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橘さんは異世界の森に神隠しに遭った模様です  作者: 雪待
【第一章】橘さん異世界の森に立つ!
6/9

【第五話】橘さんは森で食料探しをするようです

第五話無事に書き上げたのでお送りいたします。


橘さんは、HUDの設定を変更して<シメルト>様の会話文章と【解析】などのメッセージと見分けをしやすい様に以下の様な感じに変えてます。


<シメルト>様の場合

ポン♪(メッセージ表示音)

「台詞はHUDのウィンドウにカギ括弧で表示されます」


HUDシステムメッセージ

ピッ!(ドラクエ風に音が鳴ります)

[メッセージ文章はこの括弧内で表記されます]

005





 赤鬼さんの額のタオルを、水ですすいで絞り直してのせる。

 ずっと熱があるみたいだけど、この状態は大丈夫なのでしょうか?


ポン♪

鬼人族(グルド)は、全力で動いた後や怪我を癒やす際などに、体内に籠もった熱をかなり出す体質だ。そう心配することはない」


 赤鬼さんはヒトとは違う代謝能力も持っているのでしょうか? 熱が下がる気配がないので、そういうことならホッとしました。

 ところで<シメルト>様、数日分の保存食がリュックに残ってますが、できるだけ温存したいと考えてます。 この森で食料を確保したいなと考えてますが、赤鬼さんの分も含めて、何か食べ物になる様な植物ってありませんか?


ポン♪

「うむ。 今後そなたが、この森で生きてゆくためにも大切なことだな。

 迷い果(マヨイガ)は、ほんの少し植生が特殊であるからな。 この黒き森でありふれたモノを教えよう」


 今の時間は、15:50。

 <シメルト>様、この世界って一日ってどの程度の長さがあるのですか?


ポン♪

「そなたの世界の時間に換算すれば二十五時間と三十分ほどだな。 空を見るが良い」


 そういえば、この世界にやって来て空を見上げる余裕が無かったっけ。


 首に下げたコンパスを確認しながら空を見上げてみる。

 やや北西の天辺に太陽があり、太陽を中心に三つの衛星が見える。そのうちのひとつは太陽より大きく見えてクレーターが、うっすらと目視できるほどだ。

 そしてそれ以外にも、空にうっすらとかなり等級が高めな星々が見える。

 この星系はかなり【都会】に存在する様だ。


ポン♪

「この星にも磁界はあり地軸の傾きがあるので四季が存在する。コンパスはそなたの地球と同じで北を指すので探索には有用だろう」


 山歩きの癖でコンパスを確認していましたが、地球と同じ北を指してくれるのは助かります。 異世界とはいえ、この世界もボクの住んでいた地球と同じく恒星系なのですね。 物理法則も地球と変わらないというのは意外な感じがしますね。


ポン♪

「異世界といっても万物を支配する法則にそう変わりは無い。

 この星は、そなたの住む太陽系と同じ様に、一つの恒星を中心に十五個の惑星を従えた構成をしており、この星は第四惑星だ。

 今は太陽の真後ろに隠れて見えないが第八惑星が第二の太陽として存在する。

 この星の衛星は今見えている三つだな」


 第二の太陽があると言うことは、この星では夜がない時期もあるのですか? 

 ボクはとりあえず<シメルト>様がカーソルで指した方向へ歩き始めた。

 赤鬼さんの山刀は、藪をこぐのにちょうどいいのでこのまま借りておこう。


ポン♪

「第二の太陽の恒星周期は地球時間換算で約二十年。

 常にこの星を照らすわけではないが、夜がない季節もあるぞ。

 北峰の麓に存在するこの黒き森は、北半球の高緯度寄りに位置する。

 冬季は厳しい寒さが二百日ほど続くが、他の季節は温暖で人間でも生存は問題ない。

 ちなみにこの星の恒星周期は六百三十八日前後。 地球に住んでいたそなたには、一年は長く感じることであろう」


おおおー! 思った以上に<シメルト>様から、この星の情報を教えて頂くことが出来ましたぁっ!


