09:2泊3日、馬車の旅
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良く晴れた日の草原の中、多くの人や馬車が通った事で生まれた草の無い道をのんびりと進む幌馬車の一団が居た。彼らは馬車に乗せた子ども達を先にある王都、ヴァーベナへと送り届ける事を目的とした一団であり、周囲には冒険者達が馬に乗って馬車の護衛をしている。ユウリ達ハウレルの村の子ども達が乗っている幌馬車も森を抜けてすぐにその一団に加わっていた。
ユウリ達は他の馬車と合流した時に乗っていた馬車の御者から聞いたことであるが、ハウレルの村の子ども達が乗っている幌馬車は元々その一団の最後に加わる予定であったようで、目的地であるヴァーベナに着くまでに他の集団と合流することはないらしい。
その後、一日目の野営後に子ども達が好き勝手に乗る馬車を入れ替えた2日目の朝方。
「…大丈夫?」
「多分…」
幌の中でユウリは頭に怠そうに荷台の淵に凭れ掛かっていた。隣に座っているフウカは原因が判っているので若干呆れながら問う。
その日は一日中馬車で揺られているだけだと聞いていたので、ユウリは退屈しのぎに以前街に行った際に服の代わりに買って貰った本を持ってきたのだ。…そこまでは良かったのだが、馬車の中で読んでいる内に酔ったのだ。
「どうしたの?」
「元気ないー?」
そんなユウリの様子に気付いた同じ馬車に乗る他の子ども達も心配をして声を掛けてくれているが、乗り物酔いをしているユウリがまともな返事など出来るはずもない。
「もし悪い奴が来ても俺がやっつけるから大丈夫だ!」
「…うん?」
完全に無視してしまうのも良くないだろうとなけなしの気力で「うん」とか「そう」とかと適当に返事を返していると、一緒に乗っていた少年の内の一人が突然そんな事を言った。
ユウリは適当に相槌を打っていただけなのでどういった話の流れでそんな事を言ったのか分からないが、
(突然現れた悪を倒してヒーローになるのは、ヒーローものの物語がある場所に住む男子の大半が一度は夢見る光景なのだろうか?)
と、ユウリは自身が前世で"もし学校に悪の組織が現れたら"や"もしも異星人が攻めて来たら"等の妄想をしていた事を思い出しながら思う。その少年はユウリ達とは別の村か町の出身ではあるが、なんとか戦隊やなんとかマン等のヒーローが出てくる本やゲームが、森の中という僻地の村にあった事から他の所にあっても何ら不思議な事ではないだろう。
「悪い奴なんて出ないわよ」
その少年の近くに乗っていた少年と似た容姿の少女がそれを否定した。
「出るかもしれないだろ」
「ないわよ」
「…なんでだ?」
少年は"もしも"の話だと言ったにも関わらずきっぱりと「無い」と断言されたことに驚きつつもで暫く考えて判らなかったのか少女にその理由を問う。
「だって私たち貴族じゃ無いもの。襲われる理由が無いわ」
少女が答えたその理由は単純に"自分達に狙われる理由が無い"という至ってシンプルなものだった。子ども達が知る物語に出てくる野盗は全て貴族の豪華な馬車や財宝、それかその貴族を人質に金品を要求するものだ。余程恨まれでもしていない限りは子どもを狙うような事はない。
魔技や呪文の事でユウリとフウカが狙われるかもしれないが、どちらに関してもハウレルの村の子どもではない少女は知らない。知っていたとしても魔技はディスト討伐時にその場に居たアリスと村人以外の殆どの人々は呪文だと思っており、呪文は呪文に関する情報は既に国に渡され教育の一環として学校で学ぶ事が出来るので、魔技を知らなければ二人に拘る意味は無いのだ。
更に言えばこの国では人身売買を禁じられ、違反者は死刑とされている。死刑囚に対して非人道的な処刑をするという噂が有名な国でもある為、態々国から出されているこの馬車の一団から子どもを攫って奴隷にしようという輩も居ないのである。
更に言えばもし現れたとしてもそれらへの対処は全て馬車の護衛として共に居る冒険者達が対処するので子ども達に出番はない。その事を少女は少年に説明すると少年は物語のような展開には期待できないと知り、しょんぼりと戻って行った。
