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別れ

 ここは、ナクオマイウ島にあるアグロマウス村と呼ばれる村である。その村の中にある一軒のぼろい家があった。この家には母と子の一組の親子が住んでいた。

 金髪に青い目を持つ少年が寝台に寝ている、金髪に青い目の女性を見ていた。少年の名は『ウザル=カイム』と言った。寝台に寝ている女性は、カイムの母で名を『アグセイリン』と言った。

 アグセイリンがウザル=カイムに、苦しそうに

「あなたの祖父から指輪を渡されました。村長に預けてあります。村長から『聖雷の指輪』を貰いなさい。」と言うと眠るように瞼を閉じた。


 カイムは

「お母さん!」

 と嘆いた。


 すぐに、近所の人に呼ばれてやってきたこの村に住む牧師がやってきた。彼は、アグセイリンを診察すると彼女が亡くなったことを告げた。



 アグセイリンが亡くなり三日後。ウザル=カイムは、村長宅に呼ばれた。白髪の村長『アイゼンバルク』が、ウザル=カイムに『指輪』を二つ渡した。すると、村長が、

「お前は来月で十五歳じゃな!お前がこの村に来て十三年。月日が立つのは早いのう。」

 と言って、窓の景色を眺めた。


「お前の付けてるネックレスはアグセイリンから貰ったものじゃな!それには、獅子の紋章が付いているだろ。」

 とアイゼンバルクが言った。


 カイムは、ネックレスを手に取りみつめた。村長はさらに、話を続けた。

「それは、タンベス王国四大騎士家の一つ『ウンエンス家』の本家の人間が着ける紋章だそうだ。お前は知らないだろうが、この島は、昔タンベス王国が統治していたのじゃ。これは、昔この村に来たウンエンス家九代当主『コロンナンス』に聞いたことだ。」

「コロンナンスは、今から、三十八年前|(新暦208年)の春にこの村へやって来た。彼はこの村で、当時十五歳だったお前の祖母『コルナ』に一目ぼれした。」

「そして、三十六年前|(新暦210年)の秋、『アグセイリン』が生まれた。村の人には、コロンナンスは自分がウンエンス本家の後継者であることを内緒にしていた。」

「三十五年前|(新暦211年)の春の初め。コロンナンスが三年間の任期を終え、第八騎士群本部へ帰るぐらいの時に数人の騎士がこの村を訪れた。騎士が訪ねてきた日の夕方日が暮れるころにコロンナンスはコルナに自分がウンエンス家の後継者であることを告げた。コルナに一緒に来るように言ったそうだ。しかし、彼女は一歳になる娘『アグセイリン』と一緒にこの村に残ることを決めた。彼女が言うには、その子に貴族の争いに加えたくなかったそうだ。」

「ふたりの別れから八年の月日が流れた。そう今から、二十七年前(新暦219年)の冬。寒い日の朝だった。コルナが亡くなった。死因は、当時逸っていた感染病で名を『喉肺炎病』て言ったかな。その当時、人口約三百人のこの村でも、コリナも含めて二十八人が亡くなった。ほとんどは、五十歳以上の年寄りだった。コリナは、当時二十一歳。早すぎる死じゃった。」

「当時まだ九歳だったアグセイリンは母親に死なれて独りになってしまった。彼女は私が世話をすることになり私と暮らし始めた。」

「コリナが亡くなったことを知ったコロンナンスは、すぐに使者をこの村に送って来た。使者は、この国の首都『タンベス』にあるウンエンス本家に彼女を引き取りたいと言った。次期当主の筆頭候補であるコロンナンには、アグセイリン以外の子供が1人も産まれず、養子を1人取っていたそうだ。親と暮らしたほうがいいと思った儂はアグセイリンにどうしたいか聞いた。彼女は、首都に行くことを希望した。」


 村長は少し間をおいてから

「そして今から十六年前|(新暦230年)、『グマラマ帝国』の世界占領作戦が開始されたと風の噂で伝わって来た。当時、村長をしていた『エルディラ』は、ここは辺境だから大丈夫だと考えていた。村の人達も同意見だった。」

「アグセイリンが村を離れて十四年後。今から十三年前|(新暦233年)、暑い夏だった。そんな夏に旅人がこの村にやって来た。それは、二十三歳になるアグセイリンと一歳のお前、そしてお供の女性二人の四人組であった。アグセイリンが一歳のお前を連れているのを見た時、わしや村人達は、とても驚いていたぞ。」