 恒星周期六百三十八日前後ということは、だいたい二十三ヶ月か。

 計算が面倒ですけど、重力も空気も地球と居たときに比べて違和感が無いですから幸運ですね。 

 地球では見かけない樹木など見受けられますが、よく見ると針葉樹が多いですね。 この辺りの標高ってわかりますか? 

 <シメルト>様がHUDのカーソルで指し示す方角へ、藪を山刀で切り払いつつ道を作り森の中を進む

 

ポン♪

「この辺りの標高か? 細かい数値はすまないがわからぬ。 ただ平地に比べればかなり高地に存在する森である。北の山々が、図鑑でもよく名前が出てくる北嶺。 住民達は北嶺の山々とか北嶺山脈と呼ぶ。大まかな標高は、高緯度地域の森林限界で想像してくれれば良いかと思うぞ」


 <シメルト>様、ボクの蔵書から結構知識を得ているようで、会話が捗るので助かります。 ボクの時計には、高度を測る機能がありますが、正確な数値が欲しかったのです。

(注:Gショックは気圧を元に標高を算出しますが、異世界なので地球と同じというわけでも無いだろうと橘さんは信用してません)


 北の方角に見える険しそうな山が北嶺ということなら、植生の切れ目から逆算してこの辺りは、そこまで空気も薄くは無いので、標高千五百から二千五百メートルといったところでしょうね。


 それにしても北嶺の山々って絶対に標高一万メートル以上ありますよね。

 雲に覆われた断崖絶壁の山々を眺める。 

 登ってみたいけれど人類では踏破不可能な気がするなぁ


ポン♪

「まぁ、人類どころかこの世界の生物で、踏破した者はおらぬであろうな。それ、その青い木の根元の草を掘り起こしてみよ」


 ん…… この菱形の葉っぱですか? 

 山刀の刃先で菱形の葉の根元を掘り起こしてみる


ポン♪

「その葉の根に付いている実があるだろ? それは皮をむき茹でるなり焼くなりすると良い」


 芋みたいなものですか? おっと結構実がなってますね。

 注意深く根を引っ張ると六粒ほどの握りこぶし大の芋状の実が手に入った。


ポン♪

「菱形の葉は、水洗いして生でサラダの様な感覚で食することが出来るし、塩をふり一晩おくとそなたの世界で言うところの一夜漬けのような食べ方も可能だ。 実は芋の様に茹でても良し焼いても良しだ」


 これはどう考えても異世界の芋です。いや、いきなり野生の主食食物発見ですか?

 ただし色が、赤さび色というのがすごく不安になりますが……


 塩と胡椒は少し手持ちがありますが、この世界で塩や香辛料の類いって、どうやって手に入れることが出来るのでしょうか?


ポン♪

「塩は、地球と同じく海水から得るか、岩塩だな。 海はこの黒き森からは遙か彼方なので入手は難しいが、岩塩は比較的容易に洞窟などを探索すれば手に入るぞ」


 香辛料は、高緯度地域なら入手は無理なんでしょうか?


ポン♪

「香辛料は、生姜に良く似たものなら冬以外ならこの森でも手に入るな。 胡椒の様なモノといえば、香草で胡椒の代用品はあるが、そなたが考えている様な香辛料は、南方に行かないと手に入らないな。 その代わりにこの森には多様な香草があるし、鬼人族(グルド)達も香草を使って色々な料理を作っていたな」

 

 あー やっぱり香辛料は南方に行かないと手に入らないのですね。 それでも香草の類いがあるのならなんとかなりそうですね。 あ、それとこの世界ってお魚っているんですか?


ポン♪

「魚であればこの世界にも多様な種類の魚がおる。 沢にも食用に向いたモノがあるから、戻ったら釣りに挑戦するが良いだろう」


 ボクの釣り竿って30センチくらいの魚を釣り上げるのが限界ですが大丈夫でしょうか?


ポン♪

「沢でとれる魚はそれほど大きくは無いから、そなたの釣り竿でも問題ないと思うぞ」


 それは、良かったです。 ボクの釣り竿はコンパクトにして持ち歩きやすくした分、大物は無理だし仕掛けとかあまり手元に余裕が無いのですよ。


 芋? は買い物袋一杯になるまで葉と実を詰め込んでと……

 <シメルト>様、生姜っぽいのとか香草も手に入ると嬉しいのですけど


ポン♪

「右手の斜面を登り切った高台の辺りに行ってみよ。 その一帯で揃うはずだ」


 それでは行ってみましょうー!






