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12:授業初日

翌日、ユウリは目を覚ましベッドから立ち上がった際に、治りかけの傷口を押した時のような脚の痛みと怠さに気が付いた。

(筋肉痛か…)

今生では初めての経験であるが、ユウリは前世での経験からすぐに筋肉痛だと推測し、前日の身体測定とこの寮の階段の事を思い出して納得した。


(階段嫌だなぁ…)

筋肉痛で痛む脚で階段を降りるのは辛い。登りならばゆっくりと進めばいいが、降りはゆっくりしても次の段へと足が着いた際の衝撃はあまり変わらないからだ。割合的にダメージが少なくとも痛い事に変わりはない。


そんな思いと共にこれから一年間、あの長い階段を上り下りしなければならない事に気が付いたユウリは、その事に憂鬱になりつつも服や本の入った鞄から一枚の洋紙を取り出し、そこに描かれた魔法陣に向けて魔力を流し込んだ。

魔力を流し込まれた魔法陣はユウリの手元から広がるように光り輝き、それが全体に行き渡った所でユウリの体が光り、ピンッと跳ねた髪の束や寝ている間に乱れた髪などの寝癖がゆっくりと整えられて行く。


それはヴァーベナで売られている洋紙に【洗体(クリーン)】という魔法が発動する魔法陣を描いたスクロールと呼ばれる物だ。魔法陣は今もユウリの鞄に入っている別の書物を見ながらユウリが描いたものであり、ユウリが初めてこれを描いた際に一緒にいたハウレルの村の大人達からされた説明によると【汚れ無き身体(クリア・ボディ)】という恩恵(ギフト)を模した魔法陣であるらしい。


恩恵(ギフト)本来の効果は常に発動し心身の状態も保つようだが、これは劣化コピーであるため陣の魔法を発動した際の一瞬しか効果は無く、汚れを落とし身体を清潔にするだけなので筋肉痛は取れないが、同時に髭を剃ったり乱れた髪を整えたりと朝の身だしなみを整える時間を大幅に短縮してくれるのでこの世界の大半の人々が日用的に使う魔術の一つとなっている。


ユウリもこの魔法が無ければ髪の手入れなど出来ず、ぼさぼさ頭になるので適当な所で切って短髪にしている事だろう。因みに男性用に髭を剃らないモノも存在しているそうだ。


「おはよう」

「おはよう、ウツギさん」

「…えーっと…ユウリちゃん?」

「うん」

洗体(クリーン)】では寝起きの頭も目覚めず、口内の異物も取り除かれないので洗面所で顔を洗い歯を磨いていると、ウツギが後ろから来たので挨拶を返す。ウツギはユウリとフウカのどちらから迷う素振りを見せたのだが、ユウリが"ウツギさん"と呼んだ事と後ろ髪を3つに分かれるよう纏めはじめた事でどちらか判断したようだ。


ユウリとフウカは双子であるため容姿と声がよく似ており、基本的に髪型で見分けられている事が多いので何らかの拍子に髪が解けてしまうと見た目ではどちらか判断が付かなくなってしまう。これはユウリ達が村の大人達と共に服を買いに街へと行った際に発覚した事であり、それ以降2人は髪型以外にも語尾やに意図的な差をつけるようにしている。ユウリがウツギを"さん"付けで呼ぶのもその一つだ。基本的に彼女は他人を"さん"付けか呼び捨てにし、フウカは"ちゃん"か"君"で呼ぶようにしている。


最も、それらが無くとも2人は共に別世界からの転生者でありユウリは元男性であるため、似ても正反対でもない性格や仕草、言葉使いに抑揚の差と同じ環境で育ったとは思えない違いはあるのでリディアやアルト、モヨモト達などの家族や村で長い時間共に居た人物はすぐにどちらか見抜いてしまうのだが。



「通れないね」

着替えなど準備をした後は部屋を出て同じ時間に部屋を出た他の生徒達と挨拶をしながら通路を進み、今現在悩まされている筋肉痛の最大の原因でもある長い階段を降り寮を出る。階段を降りた後は前日に伝えられた教室へと向かうだけなのだが、その途中、2つの寮と校舎を繋ぐ渡り廊下の道を塞ぐように人集りが出来ていた。