その後、別の馬車で揉め事が起きたりユウリと同じく酔いを起こした子が荷台に吐いてしまったりと騒ぎが起きたが、ユウリはただ静かにしてくれと思いつつ時間が過ぎるのを待ち、昼食時には酔いが治まり元気になったユウリの姿があった。
「暇だねぇ…」
「そうね…」
昼食後、ぼんやりとユウリが呟いた。馬車の上で本を読むことはしない。彼女はしたばかりの失敗を繰り返すほど学習能力のない馬鹿ではないのである。ユウリの酔いは治まったのでフウカも介抱する必要性は無くなったものの、代わりに何もすることが無いという問題に直面していた。
今現在、馬車が通っている道は街に行く際に通る道とは反対側なのだが、こちらも何度か通った事はある上どちらも目的地が見えてくるまで同じような草原が続くため、何もなければ数時間も持たずに飽きてしまうのだ。
野盗や野生生物との遭遇といったイベントでもあれば良いのだが、先の理由から賊は滅多に現れず、馬車が通っている街道周辺は元々人を襲うような生物は少ない。時々遠くに見かける人を襲うような生物も、人は襲えば反撃をしてくる生物であると学習するだけの知恵を持っているので態々集団を襲う事も無い。余程空腹であったりこちらから手を出したりすればその限りではないだろうが、こちらも冒険者達が対処するので考えるだけ無駄だろう。
馬車の上で暴れるわけにもいかないので、同じ馬車に乗っている他の子とお喋りする事と馬車の上から見える景色を眺める事以外にできる事が無く、片道2日とはいえずっと馬車に揺られているだけというのは退屈なのだ。ユウリは何かないかと外を見て初めて馬車がデコボコ道を通っている事に気が付いた。
「…なんで揺れないんだろ…?」
ユウリの前世の世界はアスファルトの道路の上を車やバスが通る世界だった。乗り物に対してあまり興味が無かったユウリはしっかり舗装された道とゴム製のタイヤで快適に乗れるのだと思っていたので、凹凸があり石に乗り上げる事のある木製のタイヤの馬車があまり揺れない事が不思議に思えた。それはユウリの呟きによって気付いたフウカも同じだったようで、似たような反応を示していた。
「サスペンションってのがついてるらしくてな、それが吸収してるらしい」
前世の車程ではないが、馬車があまり揺れていない事に疑問を持ったユウリの呟きを聞いていた御者の男性がそれに答えた。ユウリは自身の呟きに答えが返ってくるとは思っておらず、驚いて御者の方へと振り返った。
「サスペンション?」
「ああ、何でも随分と昔に来た異世界人達が伝えた技術の1つらしくてな。それが伝わる前の馬車はガタガタ揺れて酷い乗り心地だったらしいぞ」
御者に問うと、御者は前を向いたままその質問に答え、ユウリは「へぇ」と感心する。
「俺は詳しくないから興味があるならサスペンション以外にも色々書かれた本が向こうの図書館にあったはずだからそこで調べるといい」
「いつになったら着くんだ?」
先程少女と言い合っていた少年が尋ねる。彼はユウリ達が乗っている馬車の中で唯一、首をも覆うように生えた琥珀色の鬣が特徴的なライオンの亜獣人の男性なので、同種であったり似た特徴を持つ種族の者が居る他の子ども達よりも判別しやすかった。
「明日だな。テータが見えなくなる前にはヴァーベナが見えてくるはずだ」
ライオンの少年の質問に御者はそう答えた。
"テータ"というのは今現在、一団の頭上―空に浮かぶ太陽のような四角形の事だ。
ここは異世界であるため当然ではあるが太陽も月も無い。代わりにあるのは"テータ"と呼ばれる星型であり、それが昼も夜も関係なく空に浮かびゆっくりと明滅することでこの世界、【アウレーリア】の住人達に時間を告げる。
ゲーム時代、このどこへ行っても見る事の出来る太陽か月のような存在についてプレイヤー間で何度か考察が行われた事がある。初めは誰もがこの世界が平面でゲームだからだと思っていたのだが、アップデートによって世界が広がり、地図の端と端が繋がってしまったのだ。
