16:学院ダンジョン2層目_2
翌朝、ユウリ達"冒険科"の生徒は昨日と同じようにロントを先頭にダンジョン内の草原にある階段を降り、その先にある広間の牛の像の横にある扉を潜ってその先にある部屋へと入った。部屋に入ってすぐの位置には全く同じデザインの石碑が4つ並んでおり、その石碑の先には透明な壁に囲まれた小さな部屋が幾つもある。
「前にも伝えたが、ここにある小部屋からは転移してダンジョンの途中にある此処と同じような広間から再開出来るようになっている」
ロントは生徒達全員が部屋に入った事を確認すると、部屋の説明をしながら入り口のすぐ傍にある石碑の前へと向かう。
「入る部屋は石碑の前に立てば、このように石碑に書かれた幾つかの文字が光るのだが、これは事前に辿り着いた広間へと転移する部屋の番号だけが光るので、部屋は自分達で確認して入るように。一応、部屋を間違えても転移は可能だが、未到達の広間へは入れないようになっているから、ズルしようなどとは思わないように」
彼が石碑の前に立つと、石碑を中心に描かれた魔法陣が起動し、石碑に書かれた文字の幾つかが光り読めるようになった。ロントは陣が起動している事を確認するために石碑を見ながら説明する。
未到達の広間に入れないと言うのは、入口以外の広間の中央にある台座に魔力を登録していなければ、広間へと繋がる扉が開かないからだ。広間へと出る事が出来なければ脱出するしかないので、昨夜のユウリ達のようにダンジョンの一層目へと移送される事となる。
その他幾つかの説明と注意を受けた後、殆どの生徒達は4つの石碑の何れかの前にグループ毎に並び、それぞれ自分達が入る小部屋を確認し、そこへ向かう。殆どと言うのは、少数ではあるがロントからの説明が終わり自由行動になると共に、部屋の外へと出たグループが居るからだ。彼らは前日にこの部屋から転移可能な広間へと辿り着けなかったか、先へ進む為の準備をする為に外へと出たのだろう。
ユウリ達のグループは広間へと辿り着いているし、全員準備も終えているので、石碑の前の列へと並び、自分達の番で光った番号を確認して同じ番号が書かれた扉の小部屋へと向かう。
小部屋の中には魔法陣があり、ここの魔法陣から目的の広間へと転移するようだ。小部屋の扉は広くない為、ユウリ達は1人ずつ順に中に入り、全員が中に入った事を確認して内部に書かれた魔法陣に対して魔力を流した。
…のだが、何も起こらない。小部屋は透明な壁で囲われている為、内から外の様子が確認できるのだが、小部屋の外には先程確認した石碑があり、その近くでロントが生徒達を見守っている様子が見えるので、ユウリ達が気付かぬほど一瞬で転移したわけでもないようだ。
「…何も起こらねぇな?」
「…扉を閉め無いと駄目だって先生言ってたじゃない」
リグレスの疑問に対してリスティーはすぐにその原因に気が付き伝える。最後に小部屋に入ったのはリグレスなので、その事を指摘された彼は「おぉ!」と驚いたような反応をみせた後、「忘れてた!」と言いながら数歩ほど飛び跳ねるように走って部屋の扉を閉める。
その後戻ってくる彼の姿に悪びれた様子は無く、歩きながら「ごめんごめん」と軽く謝るリグレスに対し「全くもう」と呆れたような態度をとるリスティーの様子があった。
扉が閉まり、全員が陣の中央付近に立った事で扉の上部に取り付けられたランプが緑に光る。このランプは魔法陣が起動可能である事を示すものだ。これが光る事で陣の模様が完成するようになっている為、光っていない間は転移をする事が出来ない。
2日目なのでグループによって入る部屋が違う為、今回はあまり気にする必要性は無いが、これは魔法の起動中に陣の中を出入りしたり、連続して同じ場所に転移を行ったりとした際に起こる事故を防ぐ目的の仕様であるらしい。
陣を起動すると共にユウリ達は、周囲が見えなくなる程の強い光に包まれると共に僅かな浮遊感を感じる。