ユウリ達の進路上に出来ているという事は女子寮の前なのだが、人集りは離れた位置から様子を見る巨人族が居るせいか、ユウリ達からは女子生徒よりも男子生徒の方が多く見える。ユウリ達よりも先にここへ来ていた女子生徒に何かあったのかと尋ねると、事故があったらしいという答えを貰う事が出来た。しかし、比較的外側に居る彼女達

ユウリが道を塞ぐ人集りを見ながら(このまま待たなければならないのだろうか?)と思い始めたその時、マーシャが「ちょっと聞いてくるわ」と言って自ら率先してその中へと入って行った。


「何かあったのかしら?」

人混みの中へと消えていく彼女の後姿を見送っていると、後ろからリスティーに声を掛けられた。リスティーはユウリ達と同じように自身のルームメイトと共に4人で部屋から出てきたようだ。


「そうみたいだよ?今マーシャさんが聞きに行ってるところ」

「あら?そうなの?なら、」

少し驚いたように彼女はユウリ達の中にマーシャが居ないことには気付いていたようだが、その理由までは考えていなかったようだ。


程なくして戻ってきたマーシャが見たのは彼女達よりも後から来たのであろうリスティー達とユウリ達三人だった。


「おかえり、どうだった?」

「どうもな、人族の男子が後ろから来た巨人族の生徒に蹴飛ばされたんやと」

「ああ、なるほど…」

ユウリ達は女子寮前に人集りが出来ている理由に納得した。巨人族から見ればユウリ達は小さい用のパンチバッグ程の大きさと重さしかないので、ただ歩いているのに巻き込まれただけでも数メートルくらいは軽く飛ばされてしまう。


マーシャが訊いた人々の中には事故現場を目撃した者は居なかったようなので実際どうだったかはわからないが、もし加害者の巨人族が走っていたのであれば被害者の生徒はより長い距離を飛ばされている事だろう。


そして男子寮は女子寮と対面するように建っているので、男子寮から校舎へと向かう途中で蹴られてしまった被害者の生徒は、女子寮の前に飛ばされてきたというわけである。加害者と思しき巨人族の男子生徒が少し離れた位置から懸命に謝っているが、被害者の男子生徒は全身の痛みからかその謝罪を聞き入れる余裕はなさそうだったとの事だ。


「大丈夫そうなの?」

「遠くからみても被害者の方は手足が折れてんなってくらい折れとった」

マーシャは「見なければ良かった」と小さく零す。更に詳しく訊くと、人混みの中から僅かに見えただけでも片方の肘や膝が2ヵ所あるように見え、指の何本かが反対方向に曲がっているのがわかる程はっきりと折れていたようだ。


「…被害者は勿論だけど、加害者にもなりたくないね」

何とも言い難い微妙な表情をしながらそう締めた。無用心に歩いていれば彼のように自身よりも遥かに大きな巨人族の生徒に蹴られる事は勿論だが、逆にユウリ達が小さな小人族や獣人族の生徒を蹴ってしまう可能性もあるからである。教室や寮の部屋こそ分けられてはいるがそれ以外―共用の場では互いに気を付けながら過ごさなければならない。


それは街中や外でも言える事であり、筋力のステータスが低く互いに致命傷になりにくい子どもの内から気を付けるよう習慣付けるのだ。比較的すぐに治療を行えるこの学院の廊下や校庭等は単なる通路であると共にそういった事を教える場でもある。



ユウリ達は蹴飛ばされた男子生徒が担がれ医務室へと運ばれて行ったのを見送ってから教室へと向かった。別に被害者の男子生徒に何か思い入れがあったり、知らない人物を心配して見送る程慈悲深かったわけでもなかったのだが、それまで人集りによって廊下が塞がれ進めなかった為だ。


その後教室の前でマーシャとウツギの2人と別れ、ユウリ達は扉を開けて教室へと入ると、教室では先に到着していた他の生徒達が空いている席に座り、そこに集まった幾人かで身体の節々が痛いという事を互いに愚痴り合っていた。授業開始の合図であるゴーン、ゴーンという鐘の音が鳴る頃に来た魔人族の教師―ロント・ダルトスによると毎年のことであるらしい。


ロントは、測定の際にユウリが真面目にやっていなかったのではないかと疑った人物だ。彼はユウリ達が所属する"冒険科"の担任教師であり、測定の後"冒険科"と書かれた看板を持って居た教員でもある。


