ガチャ961回目:ロストコントロール
「イリス、食って良いぞ」
『プル~!!』
イリスは待ってましたと言わんばかりに大興奮し、そのままコンドルに飛び掛かった。だが、向こうも一応はレアモンスター。ハイテンションのイリスに驚いたのか、逃げるようにその場から飛び上がってしまった。
『プル~!』
『グァー!』
そしてコンドルの最優先討伐対象になったのか、空中からイリスに向けて魔法が降り注ぐが、イリスも魔法で対抗する。魔法の威力だけで判断してもイリスの方が圧倒的に格上であるため、急所に当たろうものなら一撃撃破もありうる。その為、イリスは倒しきらないよう『雷鳴魔法』で翼だけを狙って攻撃するようだ。
『プルル~!』
『グ、グァー!』
この戦いは普段あまり魔法を使わないイリスが、魔法で狙った場所を攻撃する為のコツさえ掴めば決着がつく内容だった。コンドルは必死に逃げ回りつつ攻撃していたが、奴の攻撃程度イリスにとっては避けるまでもないそよ風のようなものだった。その為イリスは動くことなく固定砲台となって、ひたすらに魔法を撃ち続けていさえすれば、後は勝手に成果が上から落ちてくる。
そうして何度かの魔法の応酬の末、決着は早々に訪れた。
『グ、グァ……!』
『プルプル!』
そうして両翼を雷撃に貫かれ、地に落ちた『バロックコンドル』が最後に見た光景は、自分を捕食するために広がった虹色の粘液だっただろう。
「南無三」
合掌。
【レベルアップ】
【レベルが152から155に上昇しました】
『プルル~』
肉を食べられて満足したらしく、イリスはアイテムがドロップする前に素早く煙から離れた。……そういや、レアⅡに変化するタイプのモンスターをイリスがモシャモシャしてたらどうなるんだろうか? 出現した瞬間イリスの体内から始まるとかだったら、もう絶望しかないな。
「ショウタ様、回収終わりましたわ」
「ご苦労様。んで、本命の宝箱は……」
名称:第二の罪(表)
品格:なし
種類:宝箱
説明:第二の罪が封じられた宝箱。開けることはできない。
「今までと変わらずと」
結局なんなんだろうなぁ、これ。
宝箱って名称である以上、中には宝があってしかるべきなんだが……。まあでも、誰にとっての宝であるかによって、中身も千差万別ではあるか。罪って書いてる以上碌なもんではないだろうし、今までの傾向からしてトリガーアイテムなのかな。
「さて、そんじゃここで今日は終わりにしようか。でもその前に、テレサ」
「はいっ!」
【ダンジョンNo.666】
【残り:020:18:45】
追加で更に700と、レアモンスター2体の討伐で8時間増えたか。移動時間も加味すれば9時間ほどか?
「十分だな」
「はいっ、地上に報告をしておきます!」
「ああ、よろしく。あ、今の地上時間は?」
「23時過ぎですね~」
この階層もなんだかんだで3時間ほどいたのか。
さて、流石に腹も減ったし眠気も強い。夜はほどほどにしつつ、今日は寝るとしますかね。
◇◇◇◇◇◇◇◇
翌朝、俺は伸びをしていた。背後では嫁達が拠点を片付けている。
「ふぅ~……テレサ。今、現地時間で何時?」
「お昼の1時ですね……」
「残り時間は?」
「6時間ほどです……」
「いやー、あはは……」
「す、すみません」
「ん。ごめん……」
『♪』
『はうぅ……』
『昨晩は皆ケダモノだったのじゃ~』
夜については時間制限がある以上、ほどほどにしようと思っていたんだが……。皆がいつも以上に求めて来てしまったのだ。
このダンジョンの影響を受けた事で、皆の自制心が制御不能に陥っていた可能性はあるが、こうなった原因は俺にもあったからな。最初の4人が出産間近、かつここにいるメンバーのほとんどはつい最近結婚式を挙げたばかりだ。そして俺のダンジョン探索に毎回着いて来てくれているミスティがまだである事もあって、俺自身そろそろ良いかなと思っていたのもあった。
それでつい先日、ミスティ含め他のまだの子達との間にも「子供が欲しいな」なんて言ったもんだから、皆その気になっていた訳で。そんな状況下で、自制心の制御が吹き飛ぶこのダンジョンの中で寝泊まりしたらどうなるかなんて、言うまでも無かったわけだ。
特に、このメンバーの中では俺との繋がりが一番長いミスティが、昨日張り切っていた中でも一際求めて来てくれたのだった。
「まあ怒ってはいないよ。この件は俺の読みが甘かったのが問題だし、時間もまだ残ってるからな。それに皆の子供が欲しいって言った気持ちは嘘じゃないし、今もそう思ってる」
そう告げると、皆嬉しそうに微笑んだ。
普段ならダンジョン内ではキリっとしてる子達ですらコレなのだ。このダンジョンの影響は案外馬鹿にできない。
「奥に入れば甘い言葉で誘惑されるとテレサは言ってたけど、スタンピード間近になった影響で、ダンジョンの影響下にいると問答無用で自制心が効かなくなるんだろうな」
『そんな感じがするわね』
「ん……」
「それでもまあ、怠惰に過ごすよりもちゃんと戦う意志を持って布団から出て来たんだから、ミスティに怒るところはないぞ」
「あはは、確かにそうね」
『この子、隙あらば寝てるものね♪』
「ん。反省、必要ない?」
「ああ。必要ない」
「ん、わかった。じゃあ、今日もいっぱいイチャイチャできるように、時間を稼ぐね!」
「……その意気だが、今晩もやるの?」
「ん。できるまでは毎日したい」
自制心が吹き飛んでても、結局それはつまるところ本心であることに変わりはない訳で。それが彼女の望みだというのなら、甘んじて受け入れよう。ついでに、今からでもオーク肉を多めに注文しておくか。
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