端が繋がっている以上世界が平面であるという事は考えにくく、球体であればどこへ行っても同じように見えるのはおかしい。ゲームだからだとする人も居たのだがある時、特定の地点を通過した瞬間に今まで見ていたテータが消え、別の方向にテータが現れる事に気付く人が現れたのだ。
更に人々が集まった事によりその地点を通過した人としなかった人でテータの見える位置が違うことも判明し、テータが突然移動する理由を巡って様々な考察が飛び交った。「その位置で世界の端同士が繋がっているのではないか」という意見もあったのだが、それは別の場所でも同じ現象が発生することが確認された事で否定された。
オンラインサービス終了まで続いたその考察で最も有力とされた説は「この世界は多面体であり、テータは複数存在している」というものだ。見えていたテータが消える理由については判らないが、テータごとに見る事のできる面が決まっており、面から面へと移動した際に今までのテータが見えなくなり代わりに別のテータを見る事が出来るようになっているため、多面体に居る自分達はどこへ行っても1つだけのテータを見ているのではないかという事だ。
ユウリはあまり興味が無かったので時々SNSで見る考察の様子と最終的な着地点しか知らないが、その考察の様子は本にされ、先の会話に出てきた図書館にも蔵書されているようだ。
そんな話の後、夕方頃にはテータに赤く照らされたヴァーベナの外壁が見えてきた。この世界を照らす恒星であるテータは地平線に消える事はないが、それでも夕暮れ時にはテータを中心に徐々に赤く色が変わって行くのだ。これについても不思議ではあったが、プレイヤー間では「ゲームだから」という事で納得されていた。
赤くなったテータの光量が落ち、月明かり程度の明るさになったら夜だ。夜はヴァーベナの門が閉じてしまう事もあるが、暗いと馬が道なりに進む事が難しくなるので路肩に馬車を止めてその場で野営の準備を始める。複数の街や村から来ている子ども達の分までテントを張るのは重労働なので子ども達で自分達の分は張らなければならないのだが、この時以外する事のない子ども達はやっと体を動かせると活き活きとして組み立てていた。
ユウリも他の子ども達と比べると力は無いが、それでも元いた世界から見ればかなりの力持ちである。仮留めや踏み台の代わりに魔技を使用しながら他の子ども達と共にテントを組み立てた。
その際に何人かのハウレルの村以外の村や町の子ども達にどうやっているのかと問われたが、事前にある程度予想していたユウリは着ている服にそういう魔法陣が仕込まれているのだという事で魔技に関する質問が来ないよう対処した。後でバレるかもしれないが、その時には説明出来るようになっていてほしいとユウリは未来の自分自身に願う。
因みにユウリ達が来ている服には幾つかの魔法陣が描かれており、似たような効果のある魔法が存在するので不可能という事はない。最も、ユウリが着ている服に描かれているのは服の耐久性能に関わるものを除けばそれらは、前方を照らしたり服を乾かしたりと生活に便利なものであり、仮留めや踏み台には使えないが。
◇
3日目の早朝、馬車に乗り込んでいると先に乗り込んで中から外を見ていた子ども達が何かを見つけたようで声が上がった。
丁度そのタイミングで自分達が寝ていたテントを片付け終わったユウリとフウカも馬車に向かいなから同じ方向を見ればクジラに似た巨大な生物が都の奥に見える山脈の上辺りの空を優雅に泳いでいた。その鯨は白と赤のナガスクジラ属のようなフォルムであるが目の上、鼻があると思われる位置の上に光輪が輝き、胸ビレは鳥のような翼になっている為まるで天使のようである。
しかしその翼の上と尾ビレの周囲には枠を金で縁取った羽を散りばめた桃色の翅のようなものが付いており、更にその羽の中を大量の紅の目玉が動き回って周囲を視ているため悪魔のようでもあった。
「あれは?」
そのクジラのような生物は前作ゲーム時代には居なかったものだ。ユウリやフウカも他の子ども達と共に興味津々で尋ねる。
「ありゃ鯨竜だな。この辺りで見るとは珍しい…」
