表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/20

17:学院ダンジョン2層目_3

「『眼前の壁を吹き飛ばし、我が敵を撃ち抜く弾丸とせよ!【エアロブラスト】』!」

 後、ユウリ達は白いゴーレム集団との数度の戦闘を行い、真っ直ぐに伸びた広い通路で3体の白いゴーレムと共に赤いゴーレムが再び現れた。それを確認したフウカはその集団の先頭に立つ赤い人型のゴーレムに対し、前回と同じようにユウリを撃ち出し分断する事で対処しようとした所、魔法が放たれる寸前にユウリはサッとフウカの正面から側面へと回り【エアロブラスト】を避けた。放たれた【エアロブラスト】は、ユウリが回避した事によってゴーレムの下へと届き、赤いゴーレムを奥へと吹き飛ばして消えた。


「ちょっとユウリ!避けないでよ!」

「えっ…やだ」

 避けられたことが意外だったのか、フウカは少し怒ったような声をあげ、それに対してユウリは、まさかそんな文句を言われるとは思わず、驚いて普段意識して付けていた語尾を忘れ素の返事を返した。


 だが、フウカとしても拒否されるとは思わなかったようで、「なんで!?」と驚いたように問い、それに対してユウリは「なんでって…えぇ…」と呆れながら軽く握った手を口元に当て、「うーん…」と唸りつつ少し考えてから「そうだなぁ…」と言いながらユウリは前方のゴーレムの内の1体に指を差して、フウカにそのゴーレムを見るよう促した。

彼女が指差ししたゴーレムは、ずんぐりとした人の姿をしており、前回ユウリが撃ち出された先に居た白いゴーレムや、先程ユウリの代わりに吹き飛ばされた赤いゴーレムとは体形も装備も違うが、他に近い型のゴーレムはこの場に居ないのだ。


「想像してみてよ。もしあのゴーレムがが物凄い速さで迫ってきたらって。しかも避けようとしても身体が思うように動かなかったらって。…怖くない?」


 今しがたフウカが付近のゴーレムに対し攻撃を仕掛けた事により、彼女達を攻撃対象と認識してのそのそと緩慢な動きで近づいて来ているそのゴーレムだが、それがもし何らかの理由で猛スピードで眼前に迫ってくるのであれば、それは確かに怖ろしい光景であろうことはフウカの隣で聞いていたリグレスにも想像が付き、彼はブルリと身を震わせた。


 そもそも自身に向かって物体が迫ってくるというのは、それだけで多少なりとも恐怖感を覚えるものなのだ。更にそれが速く、自身よりも巨大で頑丈なモノに見えれば尚の事である。前回はユウリの方がが硬く頑丈であった為に、衝突した際にはゴーレムが砕けたのだが、それとこれは別である。


 ユウリは「あっ…」と小さく声を漏らしたフウカに、自分が言いたい事を理解してくれただろうか?と思いつつも、「それに前は砕けたからいいけど、砕けなかったら()()なるんだよ…」と、先程吹き飛ばされた赤いゴーレムへと指差ししたままの手をずらしながら続けた。


その赤いゴーレムだが、吹き飛ばされた際に更にその奥に居たずんぐりとした人型の白いゴーレムへと突き刺さっており、【エアロブラスト】の勢いによって仰向けに倒れたその白いゴーレムの腹部で、ジタバタと宙を蹴って白いゴーレムを揺らしていた。


どうやら、フウカから赤いゴーレムまで距離があった為に魔法の威力が減衰してしまい、吹き飛ばされたゴーレムは衝突した白いゴーレムを貫通する事も、粉砕する事も無く、頭が半分程背中から突き出し、そこ以外の上半身が完全に埋まった状態で止まってしまったようだ。突き出た頭を支えに白いゴーレムの身体は僅かに浮き上がっており、それによって揺らす事は出来ているのだが、その揺れによって白いゴーレムの身体が横向く事は無く、横向かない以上立ち上がる事もできない。


