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緊急依頼

様々な異世界を巡りますがスローライフ系の話です。

なるべく頭空っぽにして読める作品を目指す予定です。

4話構成でひとつの物語が完結します。

よろしくお願いします。

 ここは、次元の狭間にある小さなアトリエ。

 沢山の女神様や神様が統括する不思議な世界の中心に存在します。

 直径50メートルの浮遊大地。

 地上面積の半分を占めるのは、特殊な素材を育成するための小さな農園です。

 様々な異世界から取り寄せた植物達は、今日も元気に育っているようで、

 

「ふん、ふふーん、ふーん♪」

 

 いつもの日課である水やり。

 命の恵みを受けた植物達の合間に綺麗な虹のアーチが掛かります。

 

「問題ないみたいで何よりですね」

 

 植物が病気に掛かっていた場合、黒いアーチが出現する特殊な水。

 異世界を巡り、得た知識で錬成した栄養水です。

 見た目にも楽しい植物の間を歩きながら、

 

「久しぶりのオフだし、何をしようかな」

 

 日々、沢山の転生スキルの作成を依頼される私。

 偶然にも依頼の無い日が生まれ、久々の休暇を得られたのです。

 休暇にやりたいことですよね。

 元々、地球育ちの私はゲーム好きの女の子でした。

 それも、男の子がやるような格闘ゲームや硬派なFPSとかが好きでして。

 

「ちょっと地球に降りて、ゲームを仕入れてこようかな」

 

 格闘ゲームとかがいいかもしれません。

 明確に区切りが無いゲームだと続きが気になることもありますし。

 得られた休みは1日のみ。

 次の休みがいつ取れるかは分からない。

 あれやこれやと余暇の計画を練っていると、

 

「助けて! メイド様!」

 

 何かが高速で溜池に落下しました。

 感じられる気配から女神様と推測。

 たまたま、洗濯物として干していたタオルを手に取りながら、


「どうしたんです? そんなに慌てて?」


 ザバンと勢いよく溜池から飛び出す女神様。

 風邪を引いてはいけませんねとタオルを差し出す。


「あ、ありがと! って、そんな場合じゃないんだって!」

「はあ?」

「至急、剣の転生スキルを作って欲しいの!」

「いつまでに作成すればいいのでしょうか?」

「3時間後!」

「えーと、前もって作成依頼をされなかったのですか?」

「忘れた!」


 自信満々に返答されてしまいました。

 女神様も忙しい身なので、忘れてしまうことはたまにあります。

 それでも、大体は1週間前くらいに気付いて緊急発注となるのですが。

 この方は少し、だらしない部類の女神様なのでしょうね。

 力の大きさからいえば、新米の方なのかもしれません。

 女神様は涙をいっぱいに浮かべながら、

 

「他のクリエイターには断られちゃったの!」

「それはそうでしょうね……。かなりの無茶振りかと思います」

「うぅ……、このままじゃあ、スキル無しで転生してもらう羽目に……」

「転生者様は使命持ちの方なのでしょうか?」

「うん。魔王を倒すっていう使命を持ってる」

「それは、まずいですね……」


 このままだと転生者様は何のスキルも無いまま魔王と戦うことになります。

 以前にも無能力で魔王と戦わされた事件がありましたよね。

 普通にお亡くなりなったと聞かされています。

 転生してすぐに死の運命が確定というのも酷な話です。

 余暇といっても偶然に舞い込んできたモノですし、人肌脱ぎますか。

 

「いいですよ。手持ちの材料で賄えるのであればですけど」

「本当に!」

「はい。対象となる異世界の情報を下さい」

「リバテンって名前の異世界だよ」


 ポケットから地球でいうスマホ型の端末を取り出して、リバテンを検索する。

 ありました。

 同一名称の異世界も無いので大丈夫でしょう。

 確かに転生スケジュールにも三時間後との記載があります。

 スキルの設計図も記載されていますね。

 

「スキル仕様は誰がお考えに?」

「ウンディーネ大女神様だよ」

 

 ウンディーネ様でしたら問題なさそうですね。

 設計の見直しも不要でしょう。

 仮に目の前の女神様が作成したのなら、仕様確認が必要だなと思いましたけど。


「ちなみに女神様のお名前は何と言うのですか?」

「まる子」


 女神様が指で中空をなぞると、光の文字が浮かび名が記される。

 "マルコ"ではなく"まる子"。


「ず、随分と日本的な名前ですね」

「地球にある日本が大好きだから、女神登録する時はまる子にしたの」

「私はまる子様が好きな日本の生まれなのですよ」

「本当! 名前は?」

「ニーアです。ニーア・ヴァレンタイン」

「日本名じゃないね……」

「すみません。逆に外国っぽい名前に憧れてまして」


 お互い簡単な挨拶を済ませ、すぐにスキル作成の準備に取り掛かった。

 私のアトリエにはいざという時のために、多くの素材がストックされている。

 

「運良く手持ちの素材で足りそうですね」

「良かった。早速、スキル作成に取り掛かろうよ!」

「その前に行くところがあります」

「えっ、何処に?」

「異世界リバテンに君臨する魔王様に会いにです」

「それって必要なこと?」

「はい、どの程度の実力か見ておいた方がスキル作成にも役に立ちますしね」

「クリエイターで異世界に赴く人ってあまり見たことないけど……」

「百聞は一見にしかず、ですよ。実際を見るのは大切なことです」

「そ、そうなんだ」

「では、行ってきます。一時間くらいで戻ってきますね」


 まる子様に簡単な挨拶をして、異世界リバテンの扉を開く。

 さて、スキルクリエイターとしての責務を果たしに行きますか。

 

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