光が治まり始めると周囲が見えるようになり、目の前にはダンジョンの壁しかないが、光に包まれる前とは別の光景がある事に彼女達は感嘆する。が、足元に広がっていた魔法陣の光が完全に消失した途端、それまで感じていた浮遊感も消え、代わりに突如として襲ってきた落下に彼女達の感嘆は悲鳴へと変わる。
「っ!我が身を飛ばす浮きとなれ!【フロート】!」
落下の直後、自分達が落下している事に気が付いた他のグループメンバーが悲鳴を上げる中、フウカは反射的に魔法を掛け浮遊する。
だが、魔法は自らにしか効果は無いようで、フウカ以外の6人はそのまま落下し、柔らかい何かにぼすんと受け止められた。その際にリグレスが「ぐぇ」と苦しそうな声を上げたが、フウカ以外の5人が気付くことはない。
「…大丈夫?」
6人が落ちたのは硬い地面の上では無く、巨大なマシュマロのようなクッションの上であり、落ちてすぐにその事に気が付いたユウリがそのクッション感触を確かめるようにグニグニと押して触っていると、魔法の効果によって浮遊し、落下を免れたフウカが、6人の後からゆっくりと降りながらユウリ達へと声を掛けた。落ちてすぐに起き上がったユウリは聞かずとも無事である事は判ったが、他の5人は大きな怪我はしていないように見えるが、遠目からでは判断が付かなかったからだ。
「…一人だけズルい」
「そう思うなら覚えなよ…」
フウカがふわふわと降りて来る彼女を見て不満を零すユウリに対して、呆れたように返しながら残りの5人に近付いてみれば、落下の際にリグレスが落としてしまった投擲用の石が彼の腹部に落ちており、その衝撃によって彼が呻いている事を除けば、全員無事であるようだ。
フウカが使った【フロート】という魔法は、村に居た頃から彼女はユウリに対して教えていたのだが、浮遊するだけの魔法をユウリが面倒臭がって覚えなかったのだ。呪文の発動自体は可能なのだが、詠唱が無い、もしくは無茶苦茶な彼女の呪文の効果は正しく発揮されず、彼女の周囲の物や服や身体の一部分だけが魔法の影響を受けてふわふわと浮きやすくなってしまう。
フウカとしては、教えたにも関わらず覚えなかったユウリに非があると思っているし、何事も無かったのだから、そんなに不満そうに言わなくとも良いじゃないか とも思うが、落下地点にクッションがあったとはいえ、全くダメージを受けていない訳では無いという事も理解している。
ユウリに関しては落下の影響が見られないので、放っておいても良いかもしれないが、他の5人に関してはリグレスのように上から物が降って来ずとも、起き上がった後、違和感があるのか首や背中をさすっており、多少の影響はあるようなので、落下そのものからの防御手段があった方が良いだろう。
そんな彼ら彼女らを見ながらフウカは、この日の攻略を終えた後で近日中に勉強会を開く事を提案しよう。そう決意しつつ地面に魔法陣を描き、リグレスに回復魔法を掛け彼を起き上がらせる。フウカは回復魔法を呪文によっても使う事は出来るのだが、魔術の方が魔力消費が少ないのだ。
その後全員がクッションの上から降りて部屋から出、分岐のある通路を真っ直ぐ進み、扉を開けて部屋から出ると、そこは先程彼女らがロントから説明を聞いた迷路の入口の広間ではなく、迷路の途中にある広間の中だ。中央にある魔石は既に彼女達の事を記録しており、昨日彼女達が辿り着いた広間である事を示している。
その事を確認した彼女達は、自分達が昨日半日ほどかけて通ってきた距離を魔法によって一瞬で移動したという事を認識し、驚きと感嘆の声を上げる。昨夜の帰還の際には、転移ではなくエレベーターによる移送であった為、彼女達はこれが初めての転移だ。
広間に出た彼女らの前方には1本の通路があるが、そこは昨日通って来た道であり、進行方向は今しがた通ったばかりの扉の隣にある複数の通路なので、一度広間で後ろへと振り返ってから進む。たったそれだけの事ではあるが、重要な事だ。ここで間違えるとこの日、丸一日を無駄にすることになってしまう。
「なんだ?あいつら…」
「急に強そうな感じになったね?」
