14:武器探し
甘草以外にも、毒草の甘草モドキや他の植物、ハリネズミの針にヤギの乳と品を変え、"指定された物を期限内に一定量集めて提出する"という課題を幾度となく行った後のある日の放課後。街の中をきょろきょろと見回りながら一人歩くユウリの姿があった。
辺りを見回しながら歩いているという事は、当然何かを探しているわけだが、ユウリが探しているのは、自らが扱う事の出来る武器である。というのも先日。ロントが授業を人工ダンジョンの奥、草原よりも先のエリアを解放すると言った為であり、卒業までにダンジョンを踏破する事が、ユウリ達"冒険科"の生徒の目標であるからだ。
そしてダンジョンを攻略するためには、ダンジョン内に居る魔物と戦かわなければならないのだが、ユウリには草原の動物にさえ、まともなダメージを与えられる攻撃手段を持っていなかった為でもある。彼女の【ステータス】は生命力に偏っており、全くと言っていいほど筋力が無かった為に、剣や槍など、この世界で一般的に扱われる武器は持つのが精一杯だったのだ。
一応、ナイフや手甲鉤といった、ユウリでも扱うことの出来る比較的軽い武器は試したのだが、残念ながら彼女には、近接戦闘をする能力が無い。という事をリスティー達が認識するだけの結果となった。ただ真っ直ぐ剣を振るうだけでも、「振る直前に一瞬だけ剣を引く。もしくは動きが止まる」という予備動作が無ければ、ユウリは簡単に食らってしまう。
更に直線的で判りやすく、威力も無い彼女の攻撃は、相手に僅かな傷しか与えられない為に時間が掛かる。ゲームのモンスターであれば、決まったパターンの行動しかしないのでそれでも良いが、現実の生物は彼女の動きを学習し、回避するようになる。
動きに緩急を付けたり、フェイントを織り交ぜる事で暫くは当たるようになるが、それも次第に慣れ、あっさりと躱されるようになってしまい、最終的には相手の動きを封じなければ躱された直後に突進を何度も受け、突進によって飛ばされた事で生まれた隙に逃げられる。という事をユウリが何度も経験した所で諦めた。
接近戦闘は出来ない。という事で次に弓を扱おうとしたのだが、今度は狙いがどうこうという以前に"筋力が足りない"という問題が発生した。弓を下に向け、手に持った矢を自身の腹に向けて思いきり引く事で弦を引く事は出来るのだが、そのまま前に弓を構えられないのである。
引くと同時に前へと向ける事で前方へと放つ事は出来るのだが、そんな撃ち方では狙いなど到底つけられたものではない。狙いの定まらないまま放たれた矢は当然、何所へ飛ぶかは判らず、そんな物が後ろから飛んでくるのは不安しかないと、グループの全員から反対された。
よって現在のユウリに出来る戦闘は、彼女自身の高い耐久力を利用した、敵が自らの攻撃によって受ける反動ダメージによって自滅する事を狙うものと、敵を拘束して死ぬまで殴り続けるモノの2つだけだ。前者は敵が攻撃してこなければ成立せず、後者は時間が掛かりすぎる上に、ユウリのように生命力の高い相手には意味が無い。
人工ダンジョンの奥というのは、草原の森にある岩山には洞窟があり、そこからダンジョンの奥へと進む道があるのだ。洞窟には入口を塞ぎ隠すようにとても大きな岩が設置されている為、入口は無く、ロントが話をするまでは殆どの生徒には単なる岩山にしか見えなかった。
そして説明の後、ダンジョンを攻略するための役割分担―とは言っても、『これをする』と言えばすぐにその役割を担う事が出来るようになるわけではないので、それぞれの戦い方や得意な事から、誰がどの役を担うのかという確認にも近い事をしたのだが、その際にユウリの能力があまりにも生存に偏っていたために、役割が決まらなかったのが今現在、彼女が街中を歩き回っているきっかけとなった出来事である。
ダンジョンには複数名で挑む為、ユウリ一人攻撃力が皆無でも問題は無いのだが、かと言って何もしないという訳にはいかない。草原の時のように荷物運びをするというのも、草原が荷台を使う事が出来るほど広かったためであり、ユウリ達は入口付近しか見てはいないが、そうではない洞窟ではできないし、それが必要な程の荷物を運ぶ事もできない。
