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LIVE ANOTHER DAY ~僕達の物語~  作者: SAKURA
1章 犬友達は頑張る
9/26

現代人達は召喚される 9


 アサヒを先頭に、歩とヨーコが山道を歩いていた。


 歩は肩に幸姫の母の形見のクワを担いでいる。


 もちろんはなちゃんも一緒だ。


はなちゃんは真っ白な体を太陽の光で輝かせながらルンルンとご機嫌な様子で歩いている。


 今日はライも一緒だ。


 彼には珍しくヤトの元を離れ、この一行に参加している。


 鋭い目つきで辺りを伺い、しきりに鼻をヒクヒクとさせている様は、まるでボディーガードのようである。


 ゴン太は山道がキツイであろうとのことで屋敷でお留守番だ。


 ゴン太だけではない。


 ヤト、勇太、ソラ、彩、小梅さんも屋敷で幸姫の相手をしている。


「歩、ヨーコ。どうか領民のためにその力を奮って欲しいのじゃ」

 

 と幸姫は可愛らし犬耳の生えた頭を何度もペコペコと下げた。


 すぐにヨーコがそれをやめさせ「いいよ」と素っ気なく答えた。


 態度はサッパリしたものだったが、その手は幸姫の頭の上に置かれ、優しく撫でていた。


「私が村まで案内しよう」


 アサヒが案内役を買って出てくれた。

 

ー 領民がいるって言っていたもんな・・・。確かにヨーコちゃんのスキルは凄いし、お腹を空かせているならば役に立ってあげたいものな・・・。


 などと歩が思っていると、ヨーコが幸姫の手を引いた。


「ほらっ・・・一緒に行こう・・・」


 そう声をかけられても、幸姫はフルフルと首を横に振る。


「妾はいいのじゃ。アサヒと共に行ってあげて欲しいのじゃ」

「どうして?皆の喜ぶ顔を一緒に見ようよ?」

「いいのじゃ・・・。妾は行かなくていいのじゃ・・・」


 悲しそうに、しかしキッパリとヨーコの誘いを断った。


 その意思は固いようで、じいっとヨーコの顔を見つめていた。


 ヨーコには何故、幸姫が領民に会いに行くのを拒むのか理由が分からなかった。


 昨夜から幸姫は言葉の端々に領民を気遣う素振りを見せていたし、ヨーコのスキルで丸まると太ったキュウリが出来た時なんて、涙を浮かべながら『これで領民が餓えなくてすむ・・・』と喜んでいたではないか。