 ゴーレムが刺さっている方のゴーレムは停止しているのだが、腹部に脚などという想定外の部位が生える自体には対応しておらず、動いたところで倒れた状態から起き上がる事が無いので、刺さった方のゴーレムが宙を蹴り続ける羽目になっていることに変わりはないだろう。また、立ち上がった所で自身以外の脚が腹に生えた不安定でのろまなゴーレムと、そののろまなゴーレムに移動を任せなければらない腕が使えないゴーレムだ。倒れている事で弱点である頭部が隠れ、攻撃しずらい今よりも弱い可能性が高い。


"抜いて助けてあげよう"などという気は誰にも無いのだが、狙ってそうなったわけではなく、偶然そうなっただけだという不憫さに「うわぁ…」と若干哀れむような声が後ろで聞いていたリグレス達から漏れる。


「ごめん…」

「いいよ、どうもなってないしね」

フウカはもがくゴーレムを見ながら自身の所業に若干引き、"これがもし人だったらどうなっていたか"という事に思い至り、ユウリへと謝罪する。動く石人形であるゴーレムは埋まった所で身動きが取れなくなるだけだが、人であれば窒息する危険性があるのだ。フウカの謝罪を受け入れるユウリからは、ほっとしたような気配が感じられた。


 ユウリがゴーレムに向けて撃ち出す際に使われた魔法【エアロブラスト】だが、基本的には魔法使いが接近してきた敵を引き離したり、前方の物体をその背後の敵へと衝突させる為の()()魔法だ。基本的な効果は"直線状に突風を発生させ、命中した対象を大きく吹き飛ばす"というものではあるのだが、背後に別の敵や壁がなくともダメージを与える為かその突風には風の刃が内包されており、実際には命中した対象を風の刃によって何度も斬り刻みながら吹き飛ばす魔法である。


斬り刻む効果自体はそれが目的の魔法ではない為、威力は低いのだが、魔法に込める魔力が多ければそれだけでも十分な威力を持つ事があるのだ。今回、及び前回は、フウカが撃ち出す事を目的とする詠唱を行っていた事もあり、風の刃は布一枚切り裂くことも出来ないほど弱いものだったが、決して味方に向けて放つような魔法ではない。


 さて、先程ユウリが指差した白いゴーレムだが、彼女達が話し合っている間に数メートル手前まで近づいて来ており、その事に気付いたフウカ達が慌てて武器を構え直していると、突然ゴーレムが足元から白い光に照らされ始め、光が治まると共に現れた石の柱によって打ち上げられた。


突然生えた石柱にユウリは何が起きたのか?と石柱が生えた地面を見ると、そこには魔法陣らしき円形の模様が見え、その端から伸びた線の上には同じグループの男子生徒が杖を構えて立っていた。どうやら石柱は彼によって描かれた魔法陣の魔法であるようだ。


ユウリ達が余所見をしている間にも、彼は接近してくるゴーレムへの対処を準備していたようで、描かれた魔法はその場に石柱を生やす。というシンプルな効果の魔法陣だが、その生成速度はとても早く、地面から伸びるように生えてくるその石柱は、途中で折れてしまわない限りどれ程重い相手であろうとも強引に打ち上げる事が出来る。


打ち上げられたゴーレムはそのまま空中に放り出され、ゴンッと硬い音を立ててユウリ達の前に落下した。落ちたゴーレムはその衝撃によって脚部と頭部が破損したようで、落下時の体勢のまま停止し起き上がる事は無いようだ。赤いゴーレム以外はずんぐりとした遅いゴーレムであった為、その後残ったゴーレムに苦戦する事なくあっさりと勝利した。


唯一、ゴーレムに突き刺さったままの赤いゴーレムは、止めを刺そうとした際に脚をばたつかせ抵抗を試みた為、多少苦労はしたが最後まで脱出する事は無く、リグレスとディックの2人掛かりで停止した白いゴーレムを立ち上がらせ、その背中に突き出た頭部へとリスティーがメイスを叩きつけていた。


「どうかしたの?」

 倒したゴーレム達から魔石を取り出す作業の最中、ユウリは自身の持つメイスを見つめ立ち尽くすリグレスに気が付き、何らかの問題が起きたのではと、彼に声を掛ける。筋力の低いユウリは、ゴーレムの硬い身体を傷付ける事が出来ない為、戦闘によって魔石が外れかかっている残骸からの回収しか出来ず、それらを集めきった後暫くは基本的に暇なのだ。