筋力が無いだけなので、筋力を使わない手段―魔法を使えば良いのだが、ユウリに呪文を扱わせることは出来ない。呪文による魔法の制御を出来ていないからだ。詠唱そのものは出来るので、後は詠唱文を覚え、それによって意図した効果だけを発揮させる事が出来れば良いのだが、それが出来ていない。制御に最低限必要な"目的の効果"を決める詠唱文さえも碌に覚えていないのだ。故にユウリの使用する呪文は彼女を中心に爆発する。
通常であれば、制御の失敗結果として発動する爆発は、制御に使われる魔力がある事と、爆風や魔力切れなどによって術者が気を失った時点で呪文への魔力供給は止まる為、小さな爆発で終わる。だが、元々制御をする気のない呪文は、発動時に彼女が必要だと思った分全ての魔力が爆発に変わり、無駄に生命力の多いユウリは爆発を受けても倒れない。
更に生命力程ではないが、ユウリは魔力も多く、彼女にとっての少しの魔力でさえ十分な威力を発揮する。よって彼女の自爆は少しでも加減を間違えれば広範囲・高威力の大爆発となり、当然それは敵だけでなく範囲内の味方をも巻き込む為、グループとしては壊滅する事になるだろう。
【ステータス】がレベルアップで能力が上がる世界ではなく、技も魔法も本人の努力によって覚える事の出来る世界である為、どちらも改善可能なのだが、それには時間が必要だ。今から覚えられる技や魔法では、フウカや他のグループメンバーの劣化版にしかならない事も、ユウリの役割が決まらなかった理由の一つだ。
その時に"妙案を思い付いた"とでもいうかの様に、リグレスが「魔力が高いのに魔法が使えないならスクロールを使えばいいんじゃないか?」と言って案を出したのだが、その案は即座にリスティーに拒否された。理由としてはお金がかかり過ぎるからだ。
確かにユウリの魔力は高い。それは入学時の測定から分かっていることであり、そこから月日が経っている事もあり、日常的に魔技を扱うユウリは、その時よりも更に多くの魔力を持っている。そしてスクロールは、使用者本人が描かずとも魔力さえあれば良いので、強力な魔法が描かれたスクロールを持たせれば、魔術も呪文もあまり覚えていないユウリでも戦力として期待が持てるだろう。
だが、戦闘に使う事の出来るスクロールは高価だ。威力の高い魔法を行使しようと思うのであれば、ユウリが【洗体】に使っているような洋紙は使えず、最低でも5枚で1日の食費が賄えるほど高い紙が必要だ。高い紙を数十枚用意するだけならば、簡単に用意できるのだが、スクロールは消耗品である。
ゲームの消耗品のように一度使えば終わり、というわけではなく。人や武器に耐久値があるように、スクロールにも耐久値が設定されており、スクロールの耐久値は描かれた魔術を発動する度に消費されるのだが、強力な魔法であるほどにスクロールの消耗は激しく、発動前にスクロールが壊れてしまえば発動しない為、同じ魔法が描かれたモノが複数枚必要になる。
たった1度、それも特定の相手に使うのであればそこまで気にする必要性は無いが、ダンジョン攻略に使おうと思うのであれば、ダンジョン内の様々なモンスターに対応する為、複数の種類を揃える事が必須であり、スクロールでダンジョンを攻略しようと思うのであれば、スクロールの準備だけで途方もない大金が必要になってしまうのだ。
当然、学生に稼ぐことの出来る金額ではないし、学院に管理されているものであるとはいえ、ダンジョンは広く、半日で攻略して帰って来る事は出来ないので、食糧や水は勿論必要であるし、地形や罠など、スクロールだけでは対処しきれない事もあるので、鞄の中身をスクロールで埋め尽くしてしまう訳にもいかない。
そういった理由から、ユウリは店頭に並ぶ様々な戦闘用のアイテムを見ながら「これは(値段が)高い」「あれは(量が)持てない」などと呟きながら歩く。ユウリのように筋力の低い人は滅多に居ないので、攻撃用のアイテムは基本的に小人向けのアイテムであり、身体が小さく軽いが為に攻撃に威力が出ず、量も持てない彼ら向けのアイテムの値段は、の平均程度の威力でもそれなりに高く、同じ威力の物でも僅かな大きさの違いで変わってしまうのである。
暫くして、街の端の方に近付いた事で外壁の陰に入り、何時の間にやら街の端まで来てしまったと顔を上げたその時だ。
「あれなら…使える……かな?」
