八話目 お願い
書いてる途中で寝てしまう……
日が沈み寝る時間になる前にラルクは既に寝ていた。それも当然である。1日のうちに山で迷子になり、魔物に見つかり、雷に撃たれた後、気絶したかと思えば左肩には見慣れぬ印があり、それについての説明はほとんど理解出来なかったのだから。脳が処理出来ないくらいたくさんの出来事があったのに眠れない方がおかしいのである。
その姿を見て懐かしそうな顔をする人が一人。
ソハルだ。
「なんというか……知ってる誰かに似てる……な」
その後ろ姿を青色と赤色の二つの月が包み込むように照らしていた。
「んー。ふあぁー」
鳥のさえずりがどこからか聞こえる。それで起きたラルクは欠伸をして目をこする。起きたあとには必ずあるもやもやした気分を変えるため、井戸で顔を洗おうとして気づく。ここは孤児院ではなくソハルの家であったこと。水場がどこにあるかがわからない。そして聞こうと思ってもそのソハルが居ない。取り敢えずベットから出て呼んでみる。
「ソハル…さん?どこです?」
声をかけながら部屋を回るがどこにもいなかった。
これは外に行っているのか? こんな朝早くからやることもないだろうに。
そんなことを思いながら外に出るドアを開けると。
そこには素振りをしているソハルの姿があった。
「ん? お、ラルクか。」
ドアを開けた音でソハルが振り返る。男の人としては長い肩までかかる髪が流れる。ソハルの体からは少し湯気のようなものが出ていて、汗が顔から滴り落ちていた。
そしてどこからともなく水を創り出すとその水は下に落ちることなく半球の形を持って空中に浮かんだ。
「えっ!? なにそれ? どうやってやるの?」
「お前知らないのか? これは魔法だよ、見たことない?」
「――ない、と思う」
一瞬言葉に詰まった。水が勝手に出てきて浮いているという不思議な現象を見たことがないのは本当なのだが、同じような不思議なことを見たことがあるような気がするのだ。
それはずっと昔、草原が見渡す限り広がっていて。
太陽が雲に隠され風が吹く中、両手で二人の手を握り。
寒いなと思ったら、右側に炎が燃え上がり――。
忘れてしまった何かを思い出そうとしているうちに、ソハルは生み出した水で顔を洗っていた。そして終わると問いかけてくる。
「お前も顔洗うか?」
「……」
「おーい? 聞こえてる?」
とと質問しつつソハルは目の前で手を振る。
「へ? なんだって?」
「顔洗うかって聞いてんの、なんか考え事でもしてたのか?」
「ちょっとだけね。顔は洗うよ」
水の半球が浮いたままラルクの取りやすい高さに移動する。顔を洗ったあとソハルに問いかける。
「ねえ、ソハルは冒険者だったんだよね?」
「ああ、まあそうだったが」
「じゃあ僕が冒険者になるために鍛えてくれない?」
「は?」
間抜けな顔が面白かった。
土踏まずが痛い
運動しないせいかな^^;
訂正
最後の会話シーンが抜けていたので追記しました。