「さて、これから授業を始める…と、言いたいところだが、殆どの奴は聞いてないだろうから暇な奴は昼までそれ読んどけ」

ロントによる軽い自己紹介の後、数冊の教本や図鑑などの教科書が生徒達に配られ授業が開始される―…のが学院としての理想なのだが、殆どの生徒が数日から数十日もの間ずっと馬車の上という窮屈な時間を過ごした後に身体測定をし、自身が割り当てられた部屋へと向かうために長い階段を登っているのだ。


ユウリのように初めて筋肉痛になった子ども達も少なくなく、経験も無ければ知識も無い者の多い生徒の殆どにとっては見えない未知の攻撃であり、極一部の生徒を除いてずっと俯いていたり時折ビクッっと身体を跳ねさせて腕や脚を見たりとあまり集中出来ていないのがわかる。


後日ロントが語った言によると、教師にとっては筋肉痛に苦悶の生徒達の群れというのは毎年恒例の光景であるようだ。また、ユウリ達が教室に向かう途中で見たような事故が最も多いのが初日であり、それによって欠席や遅刻して来る者が多い事も理由の一つであるため、翌日に復習という名のやり直しをする事になるため午前中は授業はしないらしい。


因みに"それ"というのは勿論、今しがた配られた教科書の事であり、ロントによれば学院の予定通りに授業を進めればユウリ達がこの学院に通う一年丁度で全ての内容を網羅出来るようになっているらしい。しかし、質疑応答の時間を設ける為に多少余裕がある事や、内容には幾つか重複するものや不必要なものがあるため、そこを省けば半日くらい潰れた所でどうとでもなるようだ。


ユウリも筋肉痛になっている生徒の一人ではあるが、彼女は前世の経験と知識から原因を理解しているので我慢している。それはフウカも同じようで、時折脚をすりすりと揉みながら教科書を眺めていた。


ユウリが数冊の中から選んだのは"冒険者のためのヴェルグ文化入門"というヴェルグ国内の街や村に住む人々や土地の歴史や風習から、その地に生息するモンスターや植物の生態や性質などの特徴が満遍なく書かれている教科書というよりも観光本(ガイドブック)のようにも見える本だ。実際、この本を手にヴェルグ国内を旅行する人も珍しくないらしい。


その中には先日馬車に揺られている際に遭遇した鯨竜(ゲイリュウ)も書かれており、そこには"リュツィホエール"と呼ばれる種である事と、通常は鮮やかな青色の身体に白い腹と黄色の翅を持つ鯨の魔獣であるため、ユウリ達が見た白に赤の個体はヴァーベナの先に見えた山脈周辺では神使(しんし)として崇められているらしいという事が書かれていた。


(神使ねぇ…)

その2つ以外御者や冒険者から聞いた以上の事は書かれていなかったが、ユウリは口から人の腕がはみ出ていた鯨竜(ゲイリュウ)を思い出し、アレが神の使いとされている事に複雑な気分になった。


リュツィホエールは正面から見れば頭部に浮かぶ光輪と白い翼から確かに神々しく、天使か何かのようにも見えなくはないのだが、後方に行くに連れて増えていく眼玉の付いた翅は寧ろ悪魔のようでもある。その上ユウリ達が襲われたのはほんの少し前の事であり、尚且つ喰われかけた身としては素直に受け入れられないのも当然の事だろう。


その後も様々な土地の写真とその説明を読みながらあれこれと考えたり、ゲーム時代にもあった物に気がついて懐かしさを感じたりとしていると、前に座っていたリグレスが何やらそわそわとしている事に気が付いた。


「…リグレス、トイレなら教室を出て階段と反対側に行った突き当りだよ」

「…あぁ?…ちげーよ…」

ユウリとしては気を遣って言ったつもりなのだが、リグレスは"何を言ってるんだこいつは?"とでも言いたげにユウリを睨んだ後、自身の行動から勘違いされた事に気付きどこか恥ずかしそうにそっぽ向いた。


「じっとしてるのが辛いのよね」

ならば何をそわそわとしているのだろうか?と思っていると、ユウリの隣に座っていたリスティーが苦笑しながらリグレスの代わりに応える。


「3人共どうもないの?」

「何が?」

「筋肉痛」

なるほどとユウリが納得していると、リスティーと反対隣に座っていたフウカが雑談する3人を見て不思議そうに言った。


「そう言われてみれば…2人は他の人達よりも元気そうだね。私は我慢してるだけだけど…」

先述した通り殆どの生徒が筋肉痛であり、痛む箇所を押さえたりさすったりとしている人が多い中、3人だけが気にしていないように見える。ユウリはその無駄に高い生命力(HP)によって痛みが小さく感じているだけだが、リスティーとリグレスにはそんな体力はない。転生者でもない2人が平然として居られるのが不思議だったのだが、その疑問はすぐに解消された。


