ガチャ973回目:サキュバスの居住区
俺達は飛翔するリリスを追って見知らぬ第五層を進み続けた。
ここは、どうやら満天の星空だけでなく全体的に墓地になっているようで、アンデッド系統が蠢く階層のようだった。上は綺麗だけど下は汚いっていう。
そしてリリスはモンスターが出現しないルートを完璧に把握しているようで、1度も雑魚に絡まれる事無く進む事ができていた。
「リリスちゃんの妨害が無ければ、この階層が一番私達が力を発揮できる場所だった可能性がありますね」
「アンデッドですからね~。フランスの部隊とバチカンの聖者教育局のチームにかかれば、いくらでも時間が稼げそうな雰囲気がありますよ~」
「だろうな。それを恐れて、人の精神を左右する力を持つリリスがこの階層に配置されたのかもしれん」
「ところで、テレサに効かなかったのは何か理由があるの?」
「何故でしょうね?」
「おーいリリス」
『はい?』
「うちのテレサにお前の能力が効かなかったのは何でだ?」
『えっと……? あ、2年前に来たおねえさんですか!』
気付いてなかったのか。
『あの時のおねえさんからは、まるで欲が感じられなかったからですっ。無いものを見せたり、無いものを増幅させることはいくらサキュバスでも無理ですもんっ』
「確かに昔のテレサは無私無欲の化身でしたからねー」
「うう、恥ずかしいです」
「ん。じゃあ今は?」
『今なら簡単ですよ。おにいさんやおねえさん達と、いつまでも一緒にいたいって欲が――』
「リリス、その辺にしてやれ」
テレサは顔を真っ赤に火照らせてしまった。まあ、家族を持った結果、甘さができちゃったと。それは仕方がないし、誰もが抱える当たり前の気持ちだろう。
茶化すなんて可哀想だ。
『この先にゲートがありますっ!』
そうして案内されたのは、何の変哲もない墓石だったが、ここだけはモンスターがうろついていないようだった。
『解析の魔眼』で視てみれば、確かに墓石の前に魔力の歪みのようなものを感じる。そこを通れば601に到着するんだろう。
ただまあ、全員で乗り込むべきではない。まずは、リリスと……。
「アズは、この先にいるサキュバス達と面識はあるか?」
『リリスの直属私兵よね?』
『はい、そうです! それと、お姉様の街から来た者達もいます!』
『なら問題ないわ。みーんな、あたしに懐いてくれてたから』
まあ『色欲』持ってて懐かれない訳ないよな。
「んじゃ、リリスとアズ、それからキュビラとタマモ、俺の5人で乗り込もう。皆はそれから5分後に入って来てくれ」
「オッケー」
「お気を付けて」
『ゴー』
『ポポポ』
「いってらっしゃいませ」
「ショウタ様、ご武運を」
「ん。1時間後とかじゃなくて平気?」
「俺はそこまで見境なくないぞ?」
「ん、冗談。気をつけてね」
『キュイー』
『プルプル』
『♪』
◇◇◇◇◇◇◇◇
墓場のゲートを潜ると、そこはもう普通の街並みだった。違う点があるとすれば、それは住人全員が空を自由に飛び交っている点か。
リリスも飛んでたし、サキュバスはデフォルトで飛行能力があるのかもな。
『みんなー! 集まってー!』
リリスが呼びかけると、四方八方からサキュバス達が集まって来た。
ううん、見た目がまんなサキュバスって感じの人はそう多くはない感じだな。ハイレグだったりバニーだったり、妙に際どい格好をしてる者も居れば、普通の町娘に扮した者、都会の今時女子みたいな者もいる。ここはイメクラかなにかか?
けど、その気配は一般人とはかけ離れている。全員、レベル200前後はありそうだな。流石に街中に出る時は気配を隠しているんだろうけど、ここは自分達の街だからな。隠す必要は無いんだろう。
やっぱ、向こうの住人ってだけで即戦力になり得る強さをしてるよな。
「リリス様、どうしたのー?」
「侵入者の撃退終わったー?」
「……あれ、そこにいるのって、人間の男??」
「それに、狐族に……えっ!?」
「その立派なお胸に溢れ出る魔気……も、もしかして、アスモデウス様ですか!?」
「え、嘘。アスモデウス様!?」
『やっほー、皆。元気してた?』
「キャー、アスモデウス様よ!!」
「アスモデウスさまー!」
黄色い声を皮切りに、街中に散らばっていたサキュバス達がやってきて、あっという間に囲まれてしまった。50人くらいいるって話だったし、これだけのサキュバスに囲まれるとなんか落ち着かないな。彼女達の色香も凄いが、サキュバスの特性だろうか? 常人なら脳が焼かれるほどの蕩けそうな香りが、辺り一帯に充満している。
しっかし、彼女達の様子からして、本当にアズは慕われてたんだな。ここにいるのはリリスの配下だけじゃなくて、元アズの国の住人もいるって話だったし、これは本当にサキュバス専用の風俗街を作るのが確定じみて来たな。
けど、50人もいれば全てのサキュバスがアズが見える位置に陣取れるわけもなく、あぶれた者達が他の珍客……俺やキュビラ、タマモへと流れるのは当然の流れというもので……。
「え? 人間?」
「狐族もいるわよ?」
「リリス様が連れて来たのよね? けど……」
「ええ。この人間の男から、とっても芳醇な精気の香りがするわ……!」
「なんて力強い精気……!」
「とっても美味しそう……」
そんな風に舌舐めずりされていると、彼女達の感情が伝播したのか、アズに夢中になっていた子達も俺に意識を傾け始めた。今はアズが近くにいるから冷静さを保ってはいるけど、彼女がいなかったらたちまちに襲われていたかもしれないな。
それを理解してか、アズも楽しそうにニマニマしている。命の危険が無いのなら体験してみたくもない事も無いのだが、今は忙しいからな。
「666のカウントダウンはそれほど余裕がある訳じゃないんだ。彼女達と遊んでる暇はないぞ」
『は~い、マスター♪』
『マスター!?』
さて、アズとリリスに説明をしてもらうとするか。
そろそろ後続の嫁達も突入してくる頃合いだしな。
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