子ども達全員が乗った事を確認した御者の男性が馬車に乗り込みながらそれに答える。
鯨竜はこの空飛ぶクジラの総称だ。名前に竜と付いてはいるが、ドラゴンではなくクジラの魔獣である。その強さは個体や地域によってまちまちではあるがその名に遜色はなく、成体であれば同じ地域の未成熟のドラゴンをあっさりと追い払ってしまえるほどの強さを持っている。
「珍しいの?」
「ああ、普段はもっと山の向こうの方を飛んでるんだ」
他の馬車は先に準備が出来ていたようで、御者が馬車に乗り込んだのを他の馬車が確認すると、一纏まりとなって動き出す。ユウリ達乗っている馬車の御者も子ども達の質問に答えながら馬に指示を出し、馬車が走りはじめる。2人が乗っている馬車は一団の最後尾だ。
「でっか…」
ユウリ達が遠くの山脈の上に居る鯨竜を目視出来た事からもわかるが、鯨竜は途轍もなく巨大である。ゆったりとした動きでヴァーベナへと近づいてくる鯨竜はヴァーベナの中心に見える城よりも明らかに大きく、その巨体だけでヴァーベナ全域を押し潰してしまえそうに見えた。
馬車は鯨竜の手前にあるヴァーベナへと向かい鯨竜もこちら側へと向かってきているので、徐々にその大きな体躯が目の当たりになり、鯨竜の影が一団を飲み込む時にはあまりにも巨大なそれが飛んでいるという事実にユウリはぼんやりと鯨竜を眺めながら感嘆の声をもらしていた。
「ん?」
そんな時、ユウリの視界の端に鯨竜に向かって手を振る子どもの手が見えた。何をしているのだろうかとユウリが思っていると、その子の近くに居た別の子どもが「何してるの?」と問う。するとその手を振っていた子が「目があったから手を振ってるんだぁ」と少し嬉しそうに答えた。しかし鯨竜は既にユウリ達の頭上をその身体の半分以上過ぎており、とてもではないが目が合うようには思えない。
ユウリはそんなわけないだろうと思いつつも改めて鯨竜を見ると、それまで不規則に動いて見えていた翅の目の動きが止まり、何処か一点を見ているように見えた。その視線の先は真下であり、そこにはユウリ達が乗る馬車の一団以外には何もいない。もしかしたら草に隠れた小動物が居るかもしれないが、居るかどうか分からないものを考える意味はないだろう。子ども達の話声を聴いていたのか馬車の御者や冒険者達も訝しむように鯨竜へと注目している。
「っ!突っ込んで来るぞ!」
鯨竜は一団の頭上を通り過ぎ、暫くしてからゆっくりとUターンして降下しながら戻ってきたのを見て御者や冒険者達が馬に鞭を打ち走らせる。戻ってきた鯨竜は一団の側面を位置取ると、口を大きく開け、道ごと馬車を丸呑みにしようと土を抉りながら真っ直ぐ突っ込んできた。
荷台に乗っているだけのユウリ達にできることはなく、ただ刻々と迫ってくる鯨竜に捕らえられない事を祈るだけだ。時折他の馬車から魔法が飛び鯨竜に当たるがまるで意に介さない。それどころか鯨竜の皮膚に弾かれた魔法が返ってくる事もあり、寧ろ何もしない方が良いと思われた。
鯨竜が迫りくる中、ユウリ達が乗る馬車の背後で何かがピカッっと青白く輝き、そこから伸びた何かの手がユウリの肩を掴みユウリが驚いて声を上げる。しかし、その腕が何かをする前にその手の主は鯨竜によって力任せに引き離され、そのまま地面を抉りながら馬車の背後を突き進んだ鯨竜は口の中の土が限界に達したのか上空へと引き上げた。
「誰か食われたぞ!」
間一髪で鯨竜を回避した馬車の人々が安堵したのも束の間、そんな誰かの叫び声にユウリも上昇して行く鯨竜の口元を見れば、中から飲み込まれまいと鯨竜の口角にしがみつくようにして出ている人の片腕が見えた。
だが既に鯨竜は遥か上空へと飛んでおり、呪文や魔技を使っても助けられはしないだろう。鯨竜はその誰かを捕らえた事で満足したのか悠々と元の山脈へと戻るように飛び去って行った。
「誰が居なくなったか確認しろ!」
それを見た一団は馬車を止めて鯨竜に捕食された誰かを特定しようと、残っている子ども達の確認をする。しかしどの馬車からも全員居るという報告がされるだけで、冒険者達にも馬車の中の子ども達にも居ない者がおらず、一体誰が飲み込まれたのか、誰にもわからなかった。