「運動後に伸ばしておけば幾らか予防になるのよ…皆、普通に知ってるものだと思っていたわ」

二人とも学院に来る前に経験したことがあるようで、その時に周囲の大人達から筋肉痛の予防法を学んでいたらしい。ユウリは今朝出合った時は人集りの方が気になってあまり気にしていなかったが、リスティーと同室の3人も気にしてなかった事にも気付き、聞いてみれば彼女達はリスティーから教えられた事でかなり軽減されていたようだ。



昼食後、開始された第一回目の授業は歴史の授業だ。ユウリ達生徒が指定されて開いた教科書のページは"ガルマ帝国と解放運動"と書かれた見出しから始まっている。"ガルマ帝国"というのはヴェルグの前に存在した国の事だ。


最初の授業で歴史?と思うかもしれないが、このヴェルグという国の学校の授業は言語に関する事は親か親に当たる人物によって教えられ、入学時には文字の読み書きは勿論、文法も相手に伝える分には問題が無いという前提で行われる。

その為相当酷い場合を除いては態々教えるようなことはせず、それによって浮いた時間で技術や知識を為、ヴェルグの学校には国語の授業がないのだ。


初日に建国前の歴史を習うのは、この当時の出来事は昔話として絵本や劇で語り継がれているからであり、今も残っている常識やマナーも無くはないが、そうでないものは今となっては無用であるため忘れてしまっても問題が無いという事でもある。


勿論、ユウリも学院に来るまでの15年間で何度か聞いたことのある話であり、この世界がゲームの世界ではないかと推測した判断材料の一つである。現在のユウリは広場の件もあり確信を持ってゲームと同じ世界だと言えるが、この"ガルマ帝国"という国は前作ゲームの一人用モード…ストーリーの舞台だったのだ。


語り継がれているような内容であるため当然といえば当然なのだが、このガルマ帝国の事を知っている生徒は多い。悪しき王を英雄が討ち人々を救う。と言う内容であるためか"破壊神と勇者"の次くらいに人気である事も理由だ。国民に自由のない束縛された生活を強いる王である事を強調するためか、当時の国民の生活が子細に描かれている。


その為ユウリ達よりも前に座っていた生徒の一人から「小さい子でも知ってるような事を今更やる必要性はあるのか?」という疑問の声が上がったのだが、「ならこの話に出てくる英雄がヴェルグ初代国王だってのは知ってるか?」というロントからの質問に「えぇ!」っという驚いたような声が疑問を投げ掛けた生徒と何人かの生徒から上がった。声を上げなかった生徒の大半も驚いたようにロントを見ている。前に座るリグレスの顔はユウリからは見えないが、両隣のリスティーとフウカもその一人だ。おそらくリグレスも同じ顔をしている事だろう。


絵本では物語の主人公は"リーダー"もしくは"英雄様"としか呼ばれず、悪しき王を討った事で人々が解放され喜びに満ち溢れる中で、一人だけその後どうしたのか描かれない。その為子ども達の殆どは英雄が誰か知らないのだ。


これは後に物語にされる際に初代国王が自身の名前を書き換えさせ隠した為である。既に息子がいた彼は、これから大きくなる自身の子や将来出来るであろう孫に自身が"英雄様"と呼ばれる物語を読まれるのを想像し、恥ずかしがったのだ。最も、物語から名前が消えただけで彼の名声や人気が消える事は無く、当時の人々からの伝聞によってあっさりと知られる事になったのだが。


それはともかく。

物語の舞台となるガルマ帝国は数百年続く絶対王政の国であったのだが、当時の皇帝は国民が自身に逆らえないのを良いことに好き放題しており、後世にも悪として語り継がれるほどの反理想郷(ディストピア)を作り上げていた。そんな皇帝に嫌気が指した後のヴェルグ初代国王―ドレグ・ヴェルグをレジスタンスのリーダーとして、国の外から来たもう一人の英雄―ラトフ・グラートとその仲間達が人々を先導し、ガルマ皇帝を倒すという話であつた。


