十三話目 店主
学校の新学期って忙しい。
「ほら、起きろー」
「んんー、ふぁあ」
気の抜けた声に起こされたラルク。目を擦りあくびをした後、体を起こすために伸びをする。今日もソハルから冒険者のことについて教えてもらう。
「……とりあえず素振りするか」
「はい」
自分の声から滲み出る緊張感。何からくると言えば初めての真剣の素振りである。なんとも言えない感情が内側から出てくる。木剣とは違ったその深い青の剣の重みを感じる。昨日届いた新しい剣を持ちソハルのあとを追う。
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1ヶ月前にソハルの所で冒険者について勉強することにした後、家に戻ろうとしたところ思いついたようにソハルがムルリアの街に戻り始めた。孤児院に戻ろうとしているのかと思ったラルクは聞いてみた。
「なんで戻ってるの?」
「あ、いや、な、ムルリアの街って近くに鉱石が沢山取れる場所があるんだよ。だから武器とかの生産が盛んでな。一応お前の武器も買っとくかなー? ってな」
「武器買ってくれるの!?」
「――タダで渡すわけにはいかねえな」
「え」
「冒険者になった後返してくれりゃいいよ」
悪い笑みを浮かべてソハルが言う。ラルクはそれに黙ってしまう。少し罪悪感が出てきたのかソハルは続ける。
「……まあちょっとでいいからさ」
「やった!」
すぐ表情が変わったからかソハルは苦笑い。ラルクは満面の笑みを咲かせる。
そんな話をしながら歩いていくとすっかり夜になってしまった。街に入り、ソハルが前を歩く。そして一つの武器屋に入った。なんと扉の前には蛇の頭が飾られている。
扉を開けると鈴の音が鳴る。その武器屋にはそこかしこに剣やら盾やらが並んでいた。どれもこれも質が良さそうな武器防具ばかりで、ラルクはそれらに目を奪われていた。
「……っしゃい」
奥から覇気のない声が響く。その声の後に続き奥からさっきの声の持ち主と思われる人が出てきた。声に反応してラルクがそちらを見る。
自分と比べてもそこまで大きくないその人はソハルを見ると。
「え!? ハルじゃんか!」
「おう、やっぱこんな店出してんのか。1発でわかったぜ」
「あんたに言われるほどセンスは悪くないつもりよ!」
「いや店頭に蛇の頭飾るとか悪趣味すぎだろうよ」
「どこがよ!むしろインパクトあっていいでしょ」
「――そのインパクトは逆に働いているようだけどな」
「それはっ……」
「更に『悪くないつもり』ってことは一応悪い方だと思ってるのな」
「ぐっ……」
完全に置いてけぼりなラルクと軽口を叩くソハルにやられっぱなしの武器屋の店主。ラルクがポカンとしている合間に、ここまでソハルと会話を交わした武器屋の店主はこの話題はまずいと思ったか話題を転換した。
「……その子はまたどういう感じでなのよ」
「あぁ、ラルクな。簡潔に言えば、俺が魔物から助けた」
「またそれね……じゃあ武器作ればいいのかしら?」
「話が早くて助かる。まず木剣とあと真剣。木剣の方はすぐ使うからなるべく作るやつと同じ重さで。」
「ほいほい、真剣の方はいつものやつだよね?」
そっと聞き耳を立てていたラルクに気づいたか2人の声が一気に聞き取りにくくなる。必死に聞こうとするが聞き取れない。
「あ、それなんだがこいつ印持ちなんだよ」
「え!? なんの?」
「多分雷の印だ。だからそれ用に合わせといて」
「無理難題押し付けんなこのハルめ。あんたの武器と合わせて印持ちの武器なんて作ったことあるの片手の指に収まるから」
「それでもだいぶ多いってことに気づけネモ」
「はぁー……分かった。作るよ。武器の形状は長剣でいいかな?」
「ラルク? 武器は長剣でいいよな?」
突然呼びかけられてびっくりしたラルクはコクコクと頷いて同意の意思を示す。
「だとよ」
「じゃあー1ヶ月で作るからそれまでこの木剣を使ってね。ラルク君」
ぽんと渡された木剣を両手で受け取り、笑顔を見せている店主に少し見とれていた。
何とかペースを元に戻したいと思います。