もしかしたら追いかけられている最中に同じ道を通っていた者なのだったのではないか。という推測も建てられたのだが、そんな人物の姿を見た人物はおらず、謎のままとなった。
「なんだったんだ…?」
去って行く鯨竜を見ながら冒険者の一人が呟く。ユウリは後で知った事だがナガスクジラ型…つまりヒゲクジラの鯨竜は魔素や魔力を主食とするためあまり他の生物を襲う事が無いのだ。小型のドラゴンのような非常に多くの魔力を持った魔獣であればいざ知らず、人のような鯨竜から見れば極小の魔力しか持たない生物を襲う理由が無いのだ。
馬車が通っていた道や捕食されてしまった人物に、鯨竜が狙うだけの何かがあったのかもしれないが、分からないものは考えても仕方ないし、抉れてしまった道をどうする事も出来ないので考えるのを辞めて再び進み出し、それからすぐに一団はヴァーベナの門の前に出来た行列に並んだ。
「アレは何をしてるのかしら?」
並んでから暫くして、先日少年と言い合っていた少女が列の先を指さししながら御者に尋ねた。
「あれは検問だな。中に入る前に悪い奴じゃないか調べてるんだ」
「それは知ってるわ」
「それはわかる」
少女と同じ事を思ったのかライオンの少年が同時に答えた。それと共に「へぇ」とか「ふーん」とかと言った感心したような声も上がったので知らない子もいたんだなと馬車の一番後ろで聞いていたユウリは思う。ユウリは一度ヴァーベナに来た事があるのでここで検問をしている事は知っているのだ。
少年達は一番前にいたので気付いていなかったらしくその声に振り返って驚いていたが、一緒に乗っている他の子ども達も話を聞こうと前へと集まっていていたのだ。後ろの方の子に至っては前の子の上や馬車の横から身を乗り出すようにして耳を立てている。馬車はヴァーベナに着いたが、まだ門の外なので外壁しか見えず、列に並んでいる事もあり騒ぐ事も降りる事も出来ないので、子ども達は道中以上に暇なのだ。
「あの台座?の方の事よ」
少女は改めて列の先を指さししながら御者へと問う。列の先ではヴァーベナの衛兵による検問が行われているのだが、そこでは人々が台座に手を乗せることで台が白や青に光り、それを見て衛兵が通行許可を出していた。台座は数年前にユウリ達がハウレルの村人達と来た時には見なかったので、最近出来たものなのだろう。
「ああ、あれで確認してるんだ」
「…あれで?」
台座と言われて御者は何を訊かれているのか理解し、簡潔に答えた。暫く眺めて判らなかったので少女は不思議そうに問う。ユウリや他の子ども達も人が触れる度に光る台座を見ながら小首を傾げたり唸ったりとして考えたが判らなかったので少女の問いを合図に全員が御者へと向き直った。
「光ってるだろ?初めて来た奴には白く、一度来たことがあって問題のない奴は青くなるんだ」
「問題がある人が居るの?」
御者の説明にふむといった感じで少女は納得したが、"問題のない奴"という言い方になら違う人も居るのかと他の子ども達の中から御者へと疑問が飛んだ。
「ああ、内容にもよるが犯罪犯したやつは赤くなって他の衛兵が来るんだ。償ってれば緑になるがな」
御者が子ども達の疑問に答える間にも列は進み、その度に光る台座を見ながら説明を続け、御者はゆっくりと馬車を進める。馬車が並んでいる間に出たのは白と青の2色だけだったのだが、御者の説明に子ども達が疑問を呈せばそれに答えていた。
「来たことないけど問題がある人は?」
「国が把握してれば黄色くなる。…後は自分達で調べろ」
「次!」
そんな話をしているとユウリ達が乗る馬車の番になっており、話を切り上げて御者の男性は衛兵と話始めた。
「…通ってよし!」
ユウリの位置からは御者の男性が懐から取り出した何かを衛兵に見せた事と許可が出た事しか判らなかったが、元々馬車は国から出されているものなのでそれを証明する印のような物があるのだろうと、ユウリが一人納得していると馬車が再び進み出し、そのままヴァーベナへと入って行った。