ユウリは街の外壁の上、外へと向けて並ぶように設置されているあるモノを見つけた。それは街の防衛用の兵器であるが、練習場があると言う噂もあるので、頼めば使わせてもらえないだろうかと思い、街の門へと向かう。
門の傍まで辿り着いたユウリは、次にその傍に居るであろう兵士は何処かと辺りを見回す。別に見回さずとも門の前に兵士は居るのだが、そこに居る兵士達は検問をしている兵士であり、彼女の目的の為に手を借りる事は出来ない。
「あのっ!すみません!」
「…ん?」
なのでユウリは、手の空いている兵士を捜し歩き、門から離れるように歩きながら暇そうに欠伸をしている兵士を見つけ、その兵士へと声を掛ける。兵士は声を掛けられた事で、身体を伸ばそうと上げかけていた腕を止め、首を回してユウリの方を見た。
「あの…今、いいですか?」
兵士が自身を見たものの、"大きな声を上げたからユウリを見た"という気配を感じたユウリは、少々遠慮がちにもう一度その兵士へと呼びかける。その事でこの場に居る誰かに声を掛けているのではないかと思い至った兵士は、一旦辺りを見回し、他に人が居ない事から自身が呼びかけられているのだと気が付き、止めていた腕をゆっくりと降ろし、身体をユウリの方へと向けた。
「何かな?」
「あれって、何処かで使ったり出来ないですか?」
ユウリは目的を伝える為に外壁の上を指さししながら使えないかと問う。『あれ』と言ったのは、見つけたモノの名称を思い出せなかった為だ。
「あれ?…ああ、あれなら向こうで試し撃ちが出来るよ。案内してあげよう」
あっさりと通った事に驚きつつもユウリは兵士にお礼を言って付いて行く。
ユウリが見つけたソレは、先端がアーチ状の木で出来ており、その木の端から端へとピンっと糸が張られた弓のような形をしている。だが、ソレは弓にしては大き過ぎ、人が手に持った状態で張られた糸―弦を引くのは難しいだろう。その為、ソレには設置用の脚があり、支えていなくても立つのだが、それでも巨大な弓に取り付けられた弦は、全身を使わねば引き絞る事が出来ない。
当然ながらそんな状態で狙いを定める事は不可能である為、その弓には銃身のような物が取り付けられている。銃身の後方には巻き取り機が付いており、巻き取り機のハンドルを回す事でワイヤーが弦を引っ張られる。そして巻き取り機には、弦の力によって勝手に戻されないよう凹凸があり、その窪みに突起が引っかかる事でロックが掛かるようになっている。
トリガーを引く事でロック外れ、ロックが外れた弦はワイヤーと共に勢いよく戻り、そこに装填されている弾を弾き出し、射出する仕組みになっている。これにより、人よりも巨大な弓でありながら、弓を引き絞りながら目標に狙いを定め、射抜く事が可能となっているようだ。
ユウリが見つけたのはそんな巨大な弓の兵器―大型弩砲だ。兵士もバリスタと呼んでいたので、この世界では別の名称であったり、特別な名前が付けられていたりすることも無い。
ユウリが兵士に案内されて辿り着いた先は、奥にそれなりに高い壁と大小様々な生物の形をした的、それから幾つかのバリスタが設置されている射撃場だ。今現在の使用者はいないが、ユウリの身長と同じくらいの小さな的を除いたどの的にも既に何本かの矢が刺さっており、中には腐ったまま放置されている矢がある事から、矢の回収はあまりされていない事が判る。後で兵士に聞くと、ここで使われる矢は脆く、回収しても使用できない為、二・三か月ごとに一回、的を交換するついでに矢も回収しているだけなのだそうだ。
ユウリは案内をして貰った兵士に礼を言うと、入口付近にある受け付けで別の兵士から矢を受け取り、バリスタの下へと向かう。バリスタは、ユウリがバリスタのグリップを握ると共に、そこに描かれた魔法陣が彼女の魔力を吸い取り、ワイヤーがユウリの持つグリップの少し後ろにある巻き取り機へと自動で巻き取られる事で弦が引かれ始める。
この動作は、巻き取り機に取り付けられたハンドルを回す事でも可能なのだが、ユウリには回す程の力が無いので使う事が出来ない。よってその間、暇なのでユウリはバリスタの照準を上下左右へと動かし、後方を狙ったり、外部へと持ち出したり出来ないようバリスタは、射角制限された砲塔に固定されている事を確認した。
