コテージは趣味部屋です
ここは、次元の狭間にある小さなアトリエ。
沢山の女神様や神様が統括する不思議な世界の中心に存在します。
直径50メートルの浮遊大地。
その一角に存在するのは木造作りの解放感溢れるコテージです。
外からでも確認可能な沢山のゲーム機と複数モニター。
ここは私が1日に1時間だけ、決められた余暇を過ごせる大切な場所。
今日は珍しくコテージに私ともう一人、女神のまる子様がいます。
私達はプロコンを両手に持って、
「私は今どこにいるの! あっ、あっ、何かボコられているんですけど!」
「まる子様! もう既に死んでますよ、投身自殺の末に!」
「ふぁっく!」
大乱闘でスマッシュするゲームをプレイする私とまる子様。
画面上では31体のおじさん達が大混戦中です。
初動にて、争いは好まぬ、と赤帽子のおじさんが穴にダイブしていきましたが。
「おかしいよ! 皆、同キャラで帽子の色しか違わないんだもん!」
「たまたまですよ。次はネズミだけが参加可能な部屋を作りましょう」
「犯人はお前だ!!」
世の発展は著しいですね。
まさか32人同時プレイまで可能になっていたとは。
ちなみにネット環境は地球と繋がっており、普通にオンライン対戦可能です。
どうやっているのかって?
各異世界には市井として紛れた神様の従者達がいるのです。
彼等の拠点を経由して神様の住まう空間まで、回線を繋いでいたりします。
なので接続料金はちゃんと払っていますよ。
従者の皆さんに日本円に代わるモノを渡していますが。
ゲームもいよいよ最終局面。
私は最後のプレイヤーを屠り、唯一の勝利者となりました。
丁度、その時に余暇終了のベルが鳴り響きます。
あー、もう仕事に戻らないとですね。
「まる子様はどうしますか?」
「仕事したくないけど、スキル仕様書を書かなきゃ」
「今度の転生先では、どんな物語が主軸となるんです?」
「恋愛かな」
「ある意味バトル系より、難しいですよね」
「うん。面倒だから、心を読める能力にしようかなって」
恋愛系でその能力は、ドキドキも何も得られない気がするのですが。
それにしても、恋愛ですか。
私も苦手なんですよね。
地球に居た頃は、女子高生プロゲーマーでしたし。
青春は全てゲームに捧げていましたから。
「ニーアは恋愛したことある?」
「残念ながら無いんですよね。なので苦手なジャンルだったりします」
「へー、見た目凄く可愛いのに」
「よく言われましたけど、性格と趣味が残念すぎて」
「ふーん、じゃあさ! ニーアが何故クリエイターになったのか聞いてみたいな」
「面白い話ではないかと思いますが……」
「いいの、いいの。作業中のラジオ替わりにさ」
「では、何処から話しましょうかね……」
今から語るのは神様達にスキルクリエイターとして見初められた日の話。
あれは、確か高校三年を迎えた春先の出来事でしたね――。