進行方向を間違える事なく先の通路へと足を踏み入れたユウリ達は、その通路に入ってすぐの広場に3体の石のゴーレムを発見した。単に石のゴーレムを発見しただけであれば、材質が変わっただけなので気にする事は無いのだが、そのゴーレム達はそれまでのゴーレムとは違い武装をしており、更に3体のゴーレムの内の1体だけが赤く、他の白い2体よりも強そうに見えた。
「3体居るが…どうする?他の道探すか?」
単に石製のゴーレムと言うのであれば、人型のゴーレムである事もあり、材質以外の変化は無いのだが、それまでは無かった石の鎧を身に着けたゴーレムが3体もいる事で、ユウリ達は警戒する。他の道というのは、広間へと戻れば別の通路から進むことが出来る可能性がある為だ。
「とりあえずやってみて、それから考えりゃぁいいんじゃねぇか?どうせこの後も出んだろ?」
「ディック…いやまぁそうなんだけど…やるにしても無策は不味いと思うよ?」
"ディック"と呼ばれたグループの男子生徒の"どうせこの後も出る"という一言にはグループ全員がそうだろうとは思うが、だからと言って初めて見る相手、それも複数の相手に何も考えずに突撃するのは危険だろう。もう一人の男子生徒がディックに警戒を促す。
「大丈夫大丈夫!死なねぇって先生言ってたし!」
死なないから大丈夫だと豪語するディックに他のメンバー全員が彼を見て唖然とした。確かにロントはゴーレムは行動不能になった生徒に攻撃しないという事は説明したのだが、それは動ける状態であれば攻撃をするという事であり、それによって死なないという保証はない。
また、攻撃対象から外れたからといって何か不思議な力によって保護されるわけではないので、巻き込まれる可能性がある。勿論その事はロントから説明されており、周囲には気を付けるよう注意喚起が行われているはずなのだが、ディックは聞いていないようだ。
「…まぁいいか、やるとしたら2・2・3で分けてそれぞれ1体ずつ…はきついか?」
暫しの沈黙の後、リグレスはディックの発言を無視する事にして話を進める。ディックは大剣使いであり、ユウリ達のグループ唯一の純粋な攻撃役なのだが、物事をあまり深く考えない彼1人の為に説明するのが面倒なのである。リグレスが提案した分け方は、ユウリ達のグループには3人の前衛と4人の後衛が居る為、3人がそれぞれ1体ずつゴーレムの相手をして倒すというものだ。
「私とリグレス、後誰がやるのよ…それに私1人であれを抑えられる自信、ないわよ?」
しかし、その内役は前衛は盾役が2人と攻撃役が1人、後衛は攻撃役と補助役がそれぞれ2人ずつという3つに分けるにはバランスの悪いものである。また、前衛の盾役2人どちらもそれが主な役割という訳ではなく、あくまでもそういう風に戦う事が出来るだけであり、その盾役であるリスティーは否定的なようだ。
「もう1人はユウリに頼もうと思ったんだが…駄目か?」
「ユウリに?」
ユウリの名前が挙がった事で、リスティーはこいつは何を言っているのかと訝しみ、自分の名前を呼ばれたユウリは「私?」と呟きつつ少し意外そうに彼を見た。
「俺はこいつが怪我をしてるところを見た事が無いんだが…他の皆はあるか?」
「…無いわね」
ここでユウリの名前が挙がったのは、リグレスはこれまでの活動の中で、彼女が護りに秀でている事を何となくではあるが、察していた為だ。彼はユウリが怪我をしている姿を見た事が無く、リグレスの疑問にフウカ以外のメンバーは少し考えて"そういえば…"とユウリを見る。
「…まぁいいけど。…私と誰かがどれか1体ずつ抑えてその間に1体、倒したら片方そっちにやってもう1体…で、いいんだよね?」
「それなんだけど、2体両方同時には出来ない?」
ほぼ全員の視線が自身に集まった事にユウリは少し戸惑い、「はぁ…」と一度溜め息をついてからユウリは自分の役割を確認すると、そこにフウカが割り込みユウリが2体両方の相手をする事を提案する。
「んー…出来なくはない…かな」
「そう?なら任せても良い?」
その提案に対してユウリは、少し思案してから答える。少し曖昧に返答したのはゴーレムの強さが不明だからだが、少なくとも彼女自身の耐久性能を越えて来ることはないだろうと思い了承する。
「大丈夫なのか?」
