して飲み込んでくれているようだ。暴動になるようなら『神意のオーラ』全解放もやむなしと考えていたのだが、そうならなくて一安心だ。
まあ、ベリアルの片腕がなくなっていて、クリスがそれを持っているのが目についたのかもな。傷口も凍ってる以上目を引くだろうし、その事実だけでもそれなりの効果はあったということだろう。
そう思っていると、テレサが俺の前へと進んでこちらへと振り返る。続けて教皇猊下を初めとしたバチカン市国のトップ層もテレサの左右に並んだ。
「ショウタ様、この度は私達の呼び掛けに応え、ダンジョンの攻略をして頂き、本当にありがとうございました」
テレサが頭を下げ、他の人達や、周囲を囲んでいた信徒達も頭を下げた。
「どういたしまして」
気の利いた事は言えなかったが、それでも観客達からは歓声が湧き、フラッシュが焚かれる。そんな空気の中、俺は彼らの頭を上げさせ、全員と順番に握手をしていく。そして最後にテレサを抱き締め、キスする事で締めとした。
「ショウタ様、これからどうなさいますか? 歓待の準備はできているそうですが……」
「んー……。どうした方がいい? 俺としては帰ろっかなーって思ってたんだけど」
嫁達もそうだけど、家では嫁達が首を長くして待っててくれてるっぽいしな。
「ふふ、では帰りましょう。我が家に」
「と言うわけで帰ります。お邪魔しました」
「もう帰られるのですか?」
大司教様達が名残惜しそうな顔をしていた。まあ歓待したい気持ちは理解できるけど、俺にも事情があるからな。
「すみません、うちの妻達の出産予定日が近付いていまして……」
「そうなのですか!?」
「そのような状況で支援に来てくれていたとは……!」
「すぐに帰りの便の手配をします!」
「ああ、ご心配なく。ダンジョン支配による能力で、支配ダンジョン間を移動できますので、そっちで帰ります」
そうして彼らに見送られながら、俺達は再びダンジョンの内部へと戻って行き、目的の面々と合流。そのままアズの能力で『バトルアリーナ』へ転移し、そのまま我が家へとワープしたのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇
「「「「「おかえりなさい」」」」」
「ただいまー」
時差7時間。15時過ぎに向こうを発ったため、こちらの時間としては22時半といったところか。リビングでは嫁達が待っていてくれたので、順番にハグしていく。
「いつから待っててくれたの?」
「んー。30分くらい前かな?」
「ご主人様であれば歓待を受けずに直帰してくると踏んでいたので。ですが少し読み違えてしまったようですね」
「あー。バチカンの人たちに向けて攻略宣言とか諸々してたからかな」
「くっ、勘が鈍りましたか……」
「そうよね。ショウ君なら、アフターケアもバッチリしてくれるわよね」
「旦那様の帰りが楽しみすぎて、忘れていましたわ」
「やっぱりショウタさんの側だと安心できます……。本当におかえりなさい」
「ごめんなマキ、寂しい思いさせて」
「良いんです。無事に帰ってきてくれた。それだけで十分です」
甘えてくるマキを抱きしめると、他の子達もくっ付いてくる。今回留守番組の中で、サクヤさんだけはちょっと遠慮しているようで、少し離れたところで見守ってくれていた。
でもすっごくニコニコしているぞ? なんだろう、胸騒ぎがするぞ……?
「それでショウタ君、あそこにいる可愛い子は誰かな??」
「え??」
「外にもたくさんいらっしゃるような気配を感じます」
「旦那様、また何人も作って来たんですの?」
伝達、されてない!?
そう思って連絡役のアイラを見ると、彼女はくすりと笑った。
「増えたという報告は受けましたが、詳細は伺っておりません。責任は全てご主人様にとの事でしたので。それと外の者達については、中身を見ずにサクヤ様にお渡ししたので、その件も含めて私達への説得をお願いしますね?」
マジかよ。いや別に良いけどさ。
そうして俺はリリスやサキュバス達の話を懇切丁寧に説明して、彼女達からの許しを得るために頑張った。結局、この件では誰一人として怒る事はなかったのだが、ジェラシーでより一層甘えて来てくれたので、俺も全力でお返しをした。
……ちなみにサキュバス達よりも更に外側で放置させられていたベリアル達のことは、翌日になるまで完璧に忘れていたのだった。
アンケート結果が出ました。投票数81票により、3人の海外最難関ダンジョンに決定しました。
https://x.com/hiyuu_niyna/status/1962191469680455798
★それに続けて次回攻略先ダンジョンのアンケートを開始しました!★
★奮ってご参加ください!★
https://x.com/hiyuu_niyna/status/1964740502923997647