__ __ __ __ __ __ __ __ __ __






 斜面を登り高台に着いたけれどここってもしかして……



 高台は、あちらこちらの木々が折れていて何かが争った形跡があり、眼下に赤鬼さんが横になっている、オレンジのタープが張られている岩場周辺が見えた。


 ここで赤鬼さんは何かと争って落ちてしまったという具合でしょうか?


ポン♪

「どうやらそのようだな。 そこに落ちているのは鬼の武器の様だな」


 <シメルト>様がHUDのカーソルで指し示した地面に片刃の剣が抜き身で落ちている。

 刃に付いた血は固まっており、結構時間が経過している様だ。

 剣は片刃の直刀で刃の部分だけで一メートルはありそうな大ぶりなモノだ。


ポン♪

「鞘はコレでは無いかな? それと赤鬼は甲羅纏猿(エリングス)と遭遇した様だな」


 HUDのカーソルが指し示したのは、黒い革製っぽい鞘と…… 巨大な生物の死体だ。


 甲羅纏いとはよく言ったもので、三メートル近い亀の甲羅みたいなものに全身を包み、猿と言うよりコアラみたいな大きな鼻を持つ獣だった。 おなかに槍が刺さっており、喉元から胸元までざっくりとした切り傷がある。これは多分、赤鬼さんが剣で与えた致命傷なのだろう。


ポン♪

甲羅纏猿(エリングス)は、この森ではあまり見かけないのだが、大きさから言ってまだ若い個体の様だな。 おそらく迷い込んでこの辺りにやって来たのであろうな」


ポン♪

「ちなみに此奴の肉は不味くて食えたものでは無いぞ。 革は鎧などの防具に需要はあるな」


 ちょ、思考の先読みは勘弁してくださいよー 食用にはならないのですか、ちょっと残念ですね。


ポン♪

「それにしても赤鬼の脇腹の穴は、こやつの攻撃であればもっと抉れた感じになるはずだ。 別の獣に襲われた可能性もあるな。 朱よ剣は使えるか?」


 怖いこと言わないでくださいよ。 剣で戦った経験はないですよ

 それにこの剣はボクには重すぎます。


ポン♪

「まぁこの辺りに大きな獣の気配は感じぬが、用心してさっさと香草を取ってゆこうか」


 そうしましょう。 できればこの剣は持って帰った方が良いですね。

 ボクは、<シメルト>様がHUDのカーソルで指し示す香草を慌てて千切る様に回収して、赤鬼さんの剣の血糊を木の葉で拭って鞘に収め高台を降りることにした。






__ __ __ __ __ __ __ __ __ __







 沢に戻り赤鬼さんの様子を見てみる。

 今のところ呼吸も落ち着いているし容態は安定していると思って良いのかな?

 

 獣の襲来が怖いので、獣よけの木の皮を焚き火へくべて、沢で手に入れた芋と香草を洗うことにした。

 生姜っぽいやつは掘るのに時間が掛かる様な気がしたので、香草を二種類取ってきたけど、他の採取は明日にしよう。 時間を確認したら、もう17時を過ぎている。

 その割に空はまだ明るいのは、第二の太陽が姿を現したからだろう。


ポン♪

「第二の太陽が出ているときは日が暮れるのはまだ間があるな。 先ほど採取した香草の青い葉は、辛みが強く魚の臭い消しに向いている。 そして粒状の実は炒めてすり潰せば胡椒の代用品として使えるぞ」


 おおー この茶色っぽい粒が代用胡椒でしたか。 それでは、お魚を釣ってみましょう。

 リュックからコンパクトロッドを取り出し、分割されているロッドを組んで仕掛けをセットして、沢に釣り糸を垂らしてみた。 餌は石をひっくり返して見つけた虫を適当に使ってみた。


 あっけなく三匹の角が生えたイワナとコイを掛け合わせた様な、二十センチほどの魚を釣り上げることが出来た。 それでは食用に向いているか【解析】してみましょう。


 

ピッ! (設定で音声を変えてみた)

【名称<wc$%'-+Ho>】


[沢でよく見かける魚で、最大サイズのものは四十五センチほど。

 焼いても良いし、骨で出汁をとり切り身を煮込むのも良い]


 ほうほう。 内臓は取った方が良いのかな? あと寄生虫も気になるかな?