「抑えるだけなら何も問題は無い…けどどうやって1体だけ引き離すか…だよね…」
同時に2体も相手に出来るのか?という心配だが、そこに関してはユウリには何の不安要素も無い。
リグレス達はユウリのステータスの詳細情報や魔技の事までは知らないが、なんの気兼ねもなく引き受ける彼女を見て、本人が出来るというのであれば恐らくそうなのだろうと任せる事にして残りのメンバーの役割を確認する。
「よし!こっちは準備出来たぞ!」
「じゃあ行くよ。『風よ、筒となりて撃ち出す砲となれ』」
「…え?」
そうして準備を完了した後、リグレスが合図を送るとフウカはユウリの後ろに立ち魔法の詠唱を始めた。
「『眼前の壁を吹き飛ばし、我が敵を撃ち抜く弾丸とせよ!』」
それに対してユウリは暫くの間、彼女が一体何をしようとしているのかわからず呆けていたが、詠唱が終わる直前にその意図に気がついて顔が引き攣り、フウカから離れようと走り出した。
「『【エアロブラスト】』!」
が、しかし。気が付いた時には既に時遅し。走り出した直後に放たれた魔法はユウリをゴーレムへと撃ち出し、撃ちだされたユウリはその速度に悲鳴を上げながらフウカの狙い通り3体のゴーレムの内の1体、白いゴーレムへと衝突する。残念ながらユウリはゴーレムが持っていた盾によって防がれたが、その勢いまでは止め切れず、そのまま後ろの赤いゴーレムを巻き込んで遠方の壁に激突して白い煙を上げた。
「…い、今のうちにやるわよ!」
ユウリを弾として撃ち出すという予想外の方法にリグレス達は呆然としたが、結果としては予定通り白いゴーレム1体だけが引き離された。ユウリが煙で見えなくなって暫くして気を取り直したリスティーが、フウカ以外のメンバーに声を掛け走り出す。
残ったゴーレムは猛スピードで傍を抜けて行ったユウリを追いかけるように後方を見ていたのだが、リグレス達の接近を感知し、彼らの方へと向き直る。それに対してリグレスは走りながらチッと小さく舌打ちをし、隣のリスティーへと目配せをした。
リスティーはその視線に気が付き走りながら小さく頷くと、走る速度を上げて先頭を走っていたディックよりも前に出てゴーレムへとメイスを叩きつける。当然ゴーレムはその攻撃を自身の手に持つ盾で弾き返すのだが、その後にリスティーへと突き出されたハルバードを狙って振り抜かれたリグレスのメイスによってゴーレムは大きく隙を晒し、そこを脳天から叩きつけられたディックの大剣によって頭部を砕かれた事によって崩れ落ちた。
「終わったぞ!」
最初の一体を難なく倒した事でリグレスが遠方で赤いゴーレムの攻撃を跳びはねて避けたり、腕で受け止めたりとしながら逃げているユウリへと声を掛ける。もう一体のゴーレムである白いゴーレムはというと、何故か盾を持っていた腕が無く、バランスが悪いのかふらつきながら2人の後ろを走っていた。
ユウリはリグレスから声が掛かると先程までよりも少し速度を上げ、リグレス達の前を赤いゴーレムに追われながら通り過ぎる。その後ろから走って来た白いゴーレムはユウリからリグレス達へと狙いを変え、走りながらハルバードを突き出してきた。
その突きを避けながらリグレスは何故このゴーレムは盾を持っていないのかと疑問を抱きながらユウリ達が来た方向を見れば、その先の壁には何やら大きな穴と赤い破片の混じった白い瓦礫が残っており、どうやら最初に壁に激突した際に砕けたようだと察する。
ゴーレムの身体が砕けるような威力で撃ち出されたにも関わらず、今も平然とゴーレムの猛攻を耐えるユウリにリグレスは驚愕するが、彼は今は目の前の事に集中しようと気にしない事にした。その後バランスの悪いゴーレムは自身の攻撃によって転び、そこを狙われた事であっさりと倒された。
最後の1体はとユウリの居る方へと目を向ければ、リグレスたちが見た時には既に赤いゴーレムは四肢失い横倒しになっており、そんなゴーレムに対してユウリは、手に持ったクロスボウの矢でゴーレムをガリガリと削っていた。ユウリの服の袖には擦り切れたような穴が空いており、そこから赤く腫れた腕が見えるが、それ以外に目立った外傷はないように見える。