「ん?…ああ、これ」

声を掛けられたリグレスは、一瞬だけ何のことだろうか?という反応をしてみせたが、すぐに気が付いたようで、ユウリに対して見せるように自身のメイスを差し出す。ユウリはその差し出されたメイスを少し眺めた後、そのメイスが僅かにに欠けている事に気が付いて納得したように「あー…折れたんだね」とメイスを見ながら言った。


 ユウリが『折れた』と言った事からも判るように、リグレスのメイスは折れていた。と、言っても、折れたのはメイスの先端のある円錐形の突起部分だけであり、打撃部はしっかりと残っている為、ほんの僅かにリーチが短くなっただけで使用に問題は無いだろう。


「…壊れかけじゃない」

「壊れかけって…先が折れただけだろ?」

何時の間にか2人の傍に来ていたリスティーが、リグレスのメイスを見て壊れそうだと言う。先端が折れただけでそこまでではないだろうとリグレスとユウリは思ったのだが、リスティーはその折れた突起の根元を指差しして「ほらここ、割れてるわ」と言った。


「うわマジか…」

「気付かなかった…」

その指差しされた場所をよく見ると、頭部と突起の根元に沿って半円状の割れ目が出来ており、その割れ目の両端から柄に向かって、細く長い罅が出来ていた。罅はメイスの頭部から柄に届きそうなほど伸びている事から、そう遠くない内に頭部が割れ、壊れて使えなくなってしまうであろう事が窺える。2人は指摘されて初めてその割れ目に気が付き、驚いていた。


「いつから?」

「割れてるのはわかんねぇけど…さっきなんかパキッて音がしたから、折れたのは多分そんときだな」

彼の推測通り折れたのはつい先ほどの事であり、折れた先端は今しがた倒したゴーレムの破片と共に辺りに散らばっており、よく捜してみれば金属片を見つける事が出来るだろう。


「てかお前のもボロボロじゃねぇか」

「あら?本当ね?」

 そう言ってリグレスが指さしたリスティーのメイスは、リグレスのメイスとは違い欠けている部分は無いのだが、細かな罅が万遍なく広がっており、彼のメイスよりも先に壊れそうに見える。指摘されてその事に気が付いたリスティーは、自身のメイスを見てきょとんとし、更に自身のメイスの方が損耗が激しいようにみえる事を不思議に思い「何故かしら?」と首を傾げつつ呟いた。


こちらはリグレスの物とは違い、強い衝撃を受けて脆い部位が割れたわけではなく、繰り返し使用された事で耐久値が減ったが為に発生している罅なのだが、ユウリを含めたこの場に居る全員がその違いに気付くことはない。もしその事を知る期会があるとすれば、それは修理の為に武器の状態を知る事の出来る人物へと見せ、原因を伝えられた時だろう。修理に出すよりも新品を買った方が安く確実なクロスボウしか持っていないユウリには恐らく一生こない期会だ。因みにそのクロスボウだが、草原の魔獣に対しては放った矢が刺さる為、ユウリ自身の力で叩くよりも簡単に魔獣を狩る事が出来るので、彼女からは重宝されている。


「…今日は此処までにするか」

 リグレスとリスティーの2人が持つメイスが割れていることに加え、ついでとばかりに確認したディックの大剣からも罅割れが見つかった事から、ユウリ達はこの日は此処までにして戻ることにした。


 昼食前の時間であった為、ユウリ達は昼食の相談をしながら広間へと戻ってくると、丁度そのタイミングで転移によって送られて来る部屋の扉が開いた。


「ん?お前達、もう帰りか?」

開いた扉から出てきたのは、ユウリ達"冒険科"の担任教師であるロントだ。彼はすぐにユウリ達に気が付き声を掛けた。ユウリ達が戻ってきたと知っているのは、彼がユウリ達に気が付いた時はまだ彼女達がダンジョンの奥へと続く通路から出て来ている最中であり、グループの最後尾が広間に入っていなかったからだ。


「おや先生。そうだよ」

「…まだ昼食には少し早いはずだが…なんかあったのか?」

 ユウリがロントの問いに肯定する事で答えると、彼は少し考えるような素振りを見せ、不思議そうに尋ねた。ロントからは誰一人として疲労しているように見えず、何故か一人だけ全身に白い粉が付いている事を除けば、万全の状態に見えるからだ。