 それほどまでに民の身を案じている幸姫ならば、彼女自身が一番、民の喜ぶ顔がみたいはずなのに・・・。


ー 何か理由があるのかもしれない・・・。


 ヨーコは考えを切り替えた。


 幸姫は嘘を付いていない。


 そのことは、人の嘘に敏感な彼女にはすぐに察知できた。


 しかし民を心配する一方で、民には会いたくないという、相反した感情の元凶がなんなのか、いくら考えても分からなかった。


「ヨーコ殿・・・どうか・・・」


 アサヒが幸姫と手を繋ぐヨーコに頭を下げた。


「あら?幸姫様が行かないのでしたら、私もここでお留守番しようかしら?」


 ヤトが幸姫の両肩に手を添えた。


「え~さっちゃんが行かないんだったら私も待ってる」

「にゃわん」


 彩と小梅さんもヤトに続いた。


 このペアは気が付けば幸姫の側にいる。


 彩は一人っ子だし、妹が出来たみたいで嬉しいのだろう。


 小梅さんはなんだか犬達のまとめ役みたいになってるし、なかなか順応度が高い。


「ヨーコさんが成長促進のスキルをかけてくれた種も残っているし、私達は畑で野菜を作っていますわ」

「そうじゃな。妾ももっともっと野菜を育てたいのじゃ」

「あれ面白かった~。私、あんなに野菜が早く育つの初めてみた~」

「にゃわんにゃわん」


 村に行き豊穣と成長促進のスキルを使う歩、ヨーコ、アサヒ。


 そして屋敷で幸姫と共に野菜を育てるヤトに彩。


 どうやらグループ分けが出来たようだ。


 その際、ヤトがライに何やら目配せをし、ライは心得たとばかりに歩のグループに加わった。


「勇太はどうする?」

「歩くん僕はね・・・」

「うん」

「眠たいからここで待ってる」

「う・・・うん・・・そうか・・・」


 勇太はまだ寝足りないらしい。



☆彡☆彡☆彡



 両親、そして多くの家臣達が死んだ時の幸姫の落ち込みようは筆舌に尽くしがたいものがあった。


 父と母の服を抱き寄せ声を押し殺して泣く幸姫の姿を、アサヒは未だに覚えている。


 当時の幸姫はまだ3歳で、本来ならば両親の庇護下にいなければならない。


 が・・・父も母も死んでしまった・・・。


 幸姫は屋敷から一歩も出ることなく、日がな泣き暮れていた。


 そんな生活が一年も続いた。


『このままではダメだ・・・』アサヒはそう思うも、どうやって幸姫を元気づければ良いのか分からず、ほとほと困り果てていた。


 アサヒにしたって、幸姫と共に泣き暮れたい気持ちで一杯だった。


 しかし、この美芳の地を幸姫に託して死んでいった領主様の思いと、年長の自分が何とかしなければという決意が、なんとかアサヒを支えていた。


 アサヒの他に、幸姫には年若い三人の家臣が残されていたが、アサヒ以外はいずれも、神の力の恩恵を失った美芳の地に見切りを付けて出て行った。


 家臣達だけではない。多くの領民達も、美芳の地を捨てて出て行っていると聞く。


『こんなものなのか・・・。誰もがアルク様のご恩を忘れ、幼い幸姫様を見捨てて去ってしまうのか・・・』アサヒは悔しさと歯痒さでどうにかなってしまいそうだった。


「幸姫様、村の子供達と遊んでみませんか?」


 その提案は、同じ年頃の子供と遊べば少しは気が晴れるであろうとの発想からであったが、アサヒには他に幸姫を慰める方法が見つからなかった。


 まだ領主であるアルクが健在だった頃、よく幸姫を大きな肩に乗せて村に遊びに行っていたし、そこでは村の子供達と仲良く遊んでいた。


 アサヒはその記憶に縋った。


「・・・。外に出とうない・・・」


 涙で顔をクシャクシャにした幸姫が、消え入るような声で答える。


「どうか・・・このアサヒのお願いです・・・」


 俯く幸姫を半ば強引に抱き抱え、アサヒは山道を降りるのだった。

 

ー どうか・・・どうか少しでも元気を取り戻して下さい。


 その想いと共に・・・。 


 村落では、怒号が飛び交っていた。

 