ユウリがゴーレムを削っているのは、ゴーレムの内部にある魔石を取り出す為にはゴーレムが停止している必要性があるのだが、殆ど胴体と首だけのゴーレムは停止しておらず、動けなくなったゴーレムを破壊する為だ。
停止させるにはゴーレムの体内にある魔石を取り出すか、停止するまで身体を削り落とすかしなければならないのだ。矢は魔技によるコーティングがされている為、簡単には折れないようになっているが、そもそもユウリの力があまり無く、表面を僅かに削るだけであまり効果は無い為、手こずっている。
ユウリの服が破れているにも関わらず怪我をしていない理由については、単に服の耐久値よりも彼女の生命力が高く、傷を負うよりも先に攻撃を受けた部分の服が破れてしまったというだけだ。魔技による防御はしてはいたのだが、それでも完全に防げるわけではない。
反対にゴーレムがボロボロである理由については、ゴーレムの耐久性能以上に攻撃が強く、その反動を一切軽減する事なく何度も受けた為だ。巨大な武器を持つゴーレムはその設計上、想定以上の耐久力を持つ相手に対して非常に弱い。
巨大な武器と言うのは大きさ故にどうしても重くなってしまう為、両手で使用する事を前提に作られているのだが、何らかの理由によってゴーレムはハルバードを片手で使用している。重量武器を片手で使用しているという事はつまり、武器が何らかの理由で軽くなっているか、使用者がそれを可能にするほど力が強いという事だ。
軽くなっている場合、材質や構造で補強されていない限りは脆くなるのは当然の事だ。この場合は重量と共に威力が低下する為、使用による消耗にはそれほど影響はないのだが、力が強い場合はそうではない。武器の消耗は攻撃対象の強度に影響されるが、それと同じくらい攻撃時の威力にも影響されるのだ。力の強い者が扱えば威力は上がるが、それだけ消耗も激しくなってしまうのだ。
それでも1戦闘、1グループ最大8名の生徒達を相手に出来るだけの強度はあったはずなのだが、まさかゴーレムの攻撃を真正面から受け止めて戦うような生徒が現れるとは思っていなかったのである。
単調な動きをする事からも分かるように、このゴーレムは攻撃を躱して次の動作を行うまでの隙に叩いて倒すという想定で作られている。想定では数度直撃すれば生徒は戦闘不能になる為、武器が壊れる前にゴーレムが勝って戦闘が終わるはずだったのだが、ユウリの魔技による防御と生命力は、"生徒はゴーレムの攻撃を耐え続けられない"という前提をあっさりと崩し、そのまま決着が着くよりも先にゴーレムは自らの武器を壊してしまったのである。
一応、ゴーレムは武器を失っても徒手空拳による戦闘が可能ではあったのだが、武器を失ったゴーレムは攻撃の威力を落としてしまう為、ゴーレムは武器を失う以前よりも弱くなり、ユウリに碌なダメージを与えられないまま自らの手足を破壊したのだ。
既に勝敗は決しているしているのだが、残念ながらゴーレムには自身の行動不能を認識する機能は付いておらず、四肢の失われたゴーレムは残った僅かな部位で抵抗しようと蠢いている。ディストの時と違うのは、魔技の盾が何発も攻撃を耐えた事と、ゴーレム自身が動けなくなるまで攻撃を繰り返した事だろう。
無力化しただけで、止めを刺す事は困難なようだが、それでも十二分な成果だ。いつまで経ってもゴーレムを停止させられないユウリを見兼ね、替わりにディックがゴーレムの頭を砕いて魔石を回収し、彼女達は先へと進む。
転送魔法:物体を転移させる魔法。一瞬で目標地点へと移動可能な便利魔法ではあるが、転送物や転送先の状態を一切考慮せずに転移が行われてしまう危険な魔法でもある。
【フロート】:自らの身体を軽くし、浮遊感を得る魔法。これだけでは緩やかに落下する事しか出来ない為、移動の為には何らかの方法によって推進力を得る必要がある。
【エアロブラスト】:強風を起こす魔法。詠唱によって範囲を絞る事で対象を飛ばす威力を得る事が出来、本来は味方ではなく敵や弾を飛ばす用途で使用される。