ユウリがしていたゲームでは主人公(プレイヤー)はラトフであり、彼が現在ヴァーベナとなっている街へと到着し、そこで暮らす人々の暗い表情を見たラトフが帝国から出ようとした事で『国外逃亡罪』という罪で捕まりかけ、そこで帝国の現状を知ったラトフはラトフを助けたドレグ達レジスタンスに協力する事を決意する。という所から始まる。


当時のガルマ帝国は後の歴史で"最悪の時代"と称される程であり、ストーリーによってその一端を知るプレイヤーからは"自称主人公で英雄(ヒーロー)の変態が国を作ったらきっとこんな感じ"と言われるような国であった。


ストーリーは革命が達成され、帝国から王国になったガルマの新しい王としてドレグが選ばれた所で終わってしまうのだが、その後のガルマ国内をオンラインモードとして遊び探索する事が出来た。その時はまだヴェルグという国では無くガルマのままだったが、オンラインサービス終了前にはドレグはドレグ・ヴェルグになっていたので、サービス終了からそれほど経たずに国名が変わったか、ガルマだったのはプレイヤー達の中だけだったのではないかと思われる。


ハウレルの村にあった噴水や馬車に取り付けられていたサスペンションがある事からも分かる通り、この世界には異世界人が関わっている。しかし、彼らが登場するのは革命後であり、ガルマは貴族以外家名を持たなかったので、この2人に限らず革命以前とその後、数十年ほどの歴史に名を残した殆どの人物の家名は革命後に自ら考えたモノかプレイヤー名であるようだ。後日の授業で"ヨウショクイチゴウ・ミヤ"とか"ハル・マンジコクリュウマンジ"とかと奇妙な名前が出始めた事でユウリはオンラインモードが革命から20年程の間の世界だったのだと知った。


初日の授業は当時のガルマ帝国の人々の生活と、ドレグ達レジスタンスに他国の生活を知るラトフが加わった事で武装蜂起し、たという所でキリが良いという事で終わり、余った時間は再び自習の時間となったので、ユウリはそのまま歴史の教科書を読むことにした。


後の授業では国の歴史を当時の大事件や災害の被害と後に建てられた対処法、それから風習と共に今も残る礼儀や作法などのマナーを教えるようだ。


(故郷の常識を他所の常識として教えられるのは不思議な気分だ)

その中には当然のように異世界人が関わっており、様々な世界から来た彼らから伝え聞いたという『大雨・洪水の際には海や川など水辺には近づかない』や『補助魔法を味方に掛ける際には事前に合図を送る』など、ユウリやフウカの前世では常識とされるような知識もその中には含まれていた。


呪文については既に教科としてユウリ達も学ぶ技術なので必要になる知識だろう。魔技(マギ)についても"他人に向けて傘を振らない"程度の事が幾つか書かれており、ユウリ以外でも発動は出来るのでいつかは必要になるかもしれない。


(でもこれは…)

しかし、そこに書かれているのは【アウレーリア】以外の世界の人々にとっての常識であり、魔技(マギ)や呪文のようにこの世界の人々にも出遭う可能性のある災害や使う事が出来る可能性のある技術などに対する知識だけが書かれているわけではない。よって、『封印されているモノを無闇(むやみ)に解かない』や『魔素のない場所では殆どの魔法が使えない』など特定の状況下でしか必要のない知識から、『|魔素(マソ)のない世界の植物は魔素マソのある場所では育たない』とか『異世界には"極夜"と"白夜"と呼ばれる一日中夜、もしくは昼のようになる現象がある』とかと、そもそもこの世界で暮らす者達にとって学ぶ必要性すらあるのかどうか分からないものまである。


一体これはどのような状況を想定して教科書に書かれているのか?ユウリがそんな疑問を抱きながら教科書をパラパラと捲っていると授業終了の鐘が鳴り、その日の授業が終了した。

リスティー「補助魔法に合図って敵にも知られてしまうのだし、黙って使った方が良いんじゃないかしら?」

リグレス「こそこそしねぇで正々堂々やれって事じゃねぇか?」

ユウリ「…突然操作感が変わるから危ないって事だと思うよ。ゲームで操作が速くなったり遅くなったりする状態異常食らった瞬間と溶けた瞬間の操作が難しいから多分それと同じ。それよりも…この…『飛んでいる人に向けて呪文を撃たない』って何…?」

フウカ「さぁ…?『刃物を人に向けない』くらい普通の事だと思うけど…私は知らないから他所の異世界常識か私が死んでから出来たかのどっちかじゃないかな?」


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