 中央の井戸に大人達が集まり、互いに怒鳴り合っている。


 見れば数台の荷馬車と、数家族が旅姿で村を出ようとしていた。


 それを止めるように道を塞ぐ者達との間で、激しい言葉のやり取りが繰り広げられていた。


「犬神様のご恩を忘れやがってッ!美芳の地を俺達が捨ててしまったら幼い幸姫様はどうなるんだッ!この薄情者共ッ!!」


 荷馬車の前に壁のように立ち塞がり、血気盛んに吠える男が居た。


 その男はヤトと出会った村の少年彦助の父、弥助であった。


 彼は牙を剥き、目を血走らせ村を捨てようとしている家族に喰ってかかる。


 美芳では弥助のように犬神の恩を忘れず、幸姫のためにこの地を盛り上げようとする勢力と、村を捨てて新天地を目指す勢力とに二分していた。


 残念ながら、後者の方が圧倒的に数が多い。


 かつては千を超す犬人族が暮らしていた美芳の地も、犬神アルクが死んでからの僅か一年で、その数を二百にまで減らしていた。


 理由は簡単であった。


 以前は溢れんばかりの緑と、神名川からの豊かな水によって栄えていたこの地に、終焉とも言える事態が起こっていた。


 緑は枯れ、川は細り、大地はヒビ割れ、穀物も野菜も育たない不毛な地へと変貌してしまったのだ。


 それはひとえに、神の力で美芳の地に恩恵を与えていたアルクが死んでしまったことに起因する。


 どれだけ忠義があろうと、食べ物がなければ人は生きていけない。


 子を持つ親達は、すすんで美芳を捨てた。


「弥助・・・許してくれ・・・ここにいては皆、餓えて死んでしまうのだ・・・」


 荷馬車を率いる家族の長が、悲痛な面持ちで答えた。


 村を捨てようとしている家族達の誰もがやせ細り、母親に抱かれた赤子の視線は虚空を彷徨っていた。


 母親に十分な栄養を与えられないから、母乳が出ずに赤子が死んでしまう・・・。


 そういった事態は、ここ一年の間で何度もあったし、誰もが餓えていた。


「弥助さん・・・見て下さい私の赤子を・・・。手もこんなにガリガリで・・・。他の子供だってそうです・・・。満足にご飯も食べられずに・・・」


 赤子を抱いた母親が涙ながらに訴える。


 その側で不安そうに母の服を握る子供達は、枯れ木のように痩せ細っていた。


 弥助は息を呑んだ。


 返す言葉が見つからなかったのだ。


「幸姫様が悪いんだッ!!」


 別の家長が叫んだ。


「幸姫様に力があれば美芳は豊なままだったッ!幸姫様に力がないばっかりに俺達はこんなにも苦しい生活をしているんだッ!!」

「幸姫様はまだ四つではないか・・・。力が無いのは当たり前ではないか・・・」

「だったらせめて俺達の食い物ぐらい何とかしろッ!!俺の子供は餓えて死んでいったッ!!まだ二つだったッ!!あの子を返してくれッ!!」

「・・・」


 そんな時だ、子供の泣き声が村に響いた。


 誰もが声のする方に視線を送り、そして絶句した。


 そこには犬耳をペタリと垂れ俯くアサヒと、その胸に抱かれて泣きじゃくる幸姫の姿があった。


 不幸にも、幸姫とアサヒはこの現場に居合わせてしまった。


「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・妾のせいじゃ・・・妾のせいじゃ・・・許してたも・・・許してたも・・・」


 嗚咽と共に何度も謝る幸姫の姿に、誰もかける言葉が見つからなかった。


 ある者は気まずそうに視線をそらし、ある者はただ立ち尽くした。


 アサヒはペコリと一礼のみをすると、泣きじゃくる幸姫を大事そうに抱き抱え、山へと帰って行った。


 その日以来、幸姫は村の人々の前に姿を現さなくなった。



☆彡☆彡☆彡



「私のせいなのだ・・・」


 山道を降りている最中、歩とヨーコは幸姫の過去の話を聞いていた。


 アサヒは悔やむように声を震わせている。


 ヨーコは下を向き、何度も涙を拭っていた。


 そんな彼女を心配するかのように、はなちゃんが「どしたの?」といった表情で足に寄り添っていた。


ー だから幸姫様はあんなに必死だったのか・・・。


 歩は切なさで胸が張り裂けそうだった。


 まだ幼い身で、その出来事はどんなに辛かろうことか、想像もつかない。


 幸姫と初めて出会った大広間で、彼女は寝ていた。


 彩と勇太、それに犬達が近寄った時、幸姫は寝言で『皆、戻ってきたのじゃな』『妾を独りにしないでたも』と言っていた。


 その言葉は、去って行ってしまった家臣達、そして領民へ向けたものだったのだろう・・・。


ー 幼い身で・・・幸姫様は頑張ってきたんだなぁ・・・。


 まだ5歳の少女に負わせる責にしては、重すぎる問題を美芳の地は内包している。


 アサヒが側に居るとはいっても、大体がアサヒもまだ若い。


 そんな二人では背負いきれない問題が、美芳には山ほど散在していた。


ー 僕が・・・僕達が何とかしてあげないと・・・。


 ふと視界に見えて来た村落を眺めながら、歩は固く心に誓うのであった。


 