「2人の武器が壊れそうなので…」

ユウリ達がリグレスとリスティーの武器が壊れそうだと言う事を伝えると、ロントはどこかほっとしたような、少し残念そうな、そんなどちらとも言えないようなニュアンスで「そうか…」と言った。


「先生はどうかしたの?」

「中で問題が起きたらしくてな。何があるかわからんから一応外に出ておいてくれって伝えに来たんだが…」

ユウリ達がロントが来た理由を尋ねると、自分達とは別の場所で何かがあったらしいことと、それによって避難指示が出ている事を伝えられた。だがユウリ達はこれから帰る所であり、必要も無いのに態々首を突っ込もうなどとは思わない。


途中で止めたロントの「俺達出る所だしな…」と頷いて「必要なかったかもしれんな…」と付け足した。


起動し上昇し始めた床を見ながらロントは「ああ、そうだ」と何かを思い出したように呟くと、視線をユウリへと向けながら「何か悩みがあるなら、ちゃんと相談するんだぞ?」と言い残し、1層目へと昇って行くユウリ達を見送った。


「…なんか勘違いされてる?こんな(粉塗れ)だし」

「かもな…」

ユウリは自身が見られている事には気が付いたが、唐突であった事と考える時間が無かった為に何を言われているのかわからず、その時は「えっ?…ああ…はい?」と曖昧に答えたのだが、昇降機の上昇中、ふと現在の自身の姿を思い出して、"虐められているのでは?"と心配されている可能性に思い至り、それを聞いたフウカ以外の5人が同意した。


粉はゴーレムを破壊した際に付着したモノであり、リグレスやリスティー達にも付着してはいるのだが、それその殆どは部位は武器や腕などに集中しており、ユウリのように全身には付着していない。これは彼女が【エアロブラスト】によって飛ばされ、体当たりでゴーレムを粉砕した為であり、そうでなければ普通全身に付く事はないのだ。勿論、【エアロブラスト】によって飛ばされる事自体普通ではないのだが、それに関してはユウリ達の中で既に解決している為、彼女にとってロントに相談するような事は何もない。


その後1層目を歩き、ダンジョンの外へと出たユウリ達は、入口のすぐそばにある事務室の受け付けへ行く。ここにダンジョン内で得た薬草や魔獣の一部を提出する事で、彼女達に与えられた課題が達成されたり、評価に加点されたりするのだ。そこで受け付けの女性に今回倒したゴーレムや魔獣の魔石の確認をして貰っていると、女性の後ろ、事務室の奥に見える廊下を歩くロントの後ろ姿を見付けた。


「あれ、先生いつの間に…」

ダンジョンの2層目で会ったロントが、ユウリ達よりも先に校舎内にいるという事は、彼は昇降機によって1層目の草原を進み校舎へと戻った彼女達を何時の間にか追い越していたという事である。ロントはユウリ達よりも長く生きている為、彼のステータス次第ではありえなくもないのだが、迷路内でのトラブル解決に来たと言っていた彼が、ユウリ達よりも早く校舎内に戻っているのは不自然に思えた。


「…私達が最後だったのかな?」

不自然ではあるが、あり得なくはない。そこでフウカが自分達が最後だったのではないかという仮説を立てた。確かに彼女達のグループが最後の1つだったならば、彼はユウリ達と別れた後すぐに帰っていても不思議ではないだろう。


「そうだったら一緒に戻っても良かったと思うんだよ」

しかし、それならば最初からユウリ達と共に1層目へと戻った方が早いだろう。ユウリはその事を言い、フウカの仮説に否定的である事を示す。


「そうだよなぁ…てか先生の服綺麗じゃなかったか?」

「そう言われてみれば確かに、黒くなかったわね?」

そのユウリの意見に同意しつつ、リグレスはまた別の疑問点を述べ、リスティーが補足する。現在のダンジョン2層目の入口付近は煤だらけであり、近付くだけでもどこかしらに黒い汚れが付く。ダンジョン内で出遭ったロントにはその煤の汚れが彼の靴や袖に付いていたのだが、今しがた見かけた彼には何処にもその黒い汚れは無かった。


