婚約破棄はなぜ起きるのか? ~生物学的観点から考察する異世界恋愛テンプレと余談のランキング話~
皆様、ハプスブルクという名前を聞いたことがありますか?
実在する貴族であるハプスブルク家は、しばしば遺伝学の研究対象として取り上げられます。下顎前突症、所謂「ハプスブルクの顎」などの遺伝病と血族結婚との関係を探るためです。
血族結婚により先天性の病気を発症するリスクが高くなってしまう原因は『両者ともに遺伝病に関わる共通の劣性(潜性)遺伝子を持っている可能性が高まるから』なのですが、詳しくご説明するためには、用語や遺伝の仕組みなどの解説が必要になりますのでここでは省略します。
※気になる方はウィキ先生の『近親交配』の項目を確認していただくと、分かりやすいかと思います。
ここで注目していただきたいのは、有力貴族間での政略結婚は近親婚とまでは言えないものの、それに近い影響をもたらす可能性があるということです。ただ単に貴族というだけならいくらでも候補はあるのでしょうが、爵位が釣り合いお互いの利益を生み出す関係は、そう簡単に見つからないでしょうから自ずと選択肢は限定されます。
前述のハプスブルク家も財産や権力を維持するための解決策として、伯父と姪や従妹同士を結婚させています。
更に重要なのは、異世界恋愛の中で政略結婚に割り込んでくるヒロインの出自です。彼女達は多くの場合、貴族籍を持っていながらも実際は平民の血が流れています。妾の子である場合もあれば、元々は単なる村娘である場合もあります。この平民のDNAこそが、彼女がヒロインとして選ばれた理由ではないかと私は思うのです。
つまり、主人公とヒロインが結ばれるのは運命だからではなく、『遺伝学的に病気になりにくいから』なのです!
「いやいや、相性とか関係なく、ヒロインは魅了を使って主人公を虜にしたりするだろ」と思われる読者様もいらっしゃるかもしれません。
ここで一つ興味深い実験をご紹介します。
1995年にスイスのベルン大学の動物学者クラウス・ヴェーデキント博士によって、ある実験が行われました。44人の男性が二日間、コットンのTシャツを着続け、49人の女性にその匂いを嗅いでもらい、反応を調べるというものです。
実験の結果、ほとんどの女性が「自分のHLA(ヒト白血球抗原)遺伝子と最もかけ離れた遺伝子型を持つ男性」を選びました。(Claus Wedekind(1995). MHC-dependent mate preferences in humans.)
要するに、女性が好意的に感じた“匂い”を持つ男性は、自分と類似点の少ない“HLA遺伝子”を持っているということが証明されたのです。
※ちなみに、思春期の女性が父親の体臭を「オヤジ臭」と嫌う理由もここにあるのではないかと言われています。血縁的に近いためHLA遺伝子の型が似通っている父親の体臭を自然と嫌悪してしまうというわけです。
この実験結果から一つの仮説を立てることが出来ます。
ヒロインに一目惚れしたつもりの主人公も、実は一嗅惚れしていたのではないでしょうか。
言い換えれば、主人公が夢中になったのは、ヒロインの魅了魔法でもなく、可愛らしい外見でもなく、彼女の体しゅ……フェロモンに基づき判断されたHLA遺伝子型だということです!
さらに、惹かれ合った彼らや悪役令嬢の行く末にありがちな国外追放。これも遺伝病に関連する潜性遺伝子を避けるためにはベストな選択と言えるでしょう。隣国の王太子に溺愛されがちなのも、そういった背景があるのかもしれません。
このように異世界恋愛におけるテンプレ展開は生物学により悉く説明することが出来るのです! (実際は、ガバガバ理論による完全なこじつけですのであしからず!)
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余談ですが、最近の総合ランキングは異世界恋愛の割合が多いですね。
「遺伝的多様性」という言葉があります。同じ生物種の中でも、遺伝子の違いにより形質が異なる場合、暑さに強い個体、寒さに強い個体など、様々な特徴をもつ個体が存在することで、環境の変化に対応できる可能性が高くなります。
しかし、この多様性が失われてしまい、例えば『暑さに強いけれど寒さに弱い』個体ばかりになると、何らかの影響で寒冷化が起これば、集団、あるいは種そのものが存続できなくなる危険性があります。
新参者なので、以前のランキング事情や、どのような変化を経て今の状況になったのか、その経緯は詳しく知りません。時間が経てば自然と新たなブームがやってくるのかもしれません。それがいつになるのかは分かりませんが。
理想的なランキングは、様々なジャンル・作家の作品が入り乱れ、日々刻々と新陳代謝のように入れ替わっていく状態ではないかと個人的には思います。
少し前から私の作品を読んでくださる方に、ジャンルの受動喫煙をしていただければと考え、SFや童話などの短編も書くようにしておりました。ジャンル別ランキングに載ることは飛び上がるほど嬉しいのですが、いつまでも残り続けているジャンルについては、それだけ入れ替わりが滞っているのではないかと若干心配になります。
形ばかり他ジャンルに挑戦してはいるものの、結局一番多くの読者に読んでもらえる異世界恋愛を山ほど書いている有言不実行な私が語るのもなんですが……
読者の皆様におかれましては、小説を読む楽しみが邪魔されない範囲で、出来るだけ食わず嫌いせずに、多種多様なジャンル・作家の作品をつまみ食いしていただけると、少しでも現状が変わっていくのではないかと考えています。
これからも『小説家になろう』ライフを作者と読者共に末永く謳歌できるよう、お互いがやれることを無理せず楽しんでやっていければよいですね。




