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ガチャ007回目:紹介状の効果

 今日は朝早くからダンジョン協会第525支部へとやってきていた。

 昨日は様子見の為昼過ぎに到着だったけど、昨日話していた相談事もあって早めに顔を出したのだ。


「さて、この時間ならもう出勤してるって話だったけど……」


 マキさんを探して協会内を見回す。平日の朝にも関わらず、それなりの数の冒険者が来ているらしい。ダンジョン協会第777支部とは雲泥の差だ。

 両支部の違いを改めて嚙み締めつつウロウロしていると、受付嬢がいるカウンター付近で人混みが出来ているのを見つけた。こんなに朝早くから査定をしているのだろうかと様子見をしたが、何やら様子がおかしい。


「聞いてくれよ、昨日3層のモンスターを俺だけで50匹も倒したんだぜ」

「ハッ、俺なんて『小魔石』を昨日だけで15個も取ったんだ。どうだい、俺、将来有望だと思うんだけど」

「何言ってるんだ、僕は昨日ー」

「俺なんて昨日はー」


 聞き耳を立てみれば、あの人達は査定とは全く異なる事で集まっているようだった。

 昨日『紹介状』の仕組みについて、マキさんから事細かに説明を受けた。アキさん、そういうの全く説明してくれなかったから、本当に助かった。


 まず『紹介状』は、発行した受付嬢側と、発行してもらった冒険者側。双方にメリットがある。

 まず冒険者側である俺は、既に恩恵にあやかって優遇措置をいくつか体験させてもらっている。その内の1つが、受付嬢の専属化だ。その冒険者がいない時は通常業務に戻るが、居るときは基本独り占めが出来る。


 その為、綺麗で可愛く、なおかつ『紹介状』を未発行の受付嬢には、自己アピールするために冒険者が殺到するらしい。

 今、目の前で起きてる人混みは、正にその現場らしい。


 冒険者なら獲物を狩って、現物を持ってアピールしろよと思わなくもないが、どうやらこの騒ぎは朝と夜、特定の時間帯限定らしい。

 受付嬢である彼女達も人間だ。そのため昼勤と夜勤が存在し、その人員が交代するタイミングが一番混雑しない時間らしく、こんな風に冒険者が少ない時はアピール合戦が始まるそうだ。

 『紹介状』システムが出た当初は、査定の最中でもアピールが起きてしまい混雑の原因になったようだけど、今ではこの様な暗黙のルールが浸透している。他の支部ではまた違ったりするようだけど……まあ、うちの(第777)支部ではまず起きない光景だな。


 それにしても、専属か……。

 確かに、綺麗なお姉さんに出迎えてもらったり、おかえりと言ってもらったり。あとは色々とサポートしてもらいたい気持ちは分からないでもない。俺も男だ。憧れはある。

 けど俺の場合は、どうしようもなくアキさんなんだけど。


 ……いや、アキさんも美人だとは思う。本人にそれを伝えるのはなんだか癪だし、絶対揶揄われるから言わないけど。それにあの支部の冒険者は俺だけだった。だから、改めて専属なんて真似をしなくても、あの人はほとんど俺専属と言っても過言ではなかったと思う。


「長年お世話になったから、餞別みたいなものなのかも」


 そんな事を考えつつ、アピール合戦を遠くから眺めていると、不意に見知った顔と目が合った。

 なるほど、探しても見つからない訳だ。俺は群れをかき分けて、その人の前に立つ。


「マキさん、おはようございます」

「あ、ショウタさん! おはようございます。奥の会議室へご案内しますね!」


 困っているようだったし、マキさんには助け舟を出す事にした。

 内心辟易していたんだろう。ポーカーフェイスで対応していたようだが、声をかけた瞬間眩しい笑顔を頂戴した。


 マキさんが俺を優先して席を外すことが出来た理由としては、『紹介状』第二のメリットが関係している。『紹介状』はその名の通り、基本的に他の協会へと派遣することを前提としたシステムだ。けれど、せっかく専属が出来たのに、他の支部へ行ってしまっては恩恵にあやかれない。

 その為、『紹介状』には専属受付嬢の()()()となる、別の受付嬢が指名されている事がある。そこに名前を記された受付嬢は、本来の受付嬢がするべき専属業務を代行する必要があるのだ。


 その受付嬢が、別の人に『紹介状』を贈るまでの仮契約である関係上、マキさんの扱いは『専属代理人』。その為、専属受付嬢としての権利は有しつつも、彼らも必死にアピールが続けられるようだ。


「ちっ、邪魔しやがって」

「スライムハンターめ」


 そんなマキさんは、アキさんに負けず劣らずの美人だ。……というか俺の個人的な好みで言えば、マキさんの方が好みだ。

 恐らくこの支部には、彼女狙いの冒険者が多数いるのだろう。彼女を連れて行く際、やっかみのような舌打ちや文句が多数耳に届いたが、恩人の助けになるのならこの程度痛くもかゆくもなかった。



◇◇◇◇◇◇◇◇



 座席に着いたとたん、マキさんは頭を下げてきた。


「ショウタさん、ありがとうございました。おかげで助かりました」

「頭を上げてください、マキさんには昨日一日だけでも随分とお世話になりましたし、代理とはいえ俺の専属ですからね。困ってたら助けますよ。それに、昨日は査定だけじゃなくお礼のつもりだったオークションの手配までしてもらったし、感謝してるんです。これからも迷惑をかけちゃうと思いますが、よろしくお願いします」

「迷惑だなんてそんな。むしろ1日目であんな大きな恩恵にあやかってしまって、こちらこそ申し訳ない気持ちでいっぱいです」


 マキさんは謙虚だなぁ。


「そう言えばさっきのアレって、結構多いんですか?」

「えっと……あはは。そうですね。毎朝、とまでは言いませんが平日の朝は大体あんな感じですよ。逆に土日祝日は平和そのものです。学生さん達が多く来るので、朝から混みあいますから」

「そうなんですね……。だったらいっそのこと、マキさんも俺の専属になります? なんて」

「えっ、良いんですか!?」

「……えっ?」


 軽い冗談のつもりだったんだけど、乗り気!?

読者の皆様へ


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今日はランキングに乗って筆が乗ったので合計3話行きます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 粋がった所でこいつ等も所詮初心者ダンジョンに居るのが草。 スライムハンターもゴブリンハンターも目糞鼻糞じゃんかっつうw
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