であればその汚れは何処に行ったのか。着替えたのか?等と憶測を並べていると、それまでずっと黙っていたリスティーと同室である女子生徒が「【洗体(クリーン)】で落とせば良くない?」と魔法で綺麗にしただけなのではないかという可能性を上げた。


洗体(クリーン)】の魔法は洗体と字面だけ見れば身体を洗い綺麗にするだけの魔法なのだが、その効果は以前説明した通り洗うだけに留まらず、寝癖を直したり髭を剃ったりと身嗜みを整えてくれる効果があり、その中には服に付いた汚れを落とす効果も含まれているのだ。といっても、落とせるのは手で払い落とせる程度の汚れまでなのだが、軽い煤汚れであれば問題は無い。問題はその為に【洗体(クリーン)】のスクロールが必要な事だが、スクロールの作成に必要な洋紙は学院内で売られている為、【洗体(クリーン)】の魔法陣が描けるのであれば入手も難しくないのだ。


彼女の発言から他のメンバー全員がその事に気付き、確かにその可能性が高そうだと気付き納得していると、傍で提出した物の確認作業をしていた受け付けの女性が何かに気付いたようで「あら?」と声を上げた。首を傾げる女性が見つめる先には3粒の魔石があり、その魔石に何かがある事はユウリ達にもすぐに察する事が出来た。


「これは…このダンジョンの物ではないですね。どこから持って来たんですか?」

「…ダンジョンでしか倒してない無いはずだけ…ですけど…」

リグレスは「えっ?」と驚きつつも普段通りの口調で言おうとしたが、途中で女性が睨んでいる事に気が付き、そこから丁寧語に言い直した。その受け付けの女性は感情がとても判りやすく、機嫌が悪いと鬼のような形相で荒々しく対応されるので怖いのだ。


自身を睨む女性から逃げるように振り返ったリグレスからの「誰か心当たりあるか?」という質問に対してディックが「赤い奴から出たのがこんな感じじゃなかったか?」と言うと、ムッとした表情をしていた女性はぽかんとして「赤い奴…ですか?」と言った。

訊ねるように言った女性を不思議に思いつつもユウリが「赤いゴーレムが居たんですよ」と言うと、女性は「赤色のものは無かったはずですが…」と答えつつ、自身の足元から1冊の資料を取り出した。


「少し待っていてください」

そう言って女性は取り出した資料を暫くの間パラパラと捲っていたが、やがてパタンと閉じて「やはり、赤色のものはないようですね…誰かの悪戯でしょう」と言った。女性が取り出した資料はダンジョン内の事柄に関する資料であるらしく、その資料によるとどうやら学院が配置したゴーレムに赤色は居ないはずなのだそうだ。


「じゃあこれは…」

どうなるのだろうか?ユウリはそう思って口にした一言だが、それを聞いてすぐに受け付けの女性は「この魔石は評価対象外になりますね」と言った。

本来は赤色のゴーレムが居ないという事を聞いた時点で、ユウリは加点されない可能性を考えてはいたのだが、実際されないという事が伝えられると残念そうに「そうですか…」と納得しつつも呟いた。彼女がすぐに納得したのは、魔石は魔法陣を動かす電池のようなモノとして普通に売られている為、これを評価に入れてしまうと、後々学院のダンジョンで入手したものではない魔石をダンジョンで手に入れたと嘘をついて持ってくる生徒が現れるであろうことが想像出来る為だ。


査定が終わったユウリ達が去った後、受け付けの女性はユウリ達が残していった件の魔石を摘み首を傾げながら「報告して置くべきかしら…?」と独り言ち、報告の為に書類を用意し始める。ユウリ達の話が本当であれば、他にも外部のゴーレムが交じっているかもしれないからだ。外部のゴーレムは学院のゴーレムとは違う設定をされている可能性が高く、彼女達の話からはそれ程脅威には感じられなかったが、全てのゴーレムがそうであるとは限らない為、用心して置くに越したことはない。

その時書類を書く時女性の後ろ、先程ロントが歩いていた廊下が、彼の向かって行った方角からピカリと青白い光に一瞬照らされたのだが、既にこの場に居ないユウリ達は勿論、受け付けの女性も気付く事は無かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