☆彡☆彡☆彡



 歩達が村落へ足を踏み入れると、村人達は慌ただしく動き回っていた。


 確か住民が百人は住んでいると聞いていたが、幼子までがその小さな体を一生懸命に使ってある仕事に熱中していた。


 ヤトとライが狩ってきた大量の獣の解体作業である。


 それを干し肉に加工したり、塩漬けにしたりと、村は蜂の巣をつついたような騒ぎであった。


ー そうか・・・ヤトさんはこの村で鹿を買ってきたんだな・・・。


 歩はまだ勘違いをしていた。


「アサヒ様ッ!!」


 しばらくその様子を眺めていると、こちらに気付いた村人の一人が駆け寄ってきた。


 アサヒや幸姫と同じく、男の頭には犬耳が乗っかり、腰からは尻尾が生えている。


 彼等は犬人族と呼ばれる種族らしい。


 幸姫やアサヒも犬人族である、と山道を歩いている時に教わった。


 はなちゃんやソラのような普通の犬も存在していて、村の中には数十匹の犬の姿もあった。


 どの犬も尻尾を振りながら駆け回り、中には犬人族の手伝いをしている犬までいた。


「ヤト様とライ様が熊や鹿を狩ってきてくださって・・・村はこの通りの騒ぎです。あっ・・・ライ様、お越しくださったのですね」

 

 村人はライの姿に気付くと丁寧に頭を下げた。


 ライは小山程の大きさの狼の姿から、中型犬の大きさにサイズを変えていたが、村人にはすぐに分かるらしい。


「ワオン」


 とライも応じていた。


ー ・・・?なんだか話が見えないな・・・?