 アグセイリンは、

「今から、六週間前。タンベス王国にグマラマ帝国が侵略をはじめました。数年前より対策を考えていたタンベス王国は、すぐに国民たちを疎開させました。」

「疎開には、二週間掛かりました。国民達の疎開が終わると(コロンナンス)は、私に疎開するようにいってきました。」

「そして、タンベス城が今から二週間ほど前に全面包囲されました。(コロンナンス)はこの子を助けるために、この村に帰るように言いました。このことを予測していた国の人々は、脱出用の通路を八本掘ってあったのでその一つを使い脱出しました。」

「私の父は王女と一緒にレジスタンスを組みました。他の親族はほとんど死ました。本家の血筋を引く人間は、私とこの子、父『コロナンス』・私の養兄『ルリマナン』だけです。そして、直系の男児であるこの子がウンエンス家10代当主筆頭候補です。しかし、このことは秘密にしてください。」

 と言った。


「今、渡した指輪はその時アグセイリンから預かったものじゃ!」

「何でも、一つは君の父親からカイムに渡されたものらしい。もう一つは、『聖雷の指輪』呼ばれる『ウンエンス家』に伝わる指輪だそうだ。」

「その時、一緒に来たお供の女の一人はこの村に来て三年くらいで亡くなった。もう一人は、村の教会にいる『エスティ』さんじゃ。彼女に聞けばもっと詳しいことを知っているじゃろう。」

「そして今では、お前さんも知ってるようにグマラマ帝国が世界の八割までを支配している。彼らは、世界一の大国となったのだ。世界の各国ことごとく帝国に壊滅された。」

 そして、旧タンベス王国王女達は、レジスタンス『風の歌声』を結成したそうだ。」

「もし彼らのところに行きたいなら、イクン町長に手紙を書いてやろう。すぐになくてもいいから、よく考えるじゃよ!」

 と村長は言った。







 話を聞き終わったカイムは村長の家を後にした。




 カイムは村長の話を聞いて、家に帰った日の夕方。カイムの家には、隣りに住む幼馴染みの『ハーリンナ』がやって来ていた。

「カイム。アグセイリンさんが亡くなって2日経ったけど、まだ元気がないみたいね?」

 とハーリンナは、心配そうな顔をして言った。

「大丈夫だよ、ハーリンナ。俺は、カイセン島へ行く。そこに自分の居場所がある気がするんだ。」

 とカイムが言った。

「そんな、カイセン島をグマラマ帝国が占領したていう話じゃない。危険な場所に行かないで、カイム。」

 とハーリンナが悲しそうな声で言った。

「僕は、タンベス四第騎士家の一つ『ウンエンス家』の10代当主筆頭候補だから、国の人々のために働かないと!

 」とカイムが言った。

 ハーリンナは、カイムに抱きつき、泣いてしまった。


村長から話を聞いた次の日の朝、カイムは教会にやってきた。そこで、エスティさんを呼んで、昔の話を聞いた。


 そして、時はたち、三日後の夕方ハーリンナとカイムは二人で村の中を歩いていた。


 村に一つしかない酒場で、カイムの旅立ちを送る会が開かれた。そこにたくさんの村人達が集まっていた。

「カイム、あなたとこの村に来たのがつい最近だと思うわ。タイカルアが死に、アグセイリン様が亡くなり、そしてあなたも行くのね!こんな日が来るとは思っていたけどこんなに早く来るなんて」

 とエスティさんが涙ぐんだ。


「コロンナンス様から、手紙を頼まれてるで渡しますね。」

 とエスティさんが言い、カイムに一通の封筒を渡した。

 その封筒の中には、三枚の便箋ともう一つの封筒が入れられていた。



 カイムは手紙を読み始めた。

----------------------

 私は、『コロンナンス』じゃ。お前の祖父である。

 わが孫カイムよ、お前がこの手紙を読んでいる時には、風の歌声に参加することを決めたのじゃな!風の歌声は、アセイ村に本部がある。この手紙と一緒に入っている紹介状を村の入口に立っている兵士に渡せば、入隊できるように手筈は整えて置く。


 愛しき、わが孫 カイムへ


 コロンナンス=ミハエル・ウンエンス

----------------------

と書かれていた。

 そして、カイムがアグロマウス村で過ごす最後の夜が楽しい時と共に過ぎていった。

20時にも投稿します

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