アセイ村へ行く
アグロマウス村でカイムの送迎会が行われた翌朝、村の皆が村の入口に集まっていた。百五十人ほどが住む村に木の柵で囲まれた門の前の広場には百人以上の村人が集まっていた。村人達の中心でカイムが、村人と別れの挨拶をしていた。そこに村長がやって来た。
「イクンの町長にこの手紙を渡して欲しい。この手紙を読めば『カイセン島』に船を出してくれるだろう。」
と村長は言った。
村長は、カイムに『アイゼンバルク村長の手紙』を手渡した。そして、カイムは村の皆に手を振り、アグロマウス村を旅立った。彼は一歩一歩を踏みしめながら後ろ振り返ろうとしては思いとどまって、また前と進みながら村を離れて行った。
村人達は、そんなカイムが見えなくなるまで手を振っていた。アグロマウス村を旅立った、カイムは何を想いアセイを目指すのだろう。
彼は、故郷を旅たち自らの進むべき道を探していた。
徒歩でアグロマウス村をでたカイムは街道を数日かけてイクン町を目指していた。
彼は、街道沿いの村で泊まれてもらいながら、一人旅を続けた。
アグロマウス村をカイムが旅立ってから数日がたった。土ぼごりで少し汚れた姿のカイムの姿がイクン町の門の前にあった。
「やっと、イクン町についた。」
とカイムはつぶやいた。
イクン町は石垣で囲まれた港町であった。この村では、カイムの育ったアグロマウス村の人口百五十人の三倍の四百五十人ほどが暮らしていた。
村が見える位置から、カイムは村の門へと歩いてきた。門の前には二人の門番が立っていた、
カイムは、門の前に立っている門番に、
「こんにちわ。」
と挨拶をした。門番が身分証明書を見せるように指示をしてきたので、カイムは、自分のアグロマウス村での身分証明書を門番に見せた。門番は身分証明書を見ると、
「ようこそ。イクン町へ。アグロマウス村のカイムさん」
と言って門番は町へ続く門を開いてくれた。
門番から身分証明書をカイムは返して貰い、門の中へと進んでいった。
カイムは村長から、この身分証明書は本来のお前の身分を示していないから、アセイ村では、手紙を見てもらうんだぞと言われて身分証を渡されていた。
村の中に入ったカイムは、人通りの多い町を昔、村の皆と買出しに来た時のことを想いながら歩いていた。
村の中を歩くこと十数分、カイムは、イクン町長の家にやって着た。門の前に立つ衛兵にアグロマウス村アイゼンバルクの手紙を見せ町長にあわして貰うように話をした。衛兵は、手紙を見ると二人いるうちの若い方に町長に取次ぎをするために家の中へと入っていた。
数分後、家の中から戻ってきた衛兵に連れられて家の中へカイムは入っていった。
家には、イクン町長『ナンクラン』がいた。カイムは、ナンクラン町長にアイゼンバルク村長の手紙を渡した。ナンクランは手紙を受け取り、封を開け読み出した。
「よし、船を出してやるよ!向こうに着いたら、『ティアンス』さんに会いなさい。彼がアセイ村へ行ける『キュウリン洞窟』への道を教えてくれるだろう。この手紙を持っていけばいい。今から船に案内しよう!」
と言った。
カイムは、『ナンクラン町長の紹介状』を受け取った。ナンクランは、カイムを連れて家を出た。彼らは、港にある大きな建物へと入っていった。中に入るとそこは酒場になっており、たくさんの海の男たちが集まっていた。
「『ウエン・ヘンダー』は、居ないか?」
とナンクランは、叫んだ。
すると、部屋の隅にいた一人の男が立ち上がり、ナンクランの元へと歩いてきた。
「よう、町長。なんだい。」
「ウエン・ヘンダー、こいつをソインダまでに送ってくれないか?
ウンエンス家の関係者でアセイにいきたいそうなんだ。」
「この坊主がウンエンス家の血縁者か。」
声を小さくして、
「もしかして、アグセイリンさんの息子か?」
村長も声を小さくして
「そうじゃ。」
「わかったよ。ナンクラン町長。」
カイムの方を向いて、
「坊主。お前を連れて行ってやるぜ。」
とごつい腕で頭をなでた。
カイムは、腕をどかそうとしながら、
「僕は、坊主じゃなくて、カイムて名前があるんだよと。」
と言っていた。カイムの力では男の腕をどかすことは、できなかった。
「そうか、明日港に来てくれれば、お前を連れてってやるぜ。」
酒場を出た、ナンクラン町長は、カイムに向かって
「今日は、家に泊まって行くといい。」
と言って、カイムを連れて月明かりが照らす町のなかを進んでいった。
翌日、港にカイムはやって来た。
「エルダー・イオン号出発。」と船長の『ウエン・ヘンダー』が掛け声をかけた。
エルダー・イオン号が船着き場から海へと出発した。
航海中。カイムは、ウエン・ヘンダー船長に呼ばれ、船長室へとやってきていた。
「よくきたな坊主。」
「そこに座ってくれ。」
といい、小さな応接セットをしめし、自らも執務机から立ち上がった。
「坊主、少し昔話に付き合ってくれ。
俺は、王国の海軍にいたことがある。
補給部隊の船長をしていた軍属のような仕事だったけどな。
グマラマ帝国がせめてきて海軍が解体されたとき俺は、民間にでてこの船の船長をやっている。この船の上級船員たちは、皆、海軍の所属だった人間だかな。そしていざというときは、俺らを頼ってほしい。」
カイムは、船長に向かい、
「僕みたいな、若造にそんなことを言ってくれるですか?」
船長は、ちょっと恥ずかしながら、
「昔、お前のおじい様に助けらたことがあるからな。」
と言い、カイムの知らないおじい様の話をいろいろしてくれた。
エルダー・イオン号がソインダの港に到着した。
カイムが船をおり、船着き場の建物を出ると、「ようこそ。カイセン島へ!」という看板が建っていた。
カイセン島についた、カイムは、エルダー・イオン号から降りると、ナンクラン町長に紹介された、町の北側にあるティアンス邸へとやってきた。
門の前に立つ衛兵にナンクラン町長からの手紙を渡すと、衛兵のひとりが、こちらに来いと、カイムを連れて家の中へとふみいれた。玄関を潜るとそこには、正面に二階に上がるための階段のある玄関ホールだった。衛兵は、カイムを連れて、階段を上り家の中をどんどん住んでいき一つの部屋の前で止まった。
「ティアンス様、ナンクラン殿から紹介書を持つ少年がやってきたのですが、中に入れてもいいでしょうか?」
と声をかけた。
中から、中年の男の、
「おお。連れて来てくれ。」
という声が聞こえた。
カイムは声が、聞こえると、
「では一緒にいきましょう。」と衛兵が言い。衛兵が扉を開けて中に入った。
衛兵と一緒にカイムが部屋に入ると、衛兵は一礼をして部屋の外へと出て行った。
窓を前におかれた執務机に座る人物が、立ち上がり、
「ソインダ町長のティアンスだ。ナンクランからの紹介状を持ているようだが、みせてくれないか?」
と言った。
カイムは、衛兵から返された紹介書をティアンスへ渡した。
ティアンスは、紹介状を見ると、カイムに向かって、
「分かった。お前をアセイ村に行くための商人を紹介してやる。」
と言い、ティアンスは、屋敷の外へと、カイムをつれて外へと出た。
数週間後、いくつのもの町を超え、ついにカイムは、アセイ村へやってきた。
そして、カイムの物語は始まる。
これで旧一部+1の七話分をまとめています。
かなり加筆してます。