 歩が村人の話に首を傾げていると、アサヒが口を開いた。


「幸姫様の命によってこの者達を連れて来た。少し畑を借りるぞ」

「幸姫様の・・・その方達も新たな家臣様なのでしょうか・・・?」

「ああそうだ。二人とも、途方もない力を持っている」

「途方もない力・・・」


 男はマジマジと歩達を見つめた。


 その視線は決して不快なものではなく、ヤトが獣を狩ってきたように、この二人も自分達に何か恵みを与えてくれるかもしれない、という期待に満ちたものだった。


「アサヒ様・・・」


 近くで歩達の様子を見ていた若い犬人族の女性が話に加わった。


 どこか愛嬌のある顔をした女性は、緊張しているのかしきりに犬耳を動かし、上目遣いでおずおずと口を開いた。


「あの・・・幸姫様はお元気でしょうか・・・?最近はお姿を目にする機会もありませんので・・・。私はそれが心配で心配で・・・」


 今、村に残っている者達は犬神の恩を忘れずに、幼い幸姫のために自らの意思でこの地で暮らすことを決めた。


 幸姫が民の身を案じるのと同様に、この者達もまた幸姫の身を案じていたのだ。


「ありがとう・・・。幸姫様はご健在だ・・・」


 屋敷にはヤトに彩、勇太、それに犬達も居る。


 母親の畑も歩の豊穣のスキルで元の姿を取り戻した。


 きっと今頃はヨーコが成長促進をかけた種を植え、元気に収穫している最中かもしれない。


 アサヒの返答を聞き、若い女性はホッと胸を撫でおろしていた。


 そして歩達は、僅かな野菜が植えられた、荒れた畑へと案内される。



☆彡☆彡☆彡



~ ある日の歩


 はなちゃんの夕方の散歩をしていると、ヤトとライに出会った。


 歩のアパートから歩いて五分程の距離の所に、ベンチの置かれたちょっとした休憩のためのスペースがあるのだが、ヤトとライは大抵ここで休んでいる。


「歩さんこんにちわ」

「ワンワン」


 ヤトとライがたおやかな笑顔と共に挨拶をしてくれた。


「こんにちわヤトさん。ライもこんにちわ」


 歩が挨拶を返すと、はなちゃんはもう待ちきれないと言った様子でリードを引っ張り、()()()()になりながらながらヤトに突進する。


「あらあらはなちゃん。今日も可愛いですね」


 そう言いながらヤトは、切れ長の目を細めながらはなちゃんの頭を撫でる。


 はなちゃんは「可愛い」という言葉に弱い。


 自分が褒められていることが分かっているのだろう。


 はなちゃんは「可愛い」と言ってくれる人が大好きなのである。


 ヤトとライと合流し、歩は犬友達の集まる公園を目指す。


 そこは芝生と池に、森まであり、散歩の場所としてはうってつけであった。


 今の時間ならば、勇太にソラ、ヨーコにゴン太、それに犬が大好きな少女の彩がいるはずだ。


 彩は犬友達に混じって一緒に散歩をする。


 黄色の学童帽に、赤いスカートを履いたこの活発な少女は、いつの頃からか犬友達の輪に入った。


 犬が飼いたいと両親に言っても、ことごとく却下されたことも、小梅さんという猫を飼っていることも、歩達はすでに聞いていた。


 歩達が公園を目指して歩いていると、数十メートル先を見慣れた黄色の学童帽を被った少女が歩いていた。


「あっ・・・彩ちゃんだ」

「あら・・・本当ですね」


 歩とヤトはその様子を眺めていたが、どうにも様子がいつもと違っていた。


 彩はルンルンと学童帽を揺らし、手にはしっかりとリードが握られていた。


「犬・・・飼い始めたんですかね?」

「どうやらそのようですね」

「お~い彩ちゃ~んッ!」


 歩が声をかけると学童帽がピタリと止まり、満面の笑みと共に彩が振り返った。


「歩兄ッ!ヤト姉ッ!」


 嬉しそうに歩達に駆け寄って来る彩。


 もちろん、彩の握るリードの先の生き物も一緒に駆け寄って来る。


 その姿だけを見れば、知り合いに出会った小学生の少女が息を弾ませながら走っている、というごくごく普通の風景なのだが、とても普通とはいえない異質な点があった。


 具体的には彩の持つリードの先に繋がれている生き物が、犬ではなかった。


 茶色と白と黒の混じった、ふくよかな体型をしたその猫は、彩と共に息を弾ませながら、刻一刻と歩とヤトに迫っていた。


「あれは・・・猫じゃないですかね・・・?」

「猫・・・のようですね・・・。彩ちゃんの言っていた小梅さんでしょうか?」


 歩はそのとき初めて、困惑するヤトの顔を見た。


 ヤトとの付き合いといえば、はなちゃんを飼い始めた四年前からだから、まあまあ長いといえる。


 その間、ヤトは常にお淑やかで、深窓の令嬢の雰囲気を崩したことはなかったが、そのヤトが戸惑ったように目を丸くしている。


 ライだってそうだ。


 いつも屈強なボディーガードのようにヤトに寄り添う、ダンディーなこの犬が「ワッ・・・ワオン!?」とその光景に驚いていた。


「私もね犬を飼い始めたのッ!!」

「にゃあ・・・にゃ・・・わんッ!!」


 屈託の無い笑顔で二人にそう報告する彩。


 小梅さんはというと、メタボリックなその体型が災いしてか、ゼェゼェと肩で息をしていた。


ー 犬・・・犬なのか・・・?僕には猫に見えてしまうが・・・。でも彩ちゃんが満面の笑顔で犬って言ってるし、でもでも今にゃあって鳴いて慌ててわんッて言い直してたし・・・。あれ?そもそも犬と猫の違いってなんだっけ・・・?


ー 私はどう反応すれば良いのでしょうか・・・?いたいけな少女に、これは猫ですよ?と言ってしまって良いのでしょうか・・・?いえ、そんな非道なことなど出来ませんわ。彩ちゃんが犬って言っているんですもの、きっとこの子は犬なのでしょう。


ー ワ・・・ワオン?


 大人達がそれぞれの思案に暮れていると、はなちゃんが尻尾を振りながら小梅さんに近付いた。


 鼻と鼻を合わせ、犬の挨拶を終えると、はなちゃんは小梅さんの体をペロペロと舐め始める。


 どうやらはなちゃんは、猫とか犬とか関係なしに、小梅さんを友達と認めたようだ。


ー ~~ッ!!はなちゃん・・・そうか、そうだよな・・・。彩ちゃんがこんなに喜んでいるんだもの、何を僕は犬とか猫とか小さなことにこだわっていたんだ。


ー 種族なんて関係ありませんわ。私はどうやら大切なことをはなちゃんに教えてもらったようですね。


ー ワンワン。


「良かったね彩ちゃん。とっても素敵な犬だね」

「ええ。優しそうな、気だての良いワンちゃんですね」

「ワオンッ」


 歩達の言葉にすっかり気をよくした彩は、小梅さんの豊満な体を撫でながら満足そうに頷いた。


「うん。小梅さんがね、猫なんだけど、私が頼んで今日から犬になってくれたんだよ~。これで皆と一緒にお散歩できるね~」


ー あっ・・・やっぱり猫だった。

ー やっぱり猫でしたね・・・。

ー ワオン・・・。


 「にゃわ~んッ!!」

 

 妹の喜ぶ顔が見れて嬉しい小梅さんが、満足そうに一声鳴いた。

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