弦が引き絞られ、矢した事で装填が完了すると、ユウリはバリスタの照準を動かし、比較的大きな的に狙いを定めてトリガーを引く。トリガーを引かれた事で巻き取り機のロックが外れ、弦が勢いよく元の状態へと戻る。それによって放たれた矢は真っ直ぐ飛び、彼女の狙い通りの的へと刺さった。
「お、上手いじゃないか」
矢を放った後、望遠鏡のような物で矢が的に刺さった事を確認した兵士がユウリを褒めるが、彼女が狙ったのは射撃場の中で3番目に大きな的だ。バリスタを操作しているユウリの位置から見て、的の傍に立っている兵士が、自身の指程の大きさに見えるくらいの距離があるにも関わらず、バリスタよりも大きく見える巨大な的を狙って外す方が難しいのではないかと思う。
お世辞だろうとは思いながらも礼を返してそのまま何発か撃ち、その大半がどこかしらの的に刺さった事を兵士が確認しているのだが、ユウリの目的はバリスタの威力を見る事だ。他に使用者が居ない事もあり、2人の兵士を連れる事を条件に許可が下りたので、歩いて近付く。兵士はもしもユウリが射撃場内に居る間に他の使用者が現れた際、彼女を連れ戻す役とそれによって手の塞がるもう一人を護る役だ。
ユウリが放った矢はしっかりと的を射抜き、試しに抜こうとしてもなかなか抜けない。一瞬、的が凄く柔らかかったり、矢が鋭かったりするのではないかと思いユウリは的に向かって矢を投げつけてみたり、突いてみたりとしたが、そうでもないようだ。
「…何してるんだ?」
「凄い威力だなと…どうなってるんですか?あれ」
「バリスタは自分の力じゃなくて、弦が戻る力で矢を撃ち出すだろう?」
「はい」
バリスタは装填とトリガーを引く際以外にはユウリの力を必要とせず、トリガーが引かれた瞬間から矢が放たれるまでの間に、彼女自身の力を必要とする部分は何処にも無い。もし、必要なのであれば、彼女が放つ矢は的に届くよりも前に失速して落ちるか、的に弾かれ、遠く離れた的を射抜くことは出来なかっただろう。
だが、それがどうしたのだろうかと、ユウリは首を傾げたのだが、そこにもう一人の兵士が
「トリガーさえ引けりゃ誰でも使える代わりに、誰が使っても同じ強さしかでねぇんだ」
と簡単に説明した事でユウリはバリスタに限らず、弓や銃など射出武器は使用者の【ステータス】の影響を殆ど受けず、この世界ではあまり強くない。という事を思い出し、「なるほど」と納得した。また、その事でユウリが放った矢が他の矢と同じように的に刺さった理由にも思い至る。
射出武器は武器本体の力で弾を射出する武器の事だ。弓であれば弦を、銃であれば引き金を引く為の筋力さえあれば後は命中させる技量の問題だけであり、放たれる弾の威力は武器と使用する弾に左右される。その為、今のユウリのように使用者本人の力が弱い場合には強力な武器となるのだが、それ故にゲーム中で最も強い武器と弾が手に入ると、それ以上に強くなる事が無い。という欠点があったのだ。
使用時に必要な分の筋力さえあれば、自身の力よりも強い力で弾を放てるという点は確かに強いのだが、それは武器の弾を撃ち放つ力が筋力を上回っている間だけの話であり、筋力の方が高くなってしまえばその辺に落ちている石を投擲した方が強いのである。
元々ゲーム時代から存在した仕様なのだが、それ故に射出武器が好きな者か今のユウリのような筋力の低い【ステータス】をしていなければ、気にする事も無く、忘れるような設定だ。バリスタもゲームの時代からあった防衛用の兵器なのだが、1つの街の中だけで話が進むストーリーモードでは使える場面は殆ど存在せず、旅をしながら冒険をするマルチモードでは、稀に発生する巨大モンスターから街を防衛するイベントでしか使えなかった為に、プレイヤーが使う事はあまりなかった兵器だ。
当然、偶にしか発生しないイベントでは使う機会自体が少ないし、ストーリーモードで使う場面というのも、街の兵士に扮して潜入している間の寄り道でしかなく、その期間外では兵士達が整備している所を見る事が出来るだけであった。
ゲームをプレイし続けていれば自然と筋力は上り、今のユウリのように偏った成長をしていなければ、半年もプレイした頃にはバリスタと投擲の攻撃力は殆ど同じになっており、1年もすれば確実に投擲の方が強くなっている。