ピッ!

[藻を主に食べる魚のため、好みが分かれるが、はらわたも独特の味わいがあり問題なく食すことは可能。 寄生虫はこの個体には確認されていないが生食も新鮮なら可能]


 二匹はウロコをざっと取って、木の枝を口から刺して焚き火であぶる様にしてみた。

 もう一匹を円形のまな板上で、三枚に下ろして身とはらわたをぶつ切りにして、骨は鍋に入れて一煮立ちさせて出汁を取ってみた。

 あく抜きは面倒だったので、身とはらわたのぶつ切りと一緒に千切った香草を一緒に鍋に放り込み煮込んでみた。 香草の香りが良い感じだ。


 芋は皮をむくと中は真っ黒だけど大丈夫なのだろうか? 三個ずつ串に刺したものを二本作り焚き火であぶり、葉っぱは水洗いして適当に千切り塩をふってサラダ代わりに。

 魚と芋が焼ける待ち時間に、フライパンで代用胡椒の実をあぶってみる。


ポン♪

「代用胡椒の実は、皮が色づき香りだ出てきたら、火から下ろしてすり鉢で潰してみるとよい」


 お! 良い感じに胡椒っぽい香りが出てきましたね。

 フライパンを火から下ろして、すり鉢に実を落としてすりおろしてみると、胡椒の様な焦げ臭いけど良い香りが立ってきた。

 <シメルト>様、この代用胡椒って芋に振ったら良い感じになりそうですね。


 魚も十分に焼けた様なので、塩を振って一口食べてみる。


 あ、これはうん。 淡泊でクセの無い味は、イワナそのものって感じですね。

 スープはどうだろう? 鍋をハンドルで掴みスープを飲んでみる。

 これも淡泊ながら香草の香りもよく乗って良い感じですね。


 焼いた芋に代用胡椒を振りかけて食べてみる。

 すこし甘みがあり、もちもちした食感が独特ですが、芋です黒いけど本当に芋です。 

 葉のサラダもみずみずしくて、ピリッとした辛さがあっておいしい。


ポン♪

「黒き森の恵み、気に入った様で何よりだ」


 異世界でのサバイバル生活に不安がありましたが、なんとかなりそうですね。

 あとは、赤鬼さんが意識を取り戻して友好的なファーストコンタクトがとれるかどうかが心配ですが、どうなることか……


  拾った剣を沢ですすいで綺麗に拭きあげる。 

 直刀の刃は細かい傷はあるが、普段から丁寧に手入れをしている事が素人のボクでも解るぐらいに綺麗な刀身で、握りは柔らかい革で巻かれており、束に組紐のようなモノが付いてて青い石が飾りに付いている。

 赤鬼さんの衣装もそうだけど、素朴ながらも飾りも良い趣味をしていると思う。

 出来れば仲良しになれれば良いなぁと、ボクは焚き火に木の枝を追加しつつ、眠る赤鬼さんの顔を眺めるのあった。





異世界の情報がかなり出てきました。

<シメルト>様は、魔道士から地球の主な言語ライブラリデータを受け取っていることと、橘さんの【記憶の宮殿(マインドパレス)】の書物からどんどんと知識を吸収しているため、意思疎通がかなり捗る様になりました。

私たち地球人からみて奇妙な食物が今後も色々出てきますが、<シメルト>様の導きと【解析】【分析】【知識の図書室】の三つの知恵のおかげで割とヌルゲーっぽいですが、この辺りもう少し厳しくバランスを取るべきだったかなと思ってます。


次回、ぼちぼちと赤鬼さんが意識を取り戻して、橘さんのファーストコンタクトと相成りますがどうなることでしょうか?


次回の投稿ですが、また来週週末に出来ればと思っておりますが、今夜から艦これのイベントが始まるので投稿ペースが落ちることになりそうなのでご容赦ください。


ちなみに私、十三年夏イベから横須賀サーバーで提督やってますが、ガチ勢ではないです。

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