六話目 目覚め
今日こそはイチゴジャムで食べるぞ――あ……仕方ない、ピーナッツバターだ。(冷えていたので諦めました)
魔物がこっちを向いた。見つかったと思ったラルクは背中を向けひたすら逃げる。しかし人間と魔物では元々の身体能力からして違う。後ろを振り返る余裕はなく、振り返る必要なんて無い。振り返らなくてもその魔物の大きさは移動する暴力である。その騒々しさがどれ位の距離があるかを教えてくれた。一歩進むごとに何歩分も詰めてくる。あっという間に追いつかれ、その魔物は右腕を振るう。自分の体が引き裂かれ、血が大量に噴き出してきて……
「……うわぁぁっ!!な――ゆ、夢か」
驚いて布団をはね飛ばすと夢であったことに気がついた。胸の奥から太鼓を打つように心臓が胸骨を打つ。
冷静になって見てみればベットに寝ている様だった。こんな家は見たことがない。まずラルクの住んでいる街では木で家は作っていない。どの家も石造りだ。窓から外を眺めると木がたくさん生えているのが見えた。藪の量も少ない。山の奥ほどの量ではないので麓じゃないか? ふと寒気を感じ布団を見ると、さっきまで見ていた夢のせいか汗で濡れていた。
「ん?起きたか」
声をかけてきた人は少し離れたところに椅子を置いて僕のことを見ていた。後ろの壁に2本の剣が交わって掛けてある。その人は赤い髪が印象的だった。
「――ここは?なんでここに?」
「あー。ここは俺の家だ。で、お前気絶する前のこと思い出せるか?」
飲み物を差し出しながらその人は言う。それを受け取りその言葉通りに記憶を探るが靄がかかったように曖昧だった。だからひとつひとつゆっくりと思い出す。
ん?気絶する前?えーとまず山に薬草取りに行けっておじいちゃんに言われて、取りに行ったら水が無いから取りに行ったんだけど濁ってて、で……帰ろうとする途中に魔物にあって?死ぬって思ったら目が見えなくなって耳も聞こえなくなった。そしたら……あ!そうだ!この人が魔物を倒してくれたんだ。だから安心して座ったら急に力が入らなくなって……
「……おっちゃんが倒してくれたんだ」
無意識に言葉がこぼれ落ちる。思い出したと判断したのかその人は問いかける。
「そうだ。お前はどこから?」
「ムルリアの街、だけど?」
「あーそっちか……ここはどっちかって言ったらシャレスティーンの街の方が近いな」
「――おっちゃんてさ、冒険者?」
ラルクにはそうとしか思えなかった。華麗な剣技は騎士団の様だと思ったが、2本の剣を持って戦うなんて見たことも聞いたこともない。
「――だった、だな」
「じゃあその頃のことを教え」
「その前に、聞きたいことがあるんだがいいか?」
「な、なに?」
その人の銀色の目に真剣な色が浮かんでいて、そして少し訝しげでもあった。
「――雷に、撃たれてたよな。」
「え?」
その言葉が理解できない。もちろん意味はわかる、だけどおじいちゃんが「雷には気をつけるんじゃよ」と言っていた覚えがある。なんで?と聞いたら「死ぬからじゃ」と言っていた。それに?撃たれて?おじいちゃんが嘘をついたことは一度も無い。ということは……
「え?じゃあここは……」
「いや、お前は生きてる。だから聞いてるのさ」
心の中を読まれたかのように言葉を返される。
なぜ雷に撃たれて生きているか?そんなこと言われても覚えなんてあるはずもない。そういうことを知っていそうなおじいちゃんはこの場にはいない。
その時、左肩が疼いたような感じがした。
花粉症の人は大変そうですね……
うちの家族は誰も花粉症じゃないので( 笑 )
気にせず窓とか開けられるのはいい事なんだろうな。