更に投擲は防衛イベント以外でも有用な場面が存在している為、大抵のプレイヤーは投げた際に投擲用の弾や武器を準備している。準備が無くてもイベントでは、無数のプレイヤー達全員が使用し、目標を達成してなお尽きる事のない大量のバリスタの弾が手に入り、それを投げれば良いので、バリスタ本体の使用者は、ゲームを始めたばかりの初心者しか居なかった。
現実となったこの世界でもその威力に関する仕様が変わる事が無いようで、基本的に兵士がバリスタを使う事は無く、その時居合わせた冒険者や、街民が使う事になっているようだ。
バリスタが十分な威力を発揮する事を確認した後、ユウリは踵を返してバリスタの元へと歩き出す。
「そういえば…君はあれを使いたいと思ってここに来たんだろう?良ければその理由を教えてくれないか?」
「え?…えぇと…実は―」
ユウリは兵士の唐突な質問に戸惑いながらもその理由―自分が学院の生徒であり、近日中に学院の管理するダンジョン攻略を開始する事。その際に自分の攻撃が弱く、ダンジョンの魔獣に対して全く傷を付けられない事を説明し、そしてそのままでは一緒に攻略するグループの迷惑になる為、代わりになる武器を探している時に偶然バリスタを見つけ、兵士に案内して貰って来たという事を答えた。
「力が無いのはまぁ気付いていたが…」
「あの距離で先端すら刺さらなかったもんな…」
「…しっかし…偶然か…勧誘方法の問題以前に、そもそもの認知度が足りないのか…?」
「もっと大々的に宣伝した方が良いんじゃねぇか?上ので訓練するとかさ」
ユウリがこの射撃場に辿り着く事となった経緯が殆ど偶然であるという事を知ると、2人の兵士は先程ユウリが的に矢を投げつけたり突きつけたりとしていたのを思い出しながら呟き、その後互いに問題点を口にして、どうしたら広まるかと言う相談を始める。ユウリが説明を終える頃には3人は元の位置に戻ってきており、兵士達が2人だけで会話を始めたので、ユウリは一人バリスタを操作して先程よりも小さな的を狙って撃つ。
「ちょっと待ってくれ」
その後、ユウリは日が暮れる前に寮へ戻ろうと射撃場の出口へと足を向けた所で、受け付けの方から呼び止められた。その声にユウリは振り返ると、ユウリをこの射撃場へと案内した兵士が「これをあげよう」と言って小型のバリスタのような物を差し出した。
「これは?」
差し出されたそれを受け取り、ゲーム時代には見なかったそれを見てユウリはなんだろうかと思う。ユウリが受け取ったそれは、目の前の兵士よりも大きなバリスタとは違い、彼女が抱えて持てる程小さく、軽い。弦に巻き取り機は付いていないが、伸ばした手の先から肘までと同じくらい距離を一瞬引っ張るだけなので、問題は無いだろう。
「それはクロスボウといってね。見ての通り、バリスタを持ち運べるようにしたものなんだ。良かったら貰ってくれ」
「良いんですか?」
「ああ。これは元々、一昨年に此処で的当てを行った時の景品だったんだけど…あまり人が来なくてね…。…ついでに此処の宣伝もしてくれると嬉しい」
"この世界では射出武器は強くはない"とは言っても、バリスタは誰が使用しても同じ結果を生み出す事の出来る強力な武器である。小型化して威力は落ちているだろうが、その威力は生物を殺すには十二分であり、射程もある事からそんな物を今日出遭ったばかりの学生に渡しても良いのだろうか?という思いから聞いたのだが、どうやら単に余りものの処分に困っていて、そこに丁度良く受け取ってくれそうな人物が現れたので渡した。というだけのようだ。
この世界には【ステータス】があり、それによってバリスタ以上の力を手に入れる事が可能であるが故に、玩具以上の目的でクロスボウを使用する者は殆ど居ないだろうが、トリガーさえ引ければたとえ赤子であろうとも他者を殺す事の出来る射出武器が、射撃場に来るだけで簡単に入手可能である。という事実に、ユウリは何とも言えない微妙な気持ちを抱えながら、学院へと向かって歩いた。
ユウリ「大爆発とは言ったけど自爆ダメージがあるだけなんだよ。後、爆発してもダメージが低いと髪は乱れるだけでアフロにはならないよ」
フウカ「」
リスティー「爆発でアフロ…?」




