冬至
2021.03.06 投稿
日の出前、空には雲が犇めいている。細い雨が冬至の地上をしっとりと濡らし、壁や床は冷たく湿る。
ひなは村人たちと共に拝殿に敷き詰められ、その時を待っていた。冬至の祭は、皆で朝陽を迎えるところから始まるのだ。
早起きの頭は灰色のまま、マキと晴瀬のことを考えている。彼女らは今、どうしているのだろうか。冷たい雨に打たれ、ぬかるんだ道を歩き、白い衣を汚した二人の姿が思い浮かぶ。自分の心配すら及ばないほど、二人は強い。しかし時折信じられないほど危うく、また激しく道を間違える。
償いのつもりなのだろうか。二人を心配をする自分に、ひなは溜息を吐く。追い出した者自身が、抱いて良い感情ではない。
二人に吐いた言葉を思い出し、時折血の味すら感じる。泣きわめく子供でしかなかったあの自分を、彼らは真正直に受け止め出て行ってしまったのだろう。
村人たちは、二人がいなくなったと伝えるとあからさまに安堵を示した。ひなはそれを見ても、もう怒りはしなかった。ただ素直に、同情の意を示し頷いていた。
強烈に後悔はしているが、二人に言ったことは本心だった。
自分の行為を許している、自分もいる。
どっちつかずにぐらぐらしたまま、今日までの日をぼおっと過ごしていた。久方ぶりに迎える故郷での大晦日よりずっと、大事なことだった。
ぼおんとひとつ、鐘の音。薄暗がりのまま、朝が地上にやってくる。残響が消えてしまう前に、冬巫が両手をつく。それを合図に、村人たちも一斉に叩頭した。
再び鐘の音が響き渡るまで、一心に禰々島へと祈りを捧げる。死者を宥めるため、弱くなった太陽を奪うことのないようにと。
しかしひなは一人、頭を下げられずにいた。横の秋巫が彼女をつつくが、焦点の合わない目を宙に向けている。
冬至の祭が、意味の無いことのように思われた。
太陽の復活など、祈らずとも果たされる。人間が案じたところで、世界絶対の法則が揺らぐことはないのだ。
彼女はただ「二人が無事でありますように」と、禰々島に祈った。




