表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
そしてまた月は満ちる  作者: 春日野霞
十一 宿願
70/89

冬至

2021.03.06 投稿

 日の出前、空には雲が犇めいている。細い雨が冬至の地上をしっとりと濡らし、壁や床は冷たく湿る。

ひなは村人たちと共に拝殿に敷き詰められ、その時を待っていた。冬至の祭は、皆で朝陽を迎えるところから始まるのだ。

 早起きの頭は灰色のまま、マキと晴瀬のことを考えている。彼女らは今、どうしているのだろうか。冷たい雨に打たれ、ぬかるんだ道を歩き、白い衣を汚した二人の姿が思い浮かぶ。自分の心配すら及ばないほど、二人は強い。しかし時折信じられないほど危うく、また激しく道を間違える。

 償いのつもりなのだろうか。二人を心配をする自分に、ひなは溜息を吐く。追い出した者自身が、抱いて良い感情ではない。

二人に吐いた言葉を思い出し、時折血の味すら感じる。泣きわめく子供でしかなかったあの自分を、彼らは真正直に受け止め出て行ってしまったのだろう。

 村人たちは、二人がいなくなったと伝えるとあからさまに安堵を示した。ひなはそれを見ても、もう怒りはしなかった。ただ素直に、同情の意を示し頷いていた。

 強烈に後悔はしているが、二人に言ったことは本心だった。

 自分の行為を許している、自分もいる。

 どっちつかずにぐらぐらしたまま、今日までの日をぼおっと過ごしていた。久方ぶりに迎える故郷での大晦日よりずっと、大事なことだった。

 ぼおんとひとつ、鐘の音。薄暗がりのまま、朝が地上にやってくる。残響が消えてしまう前に、冬巫が両手をつく。それを合図に、村人たちも一斉に叩頭した。

 再び鐘の音が響き渡るまで、一心に禰々島へと祈りを捧げる。死者を宥めるため、弱くなった太陽を奪うことのないようにと。

 しかしひなは一人、頭を下げられずにいた。横の秋巫が彼女をつつくが、焦点の合わない目を宙に向けている。

 冬至の祭が、意味の無いことのように思われた。

 太陽の復活など、祈らずとも果たされる。人間が案じたところで、世界絶対の法則が揺らぐことはないのだ。

 彼女はただ「二人が無事でありますように」と